日本のものづくりの強みを認識しよう!

代表幹事 山﨑康之

かわさき診断士クラブも2002年2月の発足以来早くも15年目に入っております。当クラブは約80名の会員が在籍し、川崎市内の中小企業の支援に取り組んでおります。

平成27年度は新たに川崎市経済労働局と協同で市内の中小企業の抱える課題や今後の支援の方向性を把握することを目的に企業訪問を実施しました。川崎はものづくりの発祥の地ということもあって、45社訪問した企業のうち34社が製造業でした。訪問した製造業の抱える課題は、①売上の減少、②新規顧客の開拓、③販路開拓、④多品種小ロット生産体制の確立、⑤技術・技能の伝承、⑥コア技術のブラッシュアップ、⑦若手人材の育成、⑧事業承継などが挙げられ、これらの課題解決が急務となっています。

H28年度は行政、公的支援機関、支援団体との一層の連携強化を図り、中小企業が抱える課題解決に「チームかわさき中小診断士クラブ」一丸となって取り組んで参ります。

それでは本題に入ります。過去に日本の経済成長を牽引してきた電機メーカーの経営危機に関するニュースや記事を目にする機会が増えております。今回は日本のものづくりについて一緒に考えてみたいと思います。

戦後の高度経済成長を牽引したのは自動車と電機メーカー

1954年11月から31ヶ月続いた「神武景気」において、日本の高度経済成長の幕が開くと同時に、「3種の神器」と言われた白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫を製造・販売することで、電機メーカーは一気に成長・拡大が始まりました。その後、岩戸景気やオリンピック景気など景気と不況を繰り返し、1965年10月から57ヶ月続いた「いざなぎ景気」では、今度は「新3種の神器」といわれた自動車・カラーテレビ・クーラーが大人気となり電機メーカーは勿論のこと、ピラミット状に巨大な産業集積を形成し、その中には多くの中小企業を抱えている自動車メーカーが加わり一気に日本経済は加速し高度成長の最盛期を迎えました。その後2回のオイルショックや円高なども経験しましたが、1980年代はバブル景気がしばらく続き、電機メーカー・自動車メーカーは日本の高度経済成長を確実に牽引してきました。そして、1992年突然バブルが崩壊し、円高が進む中で失われた20年が続きました。途中景気回復が始まろうとしたら2008年米国発の金融危機(リーマンショック)に直面し、なんとか努力を重ね立ち直りかけたら、今度は記憶にも新しい2011年の東日本大震災に見舞われ、再び厳しい状況が訪れました。

震災からの復興を進める中、2012年末に第二次安倍政権が発足すると同時に、経済政策として「アベノミクス3本の矢」が発動され、金融緩和・機動的な財政政策により円安、株高をもたらし、輸出事業に強みを持つ自動車メーカーなどは自助努力もありますが、業績を大幅に向上させております。然し、バルブ崩壊まで好調だった電機メーカーにおいては、経営危機に陥った企業が出てきております。

現在、日本企業を取巻いている環境は、人口減少・少子高齢化の進展、新興国の台頭による更なるグローバル競争の激化、地球温暖化の進展、消費者ニーズの多様化、市場の成熟化、為替変動の不透明さなど明るい材料は見当たりません。このことも電機業界に大きく影響を与えていることは否めません。

電機メーカーは何故競争力を失い経営危機に陥ったか?

同じものづくり企業である好調な自動車業界と対照的な電機業界の違いなどの面から考察したいと思います。

日本のものづくりの競争力を考えるときによく出てくるのが「製品アーキテクチャー戦略論」(東京大学大学院藤本隆宏教授の研究グループが提唱)です。製品アーキテクチャーとは、設計思想とも言われ、製品を構成している部品と、その部品に要求されるさまざまな機能との対応関係のことをいいます。世の中の製品は大きく2つに分類されます。一つは部品の設計を相互調整して、製品ごとに最適設計することで顧客が満足する製品全体の性能を発揮できる「擦り合せ型」ともう一つは部品の結合部が標準化されていて、これを寄せ集めて多様な製品ができる「組み合せ型」があります。

