環境変化に左右されない確固たる経営基盤を構築しよう!

代表幹事 山﨑康之

かわさき中小企業診断士クラブは2002年2月に発足して、今年は16年目を迎えております。現在、75名の会員が在籍し、川崎市内の中小企業を中心に経営支援活動に取り組んでおります。

昨年の定期総会おいて、「平成28年度事業計画案」の中で当クラブ活動範囲の拡大(ビジネス機会の獲得)を図る上で限界があることから、現在の任意団体からの法人化に関して幹事会メンバーで検討していくことを伝えていました。現在、法人化の必要性や今後の具体的な事業展開のあり方等について議論を重ねております。今年度は新たに「法人化設立委員会(仮称)」を設置して、本格的に法人化の実現に向けて取り組んで行くことを3月の定例幹事会で確認しました。本年度中の実現を目指し取り組んで参りますので、会員の皆様方のご理解とご協力を戴きますようお願いします。

それでは本題に入ります。世界経済を牽引している米国はじめ主要国において、政策変更や保護貿易主義への転換等我々を取り巻く環境に変化が出始めており、これからどのように変わっていくのか先行きが不透明な状況になっております。企業にとっても環境が変われば何らかの影響が出てくることが予想されます。企業も変化に対する備えが必要です。今回は、どんなに環境が変わろうと、環境変化に左右されない確固たる経営基盤づくりについて一緒に考えてみたいと思います。

新たな環境変化の始まり

昨年6月に英国が欧州連合(EU)から離脱することを国民投票で決定し、11月には米国において大統領選挙が行われ、ドナルド・トランプ氏が大統領選に勝利、今年1月20日正式に第45代米国大統領に就任しました。選挙戦中から「米国第一主義」を掲げ、オバマ前大統領が進めてきた政策を覆す発言を繰り返し、就任後早速、通商政策や移民政策に関する大統領令に署名し、有言実行を進めています。

今回の大統領令の中で、日本が関係するものとして、2015年10月に米国など12か国が合意した環太平洋自由貿易協定(TPP)からの離脱、自動車メーカーが進出先のメキシコやカナダで生産した車を米国に輸出するにあたって関税面での恩恵を被っていた北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉(離脱を視野)など、これまで貿易の自由化を進めグローバリゼーションの牽引役を果たしてきた米国が保護主義を主張し、外部からの介入に規制を掛けるなどの行動をとり始めました。

現在の米国は景気が上向いている状況下で、トランプ大統領が保護主義を徹底して実行に移しており、米国内の企業や国民にとっては大変ありがたいことと受け止められているのではと感じています。

また、今年はユーロ圏で、オランダの総選挙、フランスの大統領選挙・総選挙やドイツの総選挙などが予定されていて、EUからの離脱や反自由貿易主義を推薦する極右政党が政権獲得を狙っており、政権や政党交代が起これば、米国だけでなく、今後世界経済がどのような方向に向かって行くのか不透明感がますます強まっていく可能性があります。

世界の景気動向と懸念

世界を見渡しますと、中国や新興国などの経済の減速が続いている中で、米国は2009年以降景気回復が始まり、現在景気安定期が続いており、今後も緩やかな景気の拡大が見込まれています。また、ユーロ圏の景気も英国の景気減速が懸念されているものの、米国同様緩やかな景気拡大が続くと予想されています。

日本においても景気は緩やかに持ち直してきておりますが、これは外需主導によるもので内需の伸びは横ばいの状況にあり、輸出依存体質にあることは否めません。今日の日本経済の成長を高めている要因として、円安・ドル高の進行によって、企業収益の拡大、株価の上昇に繋がっていることが挙げられます。今後も引き続き景気は緩やかな回復傾向が続くことが予想されています。

一方、長期的には米国の景気は保護主義的な政策によって、通商政策の内向き化が強まり、ドル安・株安が懸念され、世界経済が減速する可能性を秘めており、トランプ政権の後半までに後退局面に転換する可能性が高いと予測されています。

