長寿企業を目指して、経営革新を!

井上美夫

企業の目的は何でしょうか?

売上の増加を図ったり、利益を増やすことでしょうか?

利益をもちろん重要ですが、利益を目的とすると、その利益を得るために売上高の不正な水増しを行う企業、賞味期限をごまかす企業、廃棄すべき食品を販売する企業、また、従業員に過剰労働をさせるブラック企業がでてきたりします。

ピーター・ドラッカーは、企業の目的を「顧客の創造」※1といっています。また、彼は、「利益は企業や事業の目的ではなく、条件なのである。また利益は、事業における意思決定の理由や原因や根拠ではなく、妥当性の尺度なのである。」ともいっています。(※1原文は、There is only one valid definition of business purpose: to create a customer.)

では、なぜ顧客を創造しなければならないのでしょうか? それは、企業を存続させるためでしょう。企業を存続する必要がなければ、「顧客の創造」も必要がなく、利益も必要ありません。つまり、企業を継続し続けることが一番の目的ではないでしょうか。継続してこそ企業の存在意義があります。企業の目的は「企業の継続」です。

企業の平均寿命は30年といわれていますが、30年ということはほとんど創業者で終わりを迎えるということになります。そうではなくて、企業は2代目、3代目と承継し100年超企業を目指すべきです。ちなみに、日本は長寿企業の数が一番多く、100年超の企業は2万6000社あります(帝国データバンク、2013年)。300年以上の超長寿企業も多数存在しています。

参考までに、日本(おそらくは世界)で一番の長寿企業は、大阪にある578年(飛鳥時代)に創業した金剛組です。この会社は、神社仏閣建築の設計・施工・文化財建造物の復元、修理等を行っています。その次に長いのは705年創業の甲州西山温泉にある慶雲館であり、3番目は718年に創業している石川県粟津温泉の法師旅館です。

ここで、企業を継続させるための重要ポイントについて考えてみます。

東京商工会議所は、東京23区内にある創業100年以上の長寿企業の調査を発表しています(引用:2015/4/24付日本経済新聞)。存続してきた最大の要因は、71.3%が創業当時の製品・サービスなどを「改善・改良した」ことであり、「変えずに守り続けた」(9.3%)を大きく上回っています。創業時から変わってきたモノは、「販売先・顧客」が72.6%と最も多く、「仕入れ先・原料調達先」が次に多かった。一方、変わっていないとの回答が最も多いのは「信用第一・コンプライアンス重視」(48.3%)となっています。また、62.1%の企業は、変革に積極的であると回答しています。つまり、「長寿企業になるのは本業重視と信用第一の姿勢は守りつつも、時代のニーズに合わせて機動的に変化することが必要だ」と分析できます。

ダーウィンの進化論は良く知られています。「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ」と言っています(注記:ダーウィンの『種の起源』にはこのことは書かれておらず、後世の創作ではないかといわれていますが、この言葉には重要な意味があると思います)。

ニーズ変化・環境変化に合わせて柔軟に事業内容・製品・サービスを変えていくことは、企業を継続するためには必要です。NHK連続テレビ小説「あさが来た」で、主役の“あさ”は、両替屋に嫁いでいますが、汽車の登場により時代が求めている石炭事業に乗り出し、落盤事故などの苦労を重ねながらも成功しています。また、両替屋から銀行に事業転換しています。これは、まさに時代の変化に柔軟に対応して成功している事例といえます(参考:モデルとなったこの加島銀行(ドラマでは、加野銀行)は、50年後に3つの銀行に分割され、そのうちの2行が今の三菱東京UFJ銀行と、りそな銀行になっています)。

繰り返しますが、企業の目的は継続であると考えます。継続するためには環境変化に応じた経営革新が求められます。継続することが会社・社員のためにもなり、お客様からの信頼を得られ、社会にも貢献できることになります。つまり、近江商人の言うところの「三方よし(売り手良し、買い手良し、世間良し)」となります。

「かわさき中小企業診断士クラブ」では、公益財団法人川崎市産業振興財団の実施する諸事業推進に協力すると共にクラブ独自の事業を展開し、川崎市内の中小企業の経営革新・新分野進出・創業・人材育成支援等々を通じて、中小企業の成長・発展を図ることは勿論のこと、地域経済の活性化に貢献することを目的としています。当クラブのメンバーが、毎週火曜日の午後、財団で経営相談を行っていますので、お気軽に相談にお出ましください

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