BCPのすすめ

中小企業診断士 北 明雄

近年、とりわけ昨年の東日本大震災の発生後、BCPの必要性が再認識され、いろいろな場でセミナー等の啓蒙活動が盛んに行われるようになっております。

しかしながら、中小企業庁によればBCPの必要性を感じながらも、実際にBCPを策定しているところは、製造業でさえ10%程度でしかないようです。これは、まだまだ啓蒙活動が不充分なためか、はたまた長引く不況によりマンパワーや資金にゆとりがなく業務に追われBCPにまで手が回らないためなのか、いずれにせよBCPの普及が思うように進展していないのが実情です。この点について、私は、特にBCPの普及活動や策定支援といった面で、中小企業診断士に対する期待とその果たすべき役割は大きなものがあるのではないかと感じているところです。

ここで、「診断士の視点」および私自身の経験からBCPの普及および策定についていくつかのポイントと感じていることとをあげてみたいと思います。

  1. 防災対策にはほとんどの企業が取り組んでいるが、BCP策定には至っていないところがほとんどであること。企業によってはBCPと称しながら防災のみの領域に留まっているところが比較的多いように見受けられます。
  2. 防災対策とBCPを一体のものとして捉える必要があることはいうまでもありません。そこで、この2つの概念を不可分かつ一体のものと認識しやすいように、単に「BCP」ではなく「LBCP」と表現すべきことを提案したい。すなわち、「L」は防災の対象となる生命・財産(Life)を、「B」は事業(Business)をそれぞれ表し、この2つを継続(Continuity)させる計画(Plan)をいいます。
  3. 業種や企業規模に見合ったBCPの策定がポイント。計画は策定したものの運用に適さず計画のまま放置されてしまいがちです。
  4. 企業は生きものですから、組織変更、人事異動、社会的経済的変化への対応などに適応する必要があり、BCPもこれらに適応すべく定期的な見直しが必要になります。
    また、BCPの策定はそのプロセスにおいて必然的に無駄の排除など業務を見直すき
    っかけとなるメリットがあります。
  5. BCPは企業自ら策定することが不可欠です。診断士はそのサポートに徹する姿勢を 維持することが大事です。間違っても策定代行をすべきではないと思います。それは企業自身が苦労して作ることをしなければ自らの腹に落ちにくいからです。
  6. 防災体制と同時にBCPの組織化が必要です。どちらも全員参加の組織体制により、それぞれの機能、形態、役割を明確に整えることが大事です。特に、緊急時の連絡確認体制については、カード化して各自に携帯させることが非常に有効と考えられます。
  7. 緊急時に備えて資金が必要となることはいうまでもありません。自己資金、借入れ、公的補助等調達手段はさまざまですが、日頃からキャッシュフロー経営に努め内部留保を厚くすることが求められます。診断士には、平時において経営改善を促し、それをサポートする役割があると考えます。

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