時間単位の年次有給休暇制度をご存じですか?

中小企業診断士、社会保険労務士 溝口 晃子

●『時間単位年休制度』が平成22年に創設されました
既にご存知の方も多いかと思いますが、平成22年の改正労働基準法の施行によって、年次有給休暇(年休)の時間単位での取得が可能になりました。

労使協定により、年次有給休暇について5日の範囲内で時間を単位として与えることができるようになりました。

●『時間単位年休制度』導入の条件
時間単位の年休制度を導入するためには以下のことが必要です。
(1)労使協定の締結:当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は従業員の過半数を代表するものとの間で労使協定を締結する必要があります。
(2)労使協定で定める事項
①時間単位年休の対象労働者の範囲:仮に一部を対象外とする場合は、「事業の正常な運営」を妨げる場合に限られます。取得目的などによって対象範囲を定めることはできません。
○工場のラインで働く労働者を対象外とする。→事業の正常な運営が妨げられる場合は可。×育児を行う労働者に限る。→取得目的による制限なので不可。
②時間単位年休の日数:5日以内の範囲で定めます。分単位など時間未満の単位は認められません。
③時間単位年休1日の時間数:1日分の年次有給休暇に対応する時間数を、所定労働時間数をもとに定めます。時間に満たない端数がある場合は時間単位に切り上げてから計算します。(例)1日の所定労働時間が7時間30分で5日分の時間単位年休
→7時間30分を切り上げて1日8時間とする。
→8時間×5日=40時間分の時間単位年休
(7時間30分×5日=37時間30分を切り上げて38時間ではない。)
④1時間以外の時間を単位とする場合の時間数:1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数(例えば「2時間」など)を記入します。
※前年度からの繰越しがある場合は、当該繰越し分も含めて5日以内となります。

●『時間単位年休制度』の活用
厚生労働省の調査によると、「年次有給休暇の取得日数」は8.6 日、「取得率」は48.1%という実情にあります(平成23 年「就労条件総合調査」。常用労働者30 人以上の民間企業)。
なかなか進まない年休取得を背景として誕生した本制度ですが、複雑な管理になるという課題もありますが、有効に活用することによって、従業員のモチベーションの向上につながる可能性もありますので、検討してみてはいかがでしょうか。

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