「改正労働契約法」は非正規労働者のためになるか

松井利夫

 同じ職場で5年を超えて働いているパートや契約社員など非正規労働者を対象に、本人が希望すれば企業は無期限の雇用契約に切り替えなければならないとする「改正労働契約法」が8月3日に成立し、交付日の8月10日後1年以内に施行されることになった。

改正の概要は次の通りである。

1.有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換
有期労働契約が5年を超えて反復更新される場合(注1)は、労働者の申込みにより、無期労働契約(注2)に転換させる仕組みを導入した。
(注1)原則として、6ヵ月以上の空白期間(クーリング期間)がある時は、前の契約期間
を通算しない。(注2)別段の定めがない限り、従前と同じ労働条件であること。

2.有期労働契約の更新等(「雇止め法理」の法定化)
雇止めの法理(判例法理)を制定法化する。
有期労働契約の反復更新により無期労働契約と実質的に異ならない状態で存在してい
る場合、または、有期労働契約の期間満了後の雇用継続につき、合理的期待が認めら
れる場合には、雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認め
られないときは、有期労働契約が更新(締結)されたものとみなす。

3.期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止
有期契約労働者の労働条件が、期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合、その相違は、職務の内容や配置の変更の範囲等を考慮して、不合理と認められるものであってはならないものとする。

今回の改正により、正社員と非正規社員との理不尽な待遇格差の改善に道が開けたわけであるが、パートが主力となっている製造業や小売業などは人件費の面で負担増になる。このため、企業側がパートの更新に慎重になる恐れもあり課題も多い。

厚生労働省の推計によると、パートや契約社員は全国で1200万人と、全雇用者の22%を占めている。平均年齢は44歳、年収200万円以下が74%、勤務年数は10年超12%、5年超~10年以内が18%である。

大手の企業では、「人件費への影響は避けられない」ことから、今後は、契約社員の雇用期間を5年以内にするなどの対策を考えているところもあるようだ。ここで、注意しなければならないことは、今回の改正が「5年以内の雇止め」の促進につながりかねないと考える人がいることである。非正規労働者の有期労働契約は本来、臨時的・一時的な業務を行わせるための雇用形態であり、そもそも常用的な労働者を雇い入れることを前提としていない。しかし現実には、企業が恒常的業務のために有期労働者を雇って反復更新を重ね、そして、都合のいいときに契約を打ち切るという法の趣旨に反した運用を行っているのも事実である。5年を超える前に雇止めすれば問題ないとの考えは大きな間違いである。

今までの「労働契約法」では、契約を更新するかどうかは企業の判断に委ねられているため、契約が突然打ち切られるケースもあり、雇用の安定をどう図るかが課題となっていたが、法律上この問題は解消される。しかし、「改正労働契約法」は会社負担に配慮し、別な会社で働くなど会社を離れた期間が6ヵ月以上あれば、5年の積み上げの対象としない規定を盛り込んでいる。そのため、途中に雇用契約のない空白期間(クーリング期間)を挟めば企業が何度でも契約更新ができるので、かえって不安定になるとの指摘もある。今後、企業側の運用の仕方を注意深く見守っていく必要がある。

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