売上を創る購買行動を生み出す第1歩 ~商品が持っている価値を伝えること~

井手上 悟

消費社会の変貌

モノがあれば売れていた時代、それは消費者ニーズが明確でモノを生産する企業も、そのニーズに対応して開発を行っていけば売れていた時代でした。最近は、消費者自身何がほしいのか明確になっていない時代となり、モノは「大体良いんじゃない」と一定の品質は保てており何を選んでも早々外れないモノが買えるが、どうしてもコレがほしいとまではいかない時代となっている中で、企業は商品価値の向上を目指し様々な機能を盛り込んだ製品開発でパフォーマンスが上がったので売れると思いきや売れていない実態があります。

これは、“商品価値=パフォーマンス÷コスト“の中でパフォーマンスを上げれば商品価値が向上し、消費者も価値を感じてくれ購入してくれるとの考えから来ているものです。消費者の求める価値とはいったい何なのでしょうか?「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰している小阪裕司氏によると、現代の消費者が喜んでお金を支払う「価値」とは「心の豊かさ」と「毎日の精神的充足感」であるといわれています。

自分の意識に基づいて行動しているのは氷山の一角

従来の経済学では「経済人」という概念があり、人は経済的合理性のみに基づいて個人主義的に行動すると想定していた人間像のことですが、行動経済学では、人間は必ずしも常に合理的な行動をするとは限らない、消費者は自分の行動を正しく説明できないといわれています。脳科学の知見として人間の思考や行動は、5%の意識と95%の無意識とでなり立っており、意識の水面下にある95%の無意識も様々な意思決定にかかわっているという定説があります。

売上は人の行動で決まります

売上=販売数×単価
=購入数×購入単価

どんな規模の企業であっても、消費者が買ってくれるという行動をとってくれなければ売り上げが上がることはありません。すなわち一人の消費者の行動が積み重なって売上が生じているのです。

消費者が行動するにはどのようなことが必要になると思われますか?

人が行動するには動機が必要、動機は情報によって喚起される

消費者が買うという行動につながる価値認識のメカニズムは、『感性情報が刺激となり感性による情報処理を経て売上が生まれるプロセスとは、外部からの五感を通じて脳に入力された感性情報が購買動機を喚起し、次のステップとして意思決定過程につながり、決定された後の購買行動が売り上げを生み出す』(価値創造の思考法 小阪裕司P82-P83)とされています。ここで重要なのは感性情報のデザイン次第で消費者の購買行動に影響を与えられるということです。著者が行っている商店街ウォッチングでも人気店舗は、店頭のPOPや、焼き立てパンの香り等に誘われて思わずお店の中へと引き込まれることが良くあります。これは著者の感性を刺激し思わず入店し、どんな商品があるのかを確かめ、そこで展示された商品の持っている価値を感じる工夫がされているといつの間にか購入していることがままあります。人間の行動には小阪氏が言われることが、意識しない中で起きているのでと思います。すなわち、商品が持っている消費者が価値と感じる要素を掘り起こして伝えることで売上につながることになるのです。

商品の持つ価値を掘り起す

商品の持っている価値を引き出すためにはどうすればよいのでしょう。

小阪氏は価値要素探索マップの「四つの質問」を活用することだといいます。

  • 『どうして私が今、あなたから、この商品を買わなきゃいけないの?』(前掲書P101)
  • 『その商品やサービスが提供できる価値は、どんな「認知的価値」や「情緒的価値」なのか?』(前掲書P110)
  • 『この商品・サービスを利用するお客さんは、どのような「問題」が解決されるのか、どのような「心の充足体験」ができるのか』(前掲書P113)
  • 商品が『どんな思いでつくられているか。どんな歴史が秘められているか。その経緯、苦労談、素材、技術、どんな加工がなされているのか、どんな匠による技なのか、その商品に希少性はあるか、』(前掲書P118)

です。

これらの質問は、直接に消費者を相手にしている小売業や飲食業以外、製造業でも利用できる質問だと思います。自社の設計者が苦労して作り上げた製品の開発経緯や苦労した点を購入者へ伝えることで思いが伝わり、新たな利用方法も発見される可能性があると思います。筆者が電子部品の営業マンであった頃も、製品へ搭載される部品の開発にあたり、お客様の開発担当者へ使用する部品への要望点を確認し、完成した試作品を提案する際に、開発の意図を伝えることで、結果的に思いもしなかった利用方法で製品設計へ採用された経験があります。

小売業や飲食業では商品を説明するPOP、DM等に生産者の思いや、おいしく食べる一手間が書いてあると、消費者も実際試してみようかと興味を惹かれ購買行動につながることができます。自店舗の商品説明にはプライスカードだけではありませんか?または、企業から提供されたポップだけではありませんか?是非、店主自らの五感を使って、商品の持っている価値を探し出し、お客様へ伝えることを実行していただきたいと思います。

色々と試し、PDCAを回しながら、どうすれば消費者が購買行動を起こすかを考え、本日より実践してみましょう。

 

 

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