IOTって何だ?

入谷 和彦

1.IOTとは?

最近はやりの「IOT」(Internet of Things)とは、いったい何でしょうか。インターネットとthings(物)をつないだことのように言われています。しかし、これは、間違ってはいないものの、本来のIOTの一部に過ぎません。

ISO/IECで定義が出ています。翻訳すると「物理的世界とバーチャル世界の情報処理を行うために、物、人、システム、および情報資源を、インテリジェント・サービスによって相互接続するインフラストラクチャー」となります。

何のことかよくわかりませんが、つなげられるものは何でもつなげて、「インテリジェント・サービス(これまでなかった何らかの役に立つ高度なサービス)」を実現するインフラということで、「インテリジェント・サービスの実現」が目的で、「つなぐ」がキーワードです。「物」の接続も含まれますが、人間、データ、ビッグデータ、アプリケーション等、あらゆるものを対象としています。今更IOTなどと言わなくても、「IT」や「ITC」と言っても差し支えはないのですが、世界中の組織が「IOT」として打ち上げて、予算を獲得して、より高度な「インテリジェント・サービス」を実現しようとする活動になっています。

2.IOTの階層モデル

少しわかりやすくするために、IOTの階層モデルを紹介します。

  • 第1階層(最上位の階層)はクラウドです。ここには、クラウド上で動くコンピュータによる広域のビッグデータや広域のアプリケーションも含みます。
    →第1階層と第2階層を広域ネットワークでつなぎます。
  • 第2紀層はローカルサーバです。工場内やオフィスで直接使用するサーバを想定してください。ローカルなビッグデータやアプリケーションは、ここに含みます。
    →第2階層と第3層をローカル・ネットワークでつなぎます。
  • 第3階層は、個別のデータを収集するセンサーや各種の機器やデバイスです。
  • 端末、スマートフォン、ウェラブル端末等は、人間とのユーザ・インターフェースとして、第2階層と第3階層にアクセスします。

なお、システムの組み方によっては、端末、スマートフォン、ウェラブル端末等は、データ収集のために第3階層となる場合もあります。

第3階層で収集した各種データを、ネットワークによって第2階層、ものによっては第1階層へつなぎ、ここで「インテリジェントなサービス」を行うわけです。第3階層はセンサー等の「物」とは限りません。人間が入力したデータやスマートフォンの操作データの場合もあります。システムや業務プロセスによって、第1階層から第3階層までつながれているものもあれば、第2階層と第3階層だけのものもあります。

3.IOTの事例

事例をいくつか紹介します。

(1)リストバンドによる健康管理サービス

Fitbitというリストバンドを装着すると、歩数・消費カロリー・睡眠記録・心拍数などが計測可能になり、測定結果はスマートフォンで確認でき、健康管理、運動、ダイエットのアドバイスを行うサービスで、実用化しています。将来的にはウェアラブル端末を装着すると、人間の生体データ(体温、脈拍、発汗、血流、他)を収集して、予防診断や、健康のアドバイス、さらには高度医療まで行う開発がすすめられています。

(2)ビッグデータの解析によるマーケティング・サービス

通信販売のアクセスデータや購入データは膨大なビッグデータとなります。これを解析することにより、その時、その場所で、その人が何を買う可能性が高いかを分析できます。その結果に基づいて、例えば店内で顧客のスマートフォンに特定の商品情報を送信したり、通信販売のサイトで特定の商品を上位に表示すれば、売上を上げることが可能となります。

この他、工場内で各種データを収集して自動的に生産調整を行って生産効率を上げるもの(ドイツのIndustrie 4.0等)、ディズニーワールドで全ての客にリストバンドを装着させ来場者の状況を確認して混雑状況に応じたスタッフ配置や在庫管理を行うもの、自動車の自動運転、電力のスマートグリッド等、すでに実用化されたもの、開発中のもの等様々な「IOT」があります。

4.何がポイントか

IOTで重要な点は、必要な技術はほぼ開発されている、ということです。もちろん今後も技術革新は進み、新しい機能の創出やコスト低減が行われるでしょう。しかし、企業や組織に必要な「インテリジェント・サービス」を実現するための要素技術は、既に開発済みです。

では、IOTの実現では何がポイントか。それは「人材」です。既にあるIOT技術を活用してビジネスの企画・設計を行い、企業や組織に役立つ「インテリジェント・サービス」を実現させることのできる人材が必要ですが、圧倒的に不足しています。今後は「IOT」の活用が企業の競争力を大きく左右する可能性があるので、人材の育成が喫緊の課題になってきます。

その他、IOTの実現にあたっては、物のコントロールがあるので安全性の確保、外部からの妨害を防ぐためのセキュリティ、データ利用面でのコンプライアンスといった点で、解決すべき課題は多々ありますが、IOTを実現しながら解決していくことが必要です。

以上

 

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