労働生産性の算式に注意!

小林 巽

1. 国を挙げての労働生産性向上運動を展開

政府は、昨年12月に「新しい経済政策パッケージ」をとりまとめました。この中で、2020年までを「生産性革命・集中投資期間」として、あらゆる政策を総動員し、運動を推進することになりました。
主な施策は、以下の通りです。

1)2018年6月6日「生産性向上特別措置法」の施行

  • プロジェクト型「規制のサンドボックス」制度の創設
  • データの共有・連携の為のIoT投資の減税等
  • 中小企業の生産性向上の為の設備投資の促進

2)ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金の補助率UP要素

  • 3~5年で、労働生産性を年率3%向上、加えて「付加価値額」年率3%増加・「経常利益」年率1%を向上する中小企業等経営強化法に基づく経営革新計画を作成し、2017年12月22日の閣議決定後に新たに申請し承認を受ければ、補助率は2/3以内(通常1/2以内)となります(2017年度補正:一般型)。
  • 生産性向上に資する専門家の活用をする場合は、補助上限額に30万円の増額が可能となります(2017年度補正)。

3)雇用関係助成金の上乗せ増額要素

・厚労省の雇用関係助成金の体系が2017年4月に大幅に見直されました。いくつかの助成金が統廃合されたほか、メニュー全体が整理されて項目数が減りました。

  • また、「生産性要件」の適用拡大が進められ、生産性を促進するメリットを強調しております。生産性測定の様式も新設されました。
  • 「生産性要件」が多く見られる項目
    ・労働力の移動(再就職)、・高年齢者の雇用、・仕事と家庭の両立、・人材確保・人材育成・職業能力の開発、・キャリアアップ。

参照:新しい経済政策パッケージ http://www5.cao.go.jp/keizai1/package/20171208_package.pdf

2. 現状の労働生産性向上運動の特徴

  1. 背景には、少子高齢化に伴う人手不足への危機感があります。たまたまですが、約60年前の小生の卒論テーマが労働生産性で、まだ国を挙げて取り組むより民間主導型にて企業収益の改善策として取り上げられたと記憶しております。従って、生産性向上運動の狙いは、結果的には企業収益の改善となりましょうが、直接的には異なっていると思います。
  2. 今回は、国がリーダーシップを取って生産性向上の環境整備を進めておりそれなりの効果が期待されますが、縦割り行政の弊害も見られ、その一つが、労働生産性の算式であると考えます。

3. 労働生産性の算式には色々あります

1)ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金(一般型)の場合(経産省)

労働生産性=付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)÷従業員数

2)雇用関係助成金の場合(厚労省)

労働生産性=付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費+地代家賃・賃借料+租税課金)÷雇用保険被保険者数(人)

(注)人件費=役員報酬・役員賞与+給料手当+賞与+通勤費+法定福利費+福利厚生費

3)製造業に係る経営力向上に関する指針(2016年7月1日)

財務・厚労・農水・経産・国土各大臣連名の発令

労働生産性=付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)÷労働投入量(労働者数又は労働者数に一人当たり年間就業時間を乗じたもの)

4)卸売・小売業に係る経営力向上に関する指針(2016年7月1日)

財務・厚労・農水・経産・環境各大臣連名の発令

労働生産性=付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)÷労働投入量(労働者数又は労働者数に一人当たり年間就業時間を乗じたもの)

5)ローカルベンチマーク(通称:ロカベン)の場合(経産省)

「中小企業等経営強化法」(2016年7月1日施行)は、認定経営革新等支援機関が経営力向上のための事業計画に取組み支援することを促しております。

そのため、認定革新等支援機関は中小企業等と財務・非財務情報の基本事項について認識の共有を進めますが、具体的には、ローカルベンチマークの活用を想定しています。ただし、労働生産性の算式は経営力向上計画とローカルベンチマークとでは異なっておりますので、ご注意ください。ローカルベンチマークは6個の経営指標からなり、労働生産性はその内の一つです。

  労働生産性=営業利益÷従業員数

6)従業員数の把握方法にも色々あります

  • 働き方改革で長期休暇もあり得ますので、従業員数を在籍人員と考えるのか、稼動在籍人員と考えるのか。
  • 月末または期末の従業員数をそのまま採用するのか、それとも月初・月末または期首・期末の従業員数をプラスして1/2とする平均値を採用するのか。
  • パートタイマーやアルバイトは時間換算して実質人員として把握するのか、それとも単純に頭数(あたまかず)をもって人員把握とするのが良いのか。
  • 経営者も含めた従事者総数とする考え方もあります。とかく経営者の労働生産性の低さが問題になることもあり、経営者自身が多くの時間を直接作業に費やしている場合もある所からこのような発想がありうると思います。

4. 結論

  1. 労働生産性の測定は、重要な経営指標として、継続して実施することが肝要であります。
  2. しかし、測定の算式には色々な考え方があり、どの算式を採用するかは、経営方針及び作業性・継続性等を考慮して選択せざるを得ないと思いますので、経営者を含めた関係者がよく検討して採択することが大切であります。

以上

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