中小企業者も「事業継続計画」を作成し、自らを守ることに心がけよう!

山内 喜彦

1.被害に遭ってからでは遅い

昨年秋の台風15号、19号では川崎市内でも大きな被害が発生した。中原、高津地区では水害により被災した工場も多く、生産設備が被害を受け、生産活動に影響を及ぼしている。このため、川崎市では、被害を受けた中小企業者が新たな経営計画及び復旧計画を作成し、その計画に沿って事業の再建に取り組む経費の一部を最大6,000万円まで補助することにより、被災地域の復旧および復興の促進を図ることを目的に「被災中小企業復旧支援補助金」を用意し、申請の受付をおこなっている。

この事前相談に対応するための相談員を私も務めた。事前相談の中で強く感じたことは、中小企業者に非常時に自らを守る計画が全くなされていないということである。「まさかこんなことが起きるなどとは想像もしていなかった。」「被害に遭って頭の中が真っ白になり、何をして良いのかも分からなかった。」等のお話を聞かされた。

2.川崎市内の企業はほとんど「事業継続計画」を作成していない

 川崎中小企業診断士会では、これまで10年以上にわたって、川崎市産業振興財団、川崎市経済労働局と協同で、川崎市内の企業訪問を行い、市内事業者が抱える課題に対しての支援を実施してきた。昨年度の訪問では、市内の中小企業者に災害時に事業をどう継続させるのかの意識が薄いようなので、事業継続計画(BCP)に対する取り組み状況についての調査も行った。

残念ながら、私の訪問した企業の中には一社もBCPを作成しているところはなかった。「BCPと言う言葉を初めて聞いた。」、「BCPは何をしていいのか分からない。」、「BCPを作成するのは中小企業では難しすぎる。」、「BCPは金と手間がかかる。」、「BCPは当社にとって重要な課題ではない。」、「親会社(元請)からBCPを作成するようには言われていない。何かあったら助けてくれる。」といった声が聞かされた。

3.「事業継続計画」作成に向けた国の施策

 BCP作成企業の割合は、大企業では70%程度と言われているが、中小企業では15.5%(中小企業庁平成27年12月調査)と低い状況が続いている。BCP作成には法的な義務はないが、中小企業といえども、自然災害や事故、感染症の流行、テロなどのリスクに直面したときに損害を最小限に抑えながら、「事業を守る」手段をあらかじめ決めておくことは必要なことと言える。

 BCPについては、内閣府から平成25年8月に事業継続ガイドラインが示されているが、このガイドラインは難解で使いこなすのが中小企業では困難との指摘もあった。中小企業のBCP作成を一層推進するため、昨年7月に「中小企業強靭化法」が制定された。これは簡易版BCPともいえるが、策定した「事業継続力強化計画」を経済産業大臣が認定する制度を創設した。中小企業が作成した計画の内容が適切であることを国が公的に認める仕組みで、認定を受けることにより、税制面、金融面、補助金等による支援が受けられることにもなった。

事業継続強化計画作成については、中小企業庁から策定の手引きが示されているが、次の項目を織り込んだ計画を作成することを求めている。

(1)自然災害が事業活動に与える影響の認識(被害想定等)
(2)体制の構築
(3)事前対策の内容
   (例)初期対応、設備投資、情報保全、取引先・同業者との連携、人員確保、リスクファイナンス、復旧手順の策定 等
(4)事前対策の実効性の確保に向けた取り組み
   (例)定期的な訓練の内容、見直し方法 等

4.先ずはできることから始め、自らを守ることをしよう

事業継続強化計画作成もすぐには対応できないとお考えの方には、「まずはできることから地道に実践する。」ということを行って戴きたい。

火災に備える消化計画は消防法によって一定の事業者には計画提出が義務付けられている。これに、地震や水害まで含めた防災マニュアルを作成して戴きたい。防災マニュアルは、BCPに含まれる「対象とするリスクの設定」、「継続計画」、「ITの対策」などが含まれていないが簡単に作成できると考えられ、是非ともこれだけは作成してもらいたい。

 BCPの取組を進めていく上では、経営者に供給責任を果たすことが需要な経営課題の一つであることを認識して、リーダーシップを発揮して対策を進めていくことが重要であると考える。

川崎市では、「川崎市内企業・事業所のためのBCP作成のすすめ」のパンフレットを作成し、市内企業にBCP作成を求めている。この冊子では、極めて分かりやすくBCPについて解説している。川崎市のHPから簡単にダウンロードできるので、これを参照して、自分の会社を守るには何が必要かを知って戴きたいと思っている。

以上

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