公的補助金獲得の本当の意義とは

中小企業診断士 松井 利夫

技術系公的補助金等の公募の始まり

米国のSBIR(Small Business Innovation Research)制度を参考に平成10年に制定された「新事業創出促進法」を根拠法とする「中小企業技術革新制度」(日本版SBIR)が創設されたことが契機となって翌年の平成11年から我が国でも中小企業のための技術系公的補助金等の公募が本格的に始まりました。

本制度は、中小企業庁が所管していますが、所管機関(国の行政機関及び独立行政法人)が実施している補助事業を日本版SBIR制度の特定補助金等と指定する横断的な制度であり、平成28年4月現在、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省及び環境省の7省が参加しています。国等の指定する特定の研究開発補助金等を受けた中小企業者等は、①特許料等の軽減、②中小企業信用保険法の特例、③日本政策金融公庫の特別貸付制度 等の支援を受けることができます。

公的補助金の最近の傾向

平成11年に始まったSBIR制度による公的補助金の補助事業数は30種類ありましたが、平成28年度は99種類に拡大しています。これらの特定補助金は、いずれも採択件数が少なく中小企業や小規模企業にとって大変獲得が難しく申請しようという意欲を失わせる傾向があります。

しかし、全国385万の中小企業、中でもその9割を占める小規模事業者は、地域の経済や雇用を支える重要な存在であり、経済の好循環を全国津々浦々まで届けていくためには、その活力を最大限に発揮させることが必要不可欠であることから、平成26年6月に「小規模企業振興法」が成立し公布されました。この年の2月には、この法律の趣旨を先取りした形で中小企業・小規模事業者のための「ものづくり・商業・サービス革新事業補助金」の1次公募が始まり、初めて、「小規模事業型」という事業類型が設定されました。一般型や成長分野型では、今まで認められたことのない機械装置費が補助対象経費として認められました。更に、2次公募も行われましたが、合計で応募件数23,971件、採択件数10,519件、採択率43.8%という驚異的な結果になりました。この年以来、補助金の名称こそ変わりましたが、現在もなお、中小企業・小規模事業者が取り組みやすい「ものづくり補助金」の公募が続いています。

公的補助金獲得の本当の意義

実際に補助金申請書を書く段階になると、我が社の技術開発戦略や経営戦略などを検討することになり、改めて自社の経営内容を振り返る機会となります。採択された場合は、単に、開発資金が得られたという効果だけでなく、会社はもとより開発担当者の大きな自信になると同時に、補助金申請書を書くことは、会社の経営理念に遡って抜本的に企業経営を見直す絶好の機会になったということです。公的補助金獲得の本当の意義はここにあります。

資金調達の面から見ると、もし仮に、500万円の補助金を交付された場合、これを純利益として見れば、売上高の5%の利益率で逆算すると1億円を売らなければならないことになります。ものが売れない低成長時代においては、今より1億円多く売上を増やすことはとても無理なことです。ですから、申請書作成に多少の費用と時間を掛けてもそれだけの価値があることになります。

経営者の中には、過去に補助金申請を行ったが手続きが煩雑で採択率が低いことから「もう二度と補助金申請をしたくない」と言われる方がおられます。しかし、最近の「ものづくり補助金」は、手続きも簡素化され、採択率も飛躍的に良くなっていることと、公的補助金獲得の本当の意義をもう一度思い起こして是非挑戦して頂きたいと思います。

なお、来る2月21日(水)18:30より、川崎市産業振興会館において「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助の申請と獲得の秘訣」というテーマでセミナーを行います。補助金申請の計画を検討中の方はこの案内もご覧もご覧いただきたいと思います。

 

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