産業競争力強化法と創業支援

公益財団法人川崎市産業振興財団
プロジェクトマネージャー 宮本直樹

 

今回は寄稿の機会をいただき、創業支援について、特に平成26年1月に施行された「産業競争力強化法」の関連で記すことといたします。

ご存知のように産業競争力強化法では、「創業期」「成長期」「成熟期」「停滞期」といった事業の発展段階に合わせた支援策により産業競争力を強化するとしており、創業の支援は大きな柱として位置づけられています。

具体的な施策の一つとして重要なのは地域の創業促進です。市区町村が民間の創業支援事業者(地域金融機関、NPO法人、商工会議所・商工会等)と連携して、ワンストップ相談窓口の設置、創業セミナーの開催、コワーキング事業等の創業支援を実施する「創業支援事業計画」について、国が認定することとしています。そして地域で創業・起業者および準備をしている者が定められた事業による支援を受けて認定されると、補助金等の各種支援施策を受ける要件を満たすことになります。特筆すべきは、今年度よりこれが創業補助金を申請する際の条件となったことです。

川崎市ももちろん認定を受けており、川崎市産業振興財団は創業支援事業者として実際の支援にあたっています。財団では上記の事業のうち、①経営相談として専門家による窓口等での対応、②創業塾の開催、③かわさき起業家オーディションの開催を主なものとして実施しています。これらはいずれも中小企業診断士の皆さんが活躍できる分野であり、また期待されていることは言を待ちません。

強化法ではその他にもいわゆるベンチャー企業支援として、企業によるベンチャー投資に対する税制優遇制度、国立大学法人等からのベンチャーキャピタルへの投資などの施策を設けています。またビジネスインキュベーションも支援事業として認められています。

ここで上記の関連より、投資、インキュベーションに関して最近の流れを記しておきたいと思います。インキュベーションといえば中小機構等の公共機関が運営する創業支援施設がこれまで創業・起業の拠点としてその役割を果たしてきましたが、ここにきて新しい動きが出てきています。それは投資と支援を同時に行う、民間の「インキュベーター」の出現です。インキュベーターとは、スタートアップが成功するためのプログラムやオフィスを提供してくれる組織のことです。投資家を紹介してくれることが大きなメリットで、アメリカでは既に非常に多くのインキュベーターが活動しているのです。開発資金の低コスト化が進んでいる環境変化をうけて、インキュベーターは多額の金を持つVCとは異なり、少額の資金を複数のスタートアップに投資しています。わが国でもサムライインキュベート、フェムト・スタートアップ、オープンネットワークラボなどが知られており、IT企業を中心に成功例を創出しつつあります。

これはあくまで私見ですが、今後は従来の公的機関中心の創業支援施設との分業が進み、インキュベーターはIPOを目指すような拡大志向のベンチャー、公的インキュベーションはより小規模な創業・起業の支援へと分化していくのではないかと考えています。

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