「擦り合せ型アーキテクチャー」の代表的なのが自動車です。ボディ・シート・インスト・タイヤ・エンジン・トランスミッション・サスペンション等、自動車を構成している数多くの部品を緻密な計算のもとに連携させ最適配置しなければなりません。一方、「組み合わせ型アーキテクチャー」の代表例はデスクトップパソコン等のデジタル電化製品が挙げられます。必要な部品を寄せ集めれば、完成品にして最低限の機能を発揮させることができます。パソコンや電子関係の技術に詳しい人であれば自分でも作ることは可能です。しかし、自動車は自分で作ることは不可能です。

日本企業が国際競争力を発揮している領域は、「擦り合せ型」に近いアーキテクチャーを持っている製品に多いといわれています。つまり、モノを開発し生産するのに手間暇と時間がかかる複雑な製品に日本企業は強いといえます。家電製品などの組み合わせ型のアーキテクチャー製品は、どこの国の企業でも比較的簡単につくれることから、一般消費者向けの製品の競争力はどういった価値や機能を提供すればいいかという最初の製品企画力や、完成品をいかに上手く宣伝して売るかといったマーケティング力に左右される部分が相対的に大きくなっているといえます。また、日本企業は高い技術力で性能や機能を向上させることで高価格の製品をつくることに注力してきましたが、韓国や中国、新興国でのものづくりでは高い機能や性能は必要とされず、しかも安い労務費でものづくりできるので、顧客のニーズに合った最小限度の機能を有する低価格製品を提供していくので、日本はグローバル競争に負けてしまい、事業縮小あるいは撤退せざるを得ない状況に陥ったことは言うまでもありません。

これまで述べてきたことからも、自動車メーカーが「擦り合せ型」のものづくりでグローバル競争に戦い続けられる体力を有し、確実に存続し続けているのに対し、一方の電機メーカーは「組合せ型」のものづくりを行ったことでグローバル競争の戦いに負け、選択と集中を強いられ事業売却や海外企業への企業売却など存続の危機に繋がっているといえると思います。つまり、電機メーカーのものづくりが、顧客のニーズが多種多様で、しかも使い方、消費の仕方が地域ごとに違うことに気づけなかったこと、先進国を相手にしたビジネス展開においては、決まったメーカーだけでの競争でよく、製品も高性能・高機能付加価値で、高い値段がついても売ることができたが、世界人口の60%を占めるBRICSや新興国においては、高性能や高機能は全く必要とされず、ただ安いモノしか売れないことへの対応ができなかったことが、今日の日本の電機業の衰退に至ったといえます。

日本の強みであるものづくりを継続・進化させていくには

日本のものづくりの強み(欧米企業にはない特性)は、①多種多様な優れた技術や技能の蓄積、②作り手と使い手が連携して擦り合せやつくり込みを行う技術開発力、③三現主義による問題・課題解決能力(現場力)、④多能工の存在、⑤開発・生産・購買など部門間を越えた連携体制の確立(チームワーク)、⑥より良いものをつくろうとする熱意、⑦擦り合せ型の製品開発力などを有していることが挙げられ、競争力の源泉になっています。

中小企業にとって取引関係にある大企業が消滅していくことは仕事がなくなっていくことにも繋がりますが、企業として事業を存続し、従業員の生活を守り、地域社会へ貢献していくことは何が何でも果たしていかなければなりません。そのためには、これらの自社のものづくりの強みに更に磨きをかけ、競争社会で生き残り、環境変化に左右されない企業体質づくりに取り組んで行く必要があります。

今後の日本のものづくりへの期待

自動車のエレクトロニクス化はかなり進んできておりますが、まだまだ電子化されていく範囲はたくさん残っています。縮小していく家電製品依存型から脱却して、自社の強み(コアコンピタンス)を武器に自動車部品関係への参入にチャレンジしていくことが選択肢として考えられます。

品質や技術レベルのハードルが高い自動車部品関係への参入にあたっては、解決しなければならない多くの課題が残っていますが、これまで蓄積してきたエレクトロニクス関係のものづくり技術(コアコンピタンス)に磨きをかけ、新たな市場に活かしていくことが生き残りに繋がります。

ものづくり企業の支援において、中小企業経営者と一緒に企業が持っているものづくりの強みを、我々中小企業診断士の得意とする経営管理・財務管理・人事管理・生産管理(設計開発・製造技術を含む)・販売管理・ITなどの幅広い専門的な視点から分析を行い、具体的戦略を策定し、新たなビジネス展開に向け取り組んで行くことで、日本のものづくり技術を未来永劫継続させていくことに繋がることを期待したい。

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