その理由として、米国第一主義掲げ保護主義を貫こうとしているが、米国の製造業で失われた雇用の88%は自動化とその関連要因によるもので、貿易によるものではないということ、これからは自動化と人工知能(AI)の普及がますます加速し、これまで以上に雇用が失われるのは避けられないとの見解が出されています。

 環境変化をチャンスと捉える

環境の変化は企業の経営活動に直接的に、或いは間接的に何らかの影響を及ぼします。企業は環境から影響を受けて、或いは環境に働きかけて、適合関係を図りながら経営活動を行っています。

企業の意図に関係なく環境は変化します。環境変化に一喜一憂してはいけません。企業が継続的に成長し発展していくためには、常日頃から環境変化に柔軟に対応できる仕組みづくりに取り組んでおく必要があります。環境変化を先取りする形で、自ら企業行動を変えていかなければなりません。つまり、如何に戦略的革新によって環境に適応することができるかがポイントです。

今回の米国のトランプ政権が取り組んでいる保護主義政策をビジネスチャンスと捉え、しっかりとグローバル市場での競争優位の確保に取り組んでおくことが重要です。

 強固な経営基盤づくりにおける競争優位確保の源泉

企業経営において自社の強みを活かして事業展開を行うことは当然のことです。しかし、強みを活かすだけでは、限界があります。自社の弱みを強みに変えていく必要があります。

環境変化に左右されない強固な経営基盤をつくるには、自社の強み・弱みをしっかりと捉えることは勿論、次に挙げる「12の競争優位確保の源泉」について現在の自社の立ち位置をしっかりと把握し、競合と比較分析してグローバルレベルの競争優位を確保していくことが不可欠です。

①「技術力」コアコンピタンス(他社にまねされない独自技術)や他社との差別化、②「品質力」製品やサービスを提供する上での基本となる顧客・市場クレームや不良率(手直し前)、③「開発力」企業を発展させるうえでの状来の飯のタネ(新商品開発)、④「コスト力」生き残るための最低条件として利益への貢献度、⑤「購買力」良いものを安く調達するための理論武装(交渉ネタ)、⑥「営業(販売)力」商売の原点である顧客満足の提供と優良顧客の獲得、⑦「人財力」企業は人なり/従業員が自分の働いている会社を自慢できる人材の育成、⑧「財務力」利益を軸とした経営の実践、⑨「経営力」社長の能力/会社の全てを知り尽くしている、⑩「スピード力」いかに早くものにするか/顧客に提供・提案するか、⑪「実行力」すぐ行動する、⑫「現場力」組織能力/あたり前のことを全員が最後までやり抜く力

等についてそれぞれ競争優位性が十分整っているかをチェックして、不十分なところがあれば対応策を整理して、経営計画や具体的行動計画に落し込んで、日々の業務を通して徹底的に競争優位性を確立すべく取り組んで行くことが重要です。

徹底してPDCAサイクルを廻す

日本企業の99%が中小企業・ベンチャー企業です。これらの企業の成長発展なしには日本経済あるいは世界経済を牽引している大企業の存在はないといっても過言ではありません。

これまで多くの中小企業の経営支援に携わってきました。大半の中小企業においては、売上目標などの数値目標は設定されていますが、その目標を達成するための具体策である経営戦略や経営計画等を策定されてないところが多く存在しています。ましてや、経営計画における重点施策を、更に具体的な部門行動計画レベルまで落とし込まれているところは皆無に等しい状況です。

どのような環境下にあっても、企業は存続し続け社会に貢献して行かなければなりません。

環境変化に左右されない経営基盤をつくるには、利益を軸に企業経営を考えることが重要です。つまり、掲げた経営ビジョンの実現に向けた売上目標や利益目標をベースに経営戦略の策定、中長期経営計画及び部門別行動計画を策定し、全員参加の目標達成活動(PDCAサイクルを廻す)を実践することが重要です。

特に、部門別行動計画策定に当たっては各部門がやるべきことを部分最適ではなくあくまでも全体最適で考える ことが重要です。

今一度、自社の競争優位確保の源泉をレベルチェックして、環境変化に左右されない経営基盤づくりに挑戦しましょう。

関連記事

Change Language

会員専用ページ

ページ上部へ戻る