70才までの就業機会確保が企業の努力義務となります

菊地 和志

高年齢者雇用安定法改正案の概要について

政府は5月15日に開いた未来投資会議で、今年の夏にまとめる成長戦略の骨格を示し、高年齢者雇用安定法の改正案を示しました。少子化により生産年齢人口が減少していくことを踏まえ、希望する高齢者が70才まで働けるようにするために高年齢者雇用安定法を改正し、70才までの就業のほかに、兼業・副業のしやすい環境整備や地方の活性化に重点を置き、従来の雇用慣行で非効率になっている社会構造を見直し、生産性の向上を急ごうという内容です。

現行の高年齢者雇用安定法は、希望する人全員を65才まで雇用するよう企業に義務付ける法律で、企業に①定年延長、②定年廃止、③契約社員や嘱託などによる再雇用のいずれかを求めるものです。18年の厚生労働省調査によると、企業の対応策として最も多いのは「継続雇用制度の導入」で全体の約8割を占めており、次いで「定年年齢の引き上げ」、「定年制の廃止」となっています。

改正案では70才まで働けるようにするために企業の選択肢として以下の7項目を挙げ、現行法の企業内での定年引上げや再雇用だけでなく、他企業への再就職の実現や起業支援も促しており、企業は努力義務として取り組まなければならなくなります。

【65才以上の希望者に対する対応(法改正後)】

同じ企業内で雇用を継続 ①定年延長
②定年廃止
③契約社員等での再雇用
社外での就労機会確保支援 ④他企業への再就職支援
⑤フリーランスで働くための資金提供
⑥起業支援
⑦NPO活動等への資金提供

 

65才までの高齢者活用が第一ステップ

企業においては、一律に70才までの雇用を義務付けられると負担増になるという懸念があります。政府が努力義務にしたのは、その点に配慮したためだと考えられますが、過去の高年齢者雇用安定法改正の流れを見ると、将来的に義務化される可能性が大きいと考えられます。将来的に義務化の方向であるならば、高齢者活用法改正への対応や人手不足対応として消極的に捉えるのではなく、経営戦略実行の戦力として積極的に取り組む方が得策ではないでしょうか。

高齢社員を戦力化するには、仕事、賃金、能力・意欲の3つの対策が必要だと考えます。

まず、「仕事」の対策としては、高齢社員が長年の経験で蓄積・高度化した専門能力や技能、勤勉な仕事生活習慣、現役世代に比べ相対的に生計費が軽いことによる弾力的な賃金設定が可能なことや、定時・定日勤務にこだわらないといった変動性というような強みを活かし職場業績に貢献できる仕事につけることが求められます。

次に、仕事内容に応じた「賃金」を設定します。仕事に見合った賃金が仕事意欲の低下を招かないようにするために必要な対策としては、賃金決定の仕組みを明確にして理解・納得を得ることが必要となります。

そして最後に採算のとれる仕事と賃金のもとで、「能力・意欲」を喚起する必要があります。高齢社員のやる気を起こす対策は、①目標設定、②仕事能力のブラッシュアップ、③身体機能・職場改善、④役立ち促進のマネジメント、⑤コミュニケーション、⑥チーム行動といった施策を講じるのが効果的です。

 

70才までの就業機会確保に向けて

法改正骨子では、70才までの就業機会確保措置は、65才までとは異なり、それぞれの高齢者の特性に応じた活躍のため、とりうる選択肢を広げる必要があり、法制度上も多様な選択肢を許容することとしています。企業としてどのような選択肢を用意できるのか労使で話し合う仕組み、個人ごとにどの選択肢を適用するかを相談し、選択できるような仕組みづくりが求められるようになります。

高齢者の活躍を促進する環境整備の取組として労働市場・企業・労働者本人・地域それぞれに対して多面的な施策を国として検討しています。

労働市場の整備としては①ハローワークでの相談窓口設置、②キャリア人材バンク(企業とのマッチング機能)強化等により高齢者と企業双方のニーズに応じた再就職の促進といった施策が予定されています。

企業への支援策としては、①70才までの就業機会確保措置を実施する企業への支援、②高齢者に対する能力・成果を重視する評価・報酬体系の構築支援、③高年齢労働者の労働災害リスク要因に対応する職場環境整備の推進等が予定されています。

労働者本人への支援としては、①キャリアプランの再設計や企業内のキャリアコンサルティング導入支援のための拠点整備、②中高年齢層向けの訓練やリカレント教育推進によって高齢期も見据えたキャリア形成を支援する施策を予定しています。

 

高齢社員の戦力化が重要テーマに

安倍総理の施政方針演説では「人生百年時代の到来を大きなチャンスとして、元気で意欲のある高齢者の方々に、その経験や知恵を社会で発揮していただくことができれば、日本はまだまだ成長できる」と述べられており、日本経済を支える中小企業においても高齢社員の戦力化が重要なテーマとなってまいります。年齢に関わらず元気で意欲を持ち仕事に望める環境整備に積極的に取組んでまいりましょう。

 

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