小規模企業におけるIT活用の3つのポイント

中小企業診断士 岩崎彰吾

 昨今、ビジネスにITを活用することは当たり前になってきています。ITを活用するには投資が必要となります。投資に十分な予算がかけられない小規模企業がITを活用するためのポイントは何でしょう?

2013年版中小企業白書によると、電子メールの利用や自社ホームページの開設等、小規模事業者のIT導入は着実に進んでいます。中小企業庁の「IT活用に関するアンケート調査」によると、アンケートに回答した小規模企業735社のうち、6割強が経営課題の解決にITの活用が必要と考えています。経営課題の内容としては、「コスト削減、業務効率化」や「営業力・販売力の維持強化」をあげる企業が多く、ITにコスト削減や売上向上などの定量的な効果を期待しています。一方で必要と考えている企業の中で、実際にITを導入した企業は半数以下に留まっています。ITを導入していない理由として最も多い回答は「導入の効果が分からない」であり、次いで多いのが「コストが負担できない」です。費用対効果が判断できず投資に踏み切れないというところでしょう。その他、「IT活用を支える人材の不足」や「従業員のIT活用力の不足」などがあがっており、人に関する問題も解決すべき課題であることがわかります。
経済産業省の「中小企業IT経営力大賞ポータル」で「中小企業IT経営力大賞」認定事例として公開されている企業465社のうち、1割強の56社が小規模企業です。小規模企業の事例で最も多いのは、財務会計、販売管理、生産管理等の業務システムの事例で、全体の半数弱を占めています。次いで多いのがホームページ関連の事例です。内容としては、新規顧客の集客や会員管理等への活用事例が約3割、ネットショップの事例が約1割です。一概にホームページといっても様々な用途に活用されています。企業によって目的も多様ですが、ネット販売への対応については、消費者への急速な普及を背景に対象業種で取り組みが進んでいます。しかし小規模事業者ではこの機会を活かせていないのが現状です。2014年度版中小白書によると、小規模事業者の半数以上は自社のホームページを持っておらず、自社サイトでの製品販売・予約受け付けは1割程度、ネットショップ等への出店・出品は1割を切ります。販路開拓という面から取組優先度が高い課題といえるでしょう。

資金面や人員面の制約がある小規模企業のIT活用には3つのポイントがあります。

1つ目は「費用対効果の明確化」です。ITを導入する前に目的・目標を明確化し、期待される効果を試算する必要があります。期待効果は定量的な効果と定性的な効果に分かれます。試算方法は独自のやり方でもよいですし、外部のコンサルタント等に相談するのもよいでしょう。2つ目は「IT導入に合わせた業務の見直し」です。IT導入を業務改善の機会と捉え、対象となる業務の現状課題を把握し、解決策を検討します。当然、業務課題の全てをIT導入だけでは解決できないでしょう。業務プロセスや職務分掌の見直しが必要となるケースも多いことと思います。業務全体を考えて改善・解決を推進すべきです。言い換えると、業務の見直しこそがIT活用の重要成功要因なのです。3つ目は「所有から利用へのシフト」です。クラウドサービスの普及によって、ITは資産の導入から、サービスの利用へと切り替わってきました。費用面では先行投資的な導入から従量課金的な支払い形態への変化であり、要員面ではIT管理担当のアウトソーシング化ということになります。小規模企業のIT活用には今後必須となるサービスです。

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