成熟化の時代における製造業の商品開発

中小企業診断士 齊藤 拓

川崎市に移ってきてから10年近く、私は週に一度か二度は、住まいの近くにある同じ自動販売機で飲み物を購入しています。先日ふと感じたのは

「最初にこの販売機で買った時と、今と比べても、商品がほとんど変わっていないのではないか。」

ということでした。無論これだけの期間には、色々な新製品が一時は組み込まれているのでしょうが、結局定番商品に戻ってしまう。言い換えればこの10年間、定番に育ったヒット商品がなかったということになります。

別に清涼飲料水に限った話ではありません。実際にコンビニエンストアの店頭をご覧いただき
「この10年間で発売された商品ってどれだろう。」
とお考えになられれば、ほとんどないことに気づかれるでしょう。この間各企業が争って、幾多の新商品を市場に投入していることでしょうが、これが現実ということになります。

「これはいい」「これは便利だ」と従来品以上の便益を多くの消費者が感じられる、そこまでの製品の開発が困難になり、国内製造業が全て成熟化し成長が見込みにくくなっている。現在の日本の状況がこんなところにも表れています。

これを大企業だけの話と考えることはできません。中小の製造業の場合、独自に商品開発を行うのは、基本的には食品製造業やアパレル・日用品製造業などの業種が中心となるとして、ほとんどの企業が新商品を出しても売れず、従来の主力商品に頼らざるを得ないことが現実ではないでしょうか。

「新製品を出しても売れない時代になった」
のであれば
「製品開発などしてもムダではないのか。それに経費を使うより、利益の最大化に注力すべきではないのか。」
とお考えになることも当然ありうると思われます。

私見を述べさせていただければ、この考えは誤っています。

プロダクトライフサイクルという考え方があります。商品というものは、導入期→成長期→成熟期→衰退期という4つの段階をたどっていくものであり、現在成熟期にあり安定しているように見えても、いつかは衰退期に入っていくというものです。

理屈以前に経営者であれば
「どんな製品でも、永遠に売れ続けることはありえない」
ということは、体感されているのではないでしょうか。

そうであれば、現在の主力商品が利益を出し続けているうちに、次の主力商品を生み出す準備をし続ける。商品は永遠でなくても企業は永遠であり続けるためには、それが必須となっていきます。

さて商品開発の基本は、「市場のニーズと自社のシーズ(技術)」のマッチングにあります。消費者が何を求めているかニーズを察知し、自社の技術力を生かし対応した商品をつくることがマーケティングの基本ですが、言うほどに簡単なことではありません。自社のシーズはともかく消費者のニーズは、いくら統計データを解析しても、なかなか把握できるものではないからです。

こういう時私がお勧めしているのは、「自社商品の分析」です。売れ行きの良い商品があれば、それはニーズとシーズがマッチしているからですし、苦戦している商品はニーズとシーズのどちらかに問題があると考えられるからです。

食品製造業を中心に数社、商品開発のお手伝いをさせていただいたことがありますが、その際ある企業で、開発業務に携わっている技術系や営業系の社員向けの研修に試してみた手法があります。簡単なものですが、ご紹介しましょう。

  1. 前期1年間の商品別の売上高(単価と数量)のデータをそろえる。限定商品などは除き、主力の40~50アイテム程度に絞る。
  2. 商品を特性別に分類する。
    高齢者向け、若齢層向け。更に男性向け、女性向けという2つの切り口からみると、4つの分類が可能になります。これは例ですが、おそらくどこの企業でも、自社製品全てに何の特性もなく分類もできないケースは、まずないと思われます。
  3. ホワイトボードでグラフをつくり、縦軸を単価・横軸を数量とする。
    その上で、分類別に色の異なるマグネット(例えば緑は高齢層男性向け、青は若年層男性向けというように)を用意し、商品名を書いたテプラを貼る。
  4. ホワイトボードのグラフ上にそれをすべて張り付け、結果を見ながら以下につき討論していく。
    1. 自社の売れ筋は何か、逆に苦戦している商品は何か。
      苦戦原因はどこにあるのか。競合はどんな商品があり、自社で行うならどんな対策があるのか。
    2. 空白地帯はないのか(例えば単価500円台の若年層女性向け商品がない等)
      あるとすれば、その地帯向けに商品開発をする必要はあるのか。
      もし開発するならどんな製品になるのか。

これだけで製品開発ができる訳ではありませんが、私がこういう研修をやる目的は、討論を通じどんな製品を出すべきかという「開発のテーマ」を、しっかり持ってもらいたいと思うからです。

この企業の場合、開発はほとんど経営者が一人で行い
「本当は社員からアイデアを募りたいのだが、なかなか出て来ない。」
という悩みをお持ちでした。それなら先ずアイデアを募るためのテーマが必要だと考えた次第です。

経営者であれ社員であれ、漠然と「うちの会社はこの分野が強い」「逆にこっちは弱い」ということは、認識されてはいます。それを一度洗い出すことで開発のテーマを絞る「自社の商品分析」は、やり方はそれぞれの企業によって変わるとしても、是非一度お試しいただきたいと思います。

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