外国人労働者との共生社会実現の仕組み作りを!

山内 喜彦

政府が外国人労働者の受け入れ拡大に動き始めた。建設、農業、介護等人手不足が深刻な業種への単純労働の就労を認める通算5年を上限とする新たな在留資格を設け、来年4月から受け入れを始めるという。働く外国人労働者は増え続け、昨年10月末の総数は約128万人と言われ、5年間でほぼ倍増した。

これまでの日本の外国人労働者の受け入れは、高度な専門知識を持つ高度人材に限定しており、いわゆる単純労働については認めていない。高度人材に対しては年収や学歴、職務経験、日本語能力などをポイント化し、高得点の人には最短1年で永住や家族を連れてくることを認めるなどの優遇を行っている。

ただこうした政策は建前の面があり、本音の部分は違っている。その典型が平成5年から始まった技能実習制度と言える。途上国の外国人を一定期間に限り受け入れ、職場内訓練(OJT)で技能を移転する仕組みで、現在77職種を対象に約27万人が単純労働に従事している。技能実習制度に対しては、賃金の未払いや劣悪な労働環境、人権侵害といった問題も多く、国際的な批判も出ている。当初の国際貢献という建前と、人手不足に悩む分野の人手確保という本音の開きが大きくなっているのも事実である。

6月5日の経済財政諮問会議で、安倍首相は外国人労働者の受け入れ拡大を表明した。人手不足が深刻な業種を対象に新たな在留資格を創設し、平成37年(その時の元号は?)までに単純労働を含む50万人超の受け入れを目指している。

人口減少が進む中、中長期的に外国人労働者の受け入れは必要だ。ただ、農業や建築などの人手不足に悩む特定業界のために、従来の技能実習の延長のような形で外国人を受け入れるのは、過去の失敗を再び繰り返えす最悪の受け入れ方だと考える。

平成2年に、日系2世と3世およびその家族に就労を認め、主に中南米から30万人以上の労働者が流入した。当時来日した外国人に対しては、日本語能力による選別がなかったため、日本語が全く話せないものも多く、子弟への日本語教育も十分には行われなかった。こうした労働者の日本での生活が長くなり、同伴した子供や日本で生まれた子が日本の小中学校に入学するようになると、子弟の不就学率の上昇と不良化が社会問題になるようになった。

明確な枠組みとルールを作らずに、なし崩し的に外国人の受け入れを拡大すると、戦後の成長期に受け入れた移民の生活保護受給率や犯罪率の高さが問題となっているドイツなどの二の舞にもなりかねないと危惧される。

外国人労働者を使い捨てにできる「労働力」とみなすだけでは将来に禍根を残す。今回の新制度の対象になるのは比較的低賃金の職種。こうした職種で外国人を受け入れると、産業構造の高度化が妨げられ、同じ職場で働く日本人の賃金も抑え込まれて低賃金の固定化・所得格差を招きかねない。

外国人が日本を選んでくれる魅力的な国であるかどうかも課題だ。中国やタイでも少子高齢化や労働力不足が進んでおり、外国人労働者の取り合いになっている。「10年たったら帰国してくれ」と言わんばかりの都合の良い仕組みの国に、働きに来るメリットは見出しにくい。

日本は情報通信分野、学術研究・専門技術サービスや金融・保険などの高度人材の活用では外国に比べ劣っている。高度人材が日本で働くことに魅力を感じるようなビジネス環境、生活環境の整備も行っていかねばならない。

ここ数年で、誰もが目にする変化は、身近に外国人が増えたことだ。インバウンドの急増だけではない。私たちが身近に感じることができるのは、建築現場での作業員、コンビニや飲食店の店員。もう日本社会は外国人の支えなくしては成り立たない状況になっている。

外国人労働者を社会の構成員として正面から迎え入れる姿勢、外国人の文化や習俗を理解して、働きやすい職場を作ることが我々には求められている。外国人に長く日本に住んでもらうため、彼らとの共生を目指し、日本語教育や子弟の就学、医療面などの支援に力を入れなければならないのではないだろうか。現在の状況を見据えたうえでの共生のための仕組み作りが急がれていると感じている。

以上

 

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