日産リコール問題から、企業の事後対応のあり方を考える

中小企業診断士 金澤良晃

今年9月に日産エクストレイルを購入する

いきなり私事ですが、今年9月23日に主に自家用として日産エクストレイルを購入(注文)しました。平成28年製造の中古車ですが、今年の7月までディーラーの展示車として使われていたため、内装・外装ともに大変綺麗な状態でした。前モデルの型落ちで走行距離は約700kmと少なく、新車で買うよりも100万円近く安く購入でき大変良い買い物ができたと感じています。

納車日は9月30日であったため、納車までの1週間は、毎日パンフレットやインターネットで関連情報を見ながら楽しみにしていました。

 

日産の最終検査工程の不正問題が発覚する

そして納車前日の9月29日、あのニュースが報道されました。ご存知の通り、日産自動車の最終検査工程において、無資格の作業員が検査を行っていたというニュースです。翌日、中古車店の営業担当者に確認した所、「お客様の車がリコール対象かどうかは、今はまだ分かりません。今回の整備は、問題なく行えていますので納車は問題ありません。万一リコール対象となった場合の対応についてはまだ決まっていませんが、決まり次第直ぐにご連絡します。」との回答でした。

納車が無事に終わり、10月に入ってしばらくしてから、日産自動車の公式HPで確認したところ、私の車がリコール対象であることが分かりました。しかし10月19日現在、日産自動車や中古車販売店からは何の連絡も来ていません。それどころか、9月に国土交通省の立入検査で問題が発覚した後も、一部の工場で無資格者による検査が続けられていた事実も発表されました。西川広人社長は、「対策を信用してもらい、買ってもらった顧客を裏切ってしまった」と述べましたが、正にその通りで、残念で仕方ありません。

幸い今の所、私の車は特に問題もなく快適に運転できているので、私の方から今すぐに問合せやクレームを言う考えはありません。しかし、中小企業を含めた全ての企業が、こうした「不祥事等への対応」について考慮しておくべきだと思い、本トピックスのテーマとして選定しました。

 

中小企業の不祥事等リスクに対する認識について

今回の日産自動車の不祥事に続いて間もなく、神戸製鋼所のデータ改ざん問題も明らかになり世間を騒がせています。日本国民として、これらのニュースを見てがっかりした方は多いのではないでしょうか。私もその一人です。このような大企業の不祥事は、全世界で数えきれないほどの利害関係者が絡んでいるため、社会的影響は甚大です。

こうしたニュースにがっかりする一方で、決められたルールや手順に従って日々の業務を行っている日本企業は圧倒的に多いと強く信じたい気持ちがあります。なぜなら現在の「ものづくり大国ニッポン」あるいは「おもてなしの国ニッポン」といったグローバルブランドを作り上げられたのは、真摯な経営姿勢を持つ企業が多いためだと考えられるからです。

私は中小企業診断士として、様々な業種・業態の中小企業を訪問し、リスク管理についての認識を尋ねる機会があります。しかし、そこでよく経営者から聞かれるのは、「うちの会社は真面目にやっているので不祥事は起こらない」、「万一何かあっても、うちは規模が小さいから大きな問題にはならない」、「どう対策を取ったら良いかわからない」といった答えです。中小企業のリスク管理意識は、それほど高くないというのが私の実感です。

 

リスクを抑える対策と、リスク発生時の対策

企業におけるリスクは、日産や神戸製鋼所のような不祥事だけに留まりません。災害などの緊急事態、あるいは事故もリスクに含まれます。これらのリスクは「起こさない」ことが最善のため、発生させないための対策の方に目が行きがちです。

しかし経営者は、それと同時に「リスクが発生してしまった場合の対応方法」についても、定期的に検討しておく必要があります。なぜならリスク発生時の対応方法の如何によって、その後の社会的責任の問われ方や、企業イメージへの影響度が大きく変わってくるからです。下手をすると、会社を畳むことになりかねません。コンプライアンスは、規模を問わず全ての企業に関わることであるため「中小企業だから関係ない」といった理屈は通りません。

 

リスク発生時の対応には、内向きと外向きを意識した手順がある

さて「リスクが発生してしまった場合の対応方法」について、全てのケースを個別具体的に検討するというよりも、大きな流れを検討し準備しておくことが大切です。なぜなら、どんなリスクが、いつ、どのように発生するかは誰も予想できないこともあり多種多様だからです。

大きな対応方法の流れでは、内向きの対応と、外向きの対応の2種類で考えます。そして、それらをバランスよく適切に行っていくことが経営者に求められます。もう少し具体的にいえば、以下のような手順になります。

  1. 不祥事・緊急事態・事故などの発生状況を把握する。【内向き】
  2. 全ての利害関係者に対して、状況報告と今後の対応方法を公表し謝罪する。【外向き】
  3. 真の原因を究明し、組織的な再発防止策を練る。【内向き】
  4. 全ての利害関係者に対して、改めて謝罪し、原因調査の報告と、再発防止策に関する詳しい手順を説明する。【外向き】
  5. 再発防止策の実行結果を定期的に公表し、施策の有効性を検証して改善していく。【内向き】

 

事後対応の手順における3つのポイント

上記の手順は、特に奇をてらったものではないため、「常識的で当たり前だ」と感じた方は多いのではないでしょうか。確かにその通り、特に何のひねりもないありふれた手順です。しかし、事前に何の対策も準備していなければ、有事の際には人はパニックになり、こうした手順を忘れてしまいます。平時の時に、これらの手順をシミュレーションしておき、いざという時に引き出せる状態にしておくことが大切です。

なおこの手順には、幾つかのポイントがあります。特に大切なポイントを3つ述べます。

1つ目は、内 → 外 → 内 → 外 → 内 と、対応の種類を交互に繰り返していることです。もし内 → 内 → 内 → ・・・と内向きの対応ばかりを繰り返していると、世間からは「隠蔽しようとしているのではないか」といった疑念を抱かれてしまいます。

2つ目は、経営者が全ての責任を負い、自らが陣頭指揮を取って対応を進め、謝罪すべき点はしっかりと謝罪することです。時折、謝罪や会見の場に、社長が出席しないケースや、あるいは言い訳や「問題ない」を繰り返すケースを見かけますが、経営者の責任逃れの印象が強くなり逆効果です。

3つ目は、上記のすべての手順を「速やか、かつ丁寧に」行うということです。対応が遅れれば遅れるほど、利害関係者の不信感は急激に増幅します。丁寧さがなければ、ずさんだという評価が下ります。その後、慌てて丁寧に対応したとしても、大きくなった不信感を払しょくするには相当な努力と期間が必要になります。

 

有事を乗り越えれば、大きく成長できる

企業にとって、不祥事などが全く起こらないことが最善です。しかし、そのリスクを0に抑えることは不可能です。もしもに備えて、上記手順を参考にご自身の企業に適した対応策を具体的に検討しておくことをお勧めします。

しっかりとした対応をすることで、有事を乗り越えられれば、顧客をはじめ多くの利害関係者の信頼を回復させることができます。場合によっては、以前よりその企業のことが好きになってもらえるケースもあります。

私にとって、日産がそのような企業になってもらえるよう心から期待しています。

 

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