儲かるものづくり実現に向けての仕組について

 

草刈利彦

■「よいものを作れば売れる」時代は終わった

「よいものを作れば売れる」時代は終わったと言います。しかし、企業のご支援をしていると、良いモノをつくったけど売れないのだが、売り先を紹介してくれないか、という相談が相変わらず多いのです。その傾向はベンチャー企業でも長年製品を創っている企業でもかわりません。また、規模の大きさにもよらないのです。

「売れる製品が良い製品」ではないでしょうか。お客様が喜んで対価を払っていただける製品をお届けすることが企業のゴールです。お客様に納得していただける製品の品質(Quality:Q)、コスト(Cost:C)、納期(Delivery:D)を達成して、「売れる製品」ができたと言うことができます。

その「売れる製品」を作り出す仕組みに「一気通貫製品開発法」があります。その概要についてお話しします。

 

■ 5つの製品開発段階からなる仕組み

「一気通貫製品開発法」では製品開発を次の5つの段階にわけます。

  1. 構想段階: 新製品に対する要求事項を整理します。
  2. 計画段階: 製品仕様、目標原価、量産開始時期(あるいは発売時期)を決定します。
  3. 製品設計段階: 構想設計、詳細設計、試作検証などを行い、開発を終了します。
  4. 量産段階:量産試作・試験をおこない、量産準備を完了します。
  5. 初期流動段階: 量産が上手く立ち上がったか。量産製品の品質に問題がないか確認します

 

development-method

この「一気通貫製品開発法」の5段階を遂行していく上で重要となる3つのコンセプトと2つのマネジメントについてお話しします。

■  コンセプト1 フロントローディング - 仕様の早期明確化 –

プロジェクトの失敗原因の50%以上が要件定義に起因しているという調査結果があります。プロジェクトの初期段階で製品仕様について組織横断的な検討が十分おこなわれれば、手戻り発生を極力抑えられます。

手戻りの発生は、製品品質、開発コスト、納期すべてに影響します。開発終了間際に製品仕様の変更が発生した時どうなるでしょうか。開発スケジュールを守るため、設計検討に十分時間をかけられないかもしれません。その結果、再設計品でトラブルが見つかり、その解決処理のために納期が送れ、開発コストも益々掛かってしまう。

「一気通貫製品開発法」では製品の構想段階から関係部門が意見交換をします。製品計画段階で仕様を含む事業計画を決定することにより開発・評価段階での手戻りの発生を抑えるようにします。

■  コンセプト2 コンカレントエンジニアリング - 全社一丸

お客様の声がそのまま設計等の関係部門にスムーズ伝わらないことが多くの会社で起こっています。たとえば、営業部門と設計製造部門の意思疎通に問題があり、あやふやな製品仕様が残り、開発後半での手戻りの発生を起こすことがあります。

「一気通貫製品開発法」では部門横断的な会議体をつくります。営業、設計、その他の部門から参加したメンバーがお客様の要求を達成するためにはどうしたらよいか一緒に検討します。

中小企業では意識しなくてもこのような会議体ができそうですが、意外にできていないところが多いのです。営業と製造が犬猿の仲でコミュニケーションが希薄になっている会社を見かけませんか。

■  コンセプト3 チェックポイントプロセス - ストップ先送り –

プロジェクトでは99%想定外のことが起こってきます。その時に「皆で渡れば怖くない」という形で、問題に対峙せず先送りしていて、後日取り返しがつかない事態になったことはありませんか。

「一気通貫製品開発法」では先送りをしないように、段階を変わる際に関所(チェックポイント)を設け、部門管理職による監査を実施します。この監査で問題にしっかり対応し、リスク管理をすることにより突然大きな問題に直面することを抑えるようにします。

■ マネジメント1 - スケジュールマネジメント

期限の間際になって突然問題が顕在化することを経験していませんか。

スケジュールマネジメントでもっとも大切なことは、タスクの開始日、終了日、タスク間の依存関係を明確に記したスケジュールを作成し、そのスケジュールに基づいてプロジェクトを管理運営することです。

あたりまえのことですが、確実にこのスケジュールマネジメントを実践できる企業は少ないように思います。

■ マネジメント2 - リスクマネジメント

リスクマネジメントがよく分からないという声をよく聞きます。

リスクとは、コントロールが困難なプロジェクトにとってマイナスの不確実性です。最近のプロジェクトでは情報が十分あつまらない状況でも先に進まざるを得ないことがあります。事前にリスクを洗い出し、そのリスクが起こっても想定の範囲内に納める活動をするというのがリスクマネジメントです。

プロジェクトを開始するにあたりだれでも不安なことがいくつか持っているはずです。「なんとかなるよ。その場になって考えればいいや」と考えていては、リスク処理が後手に回り、QCD達成の可能性が減ってしまいます。その不安を見える化し、そのリスクを低減するために事前に行動を起こす仕組みを「一気通貫製品開発法」では取り入れています。

 

「一気通貫製品開発法」の3つのコンセプトと2つのマネジメントを的確に行えば、QCDで大きな問題に直面する頻度は減ります。ただし頭で理解していてもなかなか実行できない面があります。儲かるものづくり「一気通貫製品開発法」の実践をお勧めします。

関連記事

Change Language

会員専用ページ

ページ上部へ戻る