いま考えるべき「ありたい姿」と「やるべき事」

 中小企業診断士 井田義人

 急激で終わりが見えない事業環境の変化は、日本の多くの企業に変革を求めています。

長く優良企業といわれた大企業の中にも、それに対応できずに経営危機に陥り、経営破綻や大幅減資などに追い込まれる企業なども多く報じられています。一方で、見事に業績を回復させる企業も少なからず存在します。その両者の違いはいったい何なのでしょうか。

その要因は様々ですが、ひとつ言えることは、自社の強みを活かし、再び成長してゆくためにはどうあるべきかを明確にし、それに沿った改革を実行できたか否かであると考えます。このことは、企業の進むべき方向性と、そのために何をしなくてはならないかを導き出すため、会社の理想の姿を明確にしておくことの重要性を私たちに示唆しています。

企業経営で最も重要といえる企業理念やビジョン。それを「ありたい姿」と読みかえて考えてみてください。あなたの会社は「ありたい姿」になっていますか?もしそうでないのであれば、そのために何をすべきかは見えていますか?そして社内ではそれが共有されていますか?

「ありたい姿」を経営者が示し、それに向かって社員が一丸となり、やるべきことに取り組むことができれば、ありたい姿は必ず実現できるはずです。経営者と従業員の皆さんが、日々必死に取り組んでいることを積み重ねれば、本当に「ありたい姿」に近づくでしょうか。

企業にとっての「ありたい姿」とは、決して“夢”や“憧れ”で終わらせてはいけません。それは現実に目指すべきカタチであり、それが実現されなければ企業理念は達成されないのです。

しかし、「ありたい姿」は一朝一夕に実現されるものではないことがほとんどで、それを実現するためには、現実的に達成可能な目標をクリアしながら、徐々にステップアップしてゆくほかに方法はありません。言いかえれば、「今あるべき姿」「来年あるべき姿」・・・を重ねた先にあるのが「ありたい姿」です。

まずは「今あるべき姿」を描き(Plan)、行動し(Do)、実現できたことを振り返りながら(Check)、まずはやり切る(Action)。この一連のサイクルで最初の「あるべき姿」になるはずです。そのひとつひとつの積み重ねを、「ありたい姿」に近づいていることを実感しながら繰り返す中で、着実に「ありたい姿」に近づけていくことが出来るはずです。

今、それに取り組んでいる中小企業があります。

「世の中が変わった。会社も変わらなければいけない。でもどう変わるべきか・・・」

社長のそんな言葉で、プロジェクトはスタートしました。

社長は、やる気のある社員を募り、「私たちの会社のありたい姿」を立場や役割を超えて真剣に議論し、皆が共感できる言葉で表現しました。

次に、それを実現するための要素(商品や宣伝・営業方法など)のありたい姿に分解し、「●●のありたい姿」をいくつも描き、現在の会社の姿とのギャップを明らかにしました。そのギャップを一つ一つ埋めてゆくことで、ありたい姿が実現できると考えたのです。

ギャップを埋めるために「やるべき事」はいくつもありますが、その中で優先すべきものはどれか、実行にはどのくらいの時間が必要かなどを議論し、まずは一定期間の中で確実に実現できる「あるべき姿」を描き、それに向けてやるべき事を実行に移しています。

その取り組みは、まだまだ進行途上にあり、「ありたい姿」の実現にはもうしばらく時間が必要なのだとは思います。でも、今のまま続けることで、必ず実現できると信じて社長とプロジェクトメンバーはがんばっています。

また、その活動は「ありたい姿」の実現以外にも、会社をより良くする多くの成果をもたらしています。

社長と社員がその立場や役割を超えて「会社をもっとよくしたい」「自分たちの会社はこうあってほしい」という思いを共有しながら議論を重ねることで、皆の思いが言葉になり、積極的に意見が言える会社に変わり始めました。また、「未来につながるストーリーを、今この瞬間もみんなで作っている」という雰囲気は、現場の社員の意識にも変化を生み始めました。「日常業務の一つ一つの意味を考え、どうするべきかを考えるようになった」「いらないモノが見えるようになった」「物事を考えるときに迷うことが減って、ブレなくなった」といった声が出始めています。

日々の事業活動のなかで、こういった活動のための時間を作るのは大変なことです。しかし、大切な会社を末永く存続させるために、終わらない未来のために、少しだけがんばって時間を作り、会社の進むべき方向と、そのために「やるべき事」を明らかにしてみるというのも大切なことではないでしょうか。地道にコツコツとあるべき姿の階段を上ってゆけば、必ず「ありたい姿」は実現できます。それは決して”憧れ”や”夢物語”ではないのです。ご興味がありましたら、ぜひ私たちにご相談ください。全力でサポートいたします。

関連記事

Change Language

会員専用ページ

ページ上部へ戻る