中小企業者はホームページを持とう

中小企業診断士 中津山 恒

ホームページを持たない中小企業者が多い理由

事業を行う上では、ホームページとメールアドレスは、電話とFAXと同等かそれ以上に重要です。ホームページは事業者の「顔」とも言うべきもので、利用者にとっては、事業の内容や特徴、商品やサービスを知るための重要な手段だからです。事業を行っていることの証として、ホームページを印刷して提出するよう求められることもあります。

しかし、個人事業主を含む中小企業者には、これほど重要なホームページを所有していない事業者も少なくありません。ドメインを取得済みなのに、ホームページをもたないという例も案外あります。年間数千円とはいえ、ドメインの維持に費用をかけているにもかかわらず、ホームページを運用するまでに至っていないのです。

ホームページを持たない訳にはいろいろありますが、費用を理由として挙げることが多いようです。構築に数十万円、月々の運用に数千円から数万円程度の費用がかかることが多く、それが最大のネックになっていると見られます。

インターネットで提供される無料サービス

ところで、インターネットで提供されるサービスには、無料のものが多数あります。読者の皆様がよくご存知のところでは、FacebookやTwitterなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)があります。

無料でサービスを提供できる秘密は、ベストセラー「フリー〜〈無料〉からお金を生みだす新戦略」(クリス・アンダーソン、日本放送出版協会)で有名になった「フリーミアム」というビジネスモデルです。フリーミアムはフリーとプレミアムから作られた造語で、無料(フリー)サービスで利用者を増やし、その中から一定数以上の有料(プレミアム)サービスの利用者を獲得して、そこで得た収入で全体の費用を賄う仕組みです。

無料でホームページを運用する

インターネットで無料提供されるサービスは、SNSに限ったことではありません。ホームページを制作・運用できるウェブサイト構築サービスにも、無料で提供されているものが多数あります。

多くのサービスでは独自のドメイン(たとえば、nakatsuyama.biz)を設定することはできませんが、中には無料で独自ドメインを設定できるものもあります。

ウェブサイト構築サービスを使うと、マイクロソフトWordを使うような感覚で簡単にホームページを制作し、運用することができます。使用するのはウェブブラウザだけで、専用ソフトウェアは必要ありません。アクセス状況の統計についても、基本的な機能は備えています。

ウェブサイト構築サービスによっては、ドメインの取得・維持費用だけで、独自ドメインのホームページを手軽に制作し、運用することもできます。

運用を業者に任せずに自分で行うことのメリットとして、自らの意思で適時更新できることがあります。ホームページを制作してから長期間更新していないと、事業を行っているかどうかさえ疑わしく感じられ、ホームページがないよりも悪いことがあります。定期的に新しい記事を掲載することによって、こうした事態を避けられます。

ウェブサイト構築サービスを利用する上で気をつけること

ここまで述べた内容では良いこと尽くめに見えるウェブサイト構築サービスですが、サービスの選択において留意すべき点がいくつかあります。

  1. 情報
    「無料」というのは、直接的に出て行く費用がないという意味です。しかし、実際の「コスト」としては、サービスを利用した作業に必要な労力を合わせて考える必要があります。
    作業には、サービスに関する情報が必要不可欠です。情報がなければ試行錯誤を迫られるため、場合によっては作業に大変な労力を要し、コストが増大してしまいます。
    なお、インターネットで提供されるサービスの常として、ウェブサイト構築サービスも随時更新されています。最新の情報が多く存在するかどうかに留意が必要です。
  1. プロのサポート
    ホームページを運用していくうちに、構成やデザインがどうにもすっきりしなくなったり、場合によってはデザインが崩れて自力で直せなくなったりすることもあります。保険の意味では、いざというときにプロに作業を依頼できるかどうかが重要ということもあります。
  1. バックアップ
    どのウェブサイト構築サービスもバックアップを行っていますが、その目的はサービスの安定運用です。何かあったときに過去のバージョンに戻すことが目的ではありません。したがって、利用者が誤ってサイト全体を削除してしまった場合などに、サービスの事業者が復旧してくれることはありません。
    利用者に対してバックアップ機能が提供されていない場合には、自力でバックアップする手段があるどうかの確認が必要です。
    なお、バックアップはできてもリストア(復旧)はできないサービスも存在することに注意してください。
  1. 移行
    ホームページを運用しているうちに、他のサービスや、レンタルサーバーを含む自前のサーバーに移行したいという要求が出てくる場合もあります。将来の計画によっては、移行しやすいサービスを選択する必要があります。

ホームページでマーケティング

ホームページをうまく活用できれば、大きな負担なくマーケティングを行うことのできるツールとなります。まだホームページをお持ちでないようでしたら、本稿でご紹介したウェブサイト構築サービスを使ってホームページを制作・運用してみてはいかがでしょうか。

<セミナーのご紹介>

川崎市産業振興財団とかわさき中小企業診断士クラブの共催で、筆者が講師を務める、ホームページを活用したマーケティングに関するセミナーがあります。本稿では触れなかったSNS活用やアクセス解析についても解説しますので、よろしければご参加ください。

題名:「0円から始める」中小企業向けWebマーケティング入門
日時:平成27年11月18日(水)14:00〜16:30
会場:川崎市産業振興会館 9階 第2研修室
申込方法:川崎市産業振興財団ホームページ参照
http://www.kawasaki-net.ne.jp/seminar/event.html

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