「LINE」乗っ取り被害と「ゆでガエル」

中小企業診断士 有松 竜文

最近、巷を騒がせている「LINE」の乗っ取り被害。一般人だけでなく、有名人の被害報告なども報道されており、多くの方が「LINE」を使用していなかったり、詳しくなかったりしても、耳にしたことがあるのではないでしょうか。先日、私のところにも友人から「LINE」で次のようなメッセージが届きました。

『今忙しい?ちょっと手伝って欲しいんだけど』

この友人は、私よりも年下の為、普段のメール等も丁寧に送信してきます。なので、てっきり違う人に送るメールを私に間違って送ってしまったのだなと思いました。

『送信先間違えた?』という返信とあわせて、冷かしている感じのスタンプ(絵文字の一種)をしました。すると、すぐに 『コンビニでiTunesカードを買って』という意図の返信が届き、ここで私は初めて友人が「LINE」の乗っ取り被害にあっていると気づきました。

その後、私はその友人と関わりのある方に注意喚起のメールを行うと同時に、被害にあっている本人に電話とEメールで連絡を取り、早急に「LINE」を停止するように伝えました。結果的には、たまたま私のところが最初にきていたようで、被害にあう前に鎮火することができました。他の友人のところにも、私が注意喚起した後に同様の内容のものが届いたそうです。最初のメッセージから、乗っ取り犯がIDを破棄するまでの時間は、一時間足らずでした。その後、友人に確認したところ、私が被害に合うとは想像していなかったというコメントと、パスワードは多くのものが使いまわしで同一であると言っていました。

さて、この事例をみて皆様はどのように考えるでしょうか。ある人は、明日は我が身と考えるかもしれませんし、私はそのようなことにはならないと考えるかもしれません。ここで怖いことは、私の友人もそうでしたが、発覚して初めて危険な状態が続いていたということに気づく点です。「LINE」乗っ取り自体は、被害なのですが、今回の件は非常に幸運であったとも言えます。どのような方法かはわかりませんが、被害者は既にメールアドレス・パスワードを搾取されているということです。もしかしたら、PCが遠隔操作されているのかもしれませんし、他のサイトから漏れているのかもしれません。ただ、少なくとも同様のパスワードを設定している箇所については、同様の被害を水面下で既に実施されていて、クレジットカード情報や個人情報が盗まれているかもしれません。クレジットカード番号・誕生日・パスワード等があれば、Amazonなどで普通にネットショッピングを犯人が行うことも可能になります。

このようなことは、経営についても同様のことがいえるのではないでしょうか。被害がでるまでは安全だと思っており、少しずつ悪い状況に陥っているにも関わらず、気が付かずにある時に突然、危機に直面する「ゆでガエル」現象が往々にあります。「人の振り見て我が振り直せ」という言葉がある通り、表面上のことに囚われて安心せずに、今一度、現状分析をしてみてはどうでしょうか。また、幸運にも問題に気が付くことができた場合には、それは氷山の一角であるという認識を持って対応することで、被害を回避したり、最小限に収めたりすることができるのではないでしょうか。今回の件が、少しでも皆様の経営状況を点検するきっかけになれれば、幸いです。

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