経営者にとって一番大切なのは、人を大切にすることです

小谷 泰三

新型コロナウイルスによる経営悪化でリストラが始まる!

この記事は、令和2年3月末に執筆しています。東京での新型コロナ感染者が急激に増えている時です。今後、中国からの新型コロナウイルスの感染を初期段階で食い止められなかったことでグローバル不況となり、日本企業も業績悪化や倒産が連鎖的に生じることを危惧しております。

その結果、多くの企業でリストラが行われることが懸念されます。

どうか経営者の方は、従業員を家族や同志であると考え、事業継続に際し、手っ取り早く従業員の解雇から始めないで、他の手段で万策を尽くし、この予期しなかった災害から一刻も早く立ち直ることを願っています。

日本でいちばん大切にしたい会社とは

【50年前に知的障害を持つ二人の少女を、「私たちみんなでカバーしますから」という社員たちのたってのお願いで採用した日本理化学工業。今、この会社の障害者雇用率は社員の七割に及んでいます。会社は、売上げを上げるために存在しているのではありません。本当に人々に必要とされ、社員たちも誇りをもって働くことができる、その結果、みんなが幸福を感じることができる、そんな会社になるために存在しているのです】。

この文は、「日本でいちばん大切にしたい会社」1(2008年発刊)で、いちばん最初に出てくる企業紹介の序文です。上記の会社の理念は、1.愛されること 2.ほめられること 3.人の役に立つこと 4.人に必要とされることの4つを掲げています。

この4つの言葉は、経営者にも従業員にも当てはまるのではないでしょうか。

経営者がこの理念に基づき行動するならば、経営状況が苦しくなっても従業員を安易に解雇できないはずです。どうしても会社を閉じなければならなくなるまで、従業員と共に万難を排し、生き延びるための努力をすべきです。経営状態が悪化すると、金融機関からもリストラを強制してきますので要注意です。

ちなみに、この日本理化学工業は川崎市にある会社です。

「日本でいちばん大切にしたい会社」(現在まで連続シリーズで7巻まで執筆している)の著者で、人を大切にする経営学会会長の坂本光司氏(元法政大学教授)は、“会社経営とは、五人に対する使命と責任を果たし、幸せにするための活動”と述べています。つまり五人とは、①社員とその家族を幸せにする ②外注先・下請企業の社員を幸せにする ③顧客を幸せにする ④地域社会を幸せにし、活性化させる ⑤最後は株主の幸せのことです。

第一回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞 中小企業庁官賞を受賞した会社は、株式会社日本レーザーです。当時、近藤宣之社長のもとで、MEBO(Management Employee Buyout)というユニークな従業員を巻込んだM&Aのやり方で、親会社から株式を買い取り、子会社を親会社から完全独立させました。独立後、従業員を辞めさせず大切に扱い、毎年黒字を維持し続けている会社で、親会社の赤字体質のしわ寄せから脱却できた会社です。一般に子会社は、親会社のクッションとしての立ち位置にあり、経営者は天下りで、従業員の独創的行動は、出世の妨げになりやすく、モラールが上がっていない、やる気をなくした従業員が多いといえます。親離れできない子会社は、親会社の一部門として出戻るか、飛躍の出来ない従属会社として勢いのない会社として生き残ることしかできません。

日本的経営を見直そう

戦後、日本的経営の特徴といわれる雇用制度(終身雇用、年功序列、企業内組合)、家族主義、福利厚生施設や社員研修の充実、ボトムアップや稟議制度による意思決定、下請け制度・企業系列化などにより、日本の産業界は、政・官・財界と護送船団を組んで、”Japan as No.1”とまで称される地位を築いてきました。しかし、グローバル化が進むと共に、米国などからの圧力もあり、先に述べた日本的経営を放棄し、大企業の経営者を中心にアメリカでの企業経営のやり方を採り入れ、株主優先、業績・利益重視の手法を重視し、業績が悪化すると、まずリストラに走る経営者が増え、保養施設や未使用の土地を売却、研究開発費を減らしたりして、短期的に業績回復を狙う企業が増えてきました。

その結果はどうでしょう。トヨタグループ、ホンダ、キャノン、伊那食品工業などのように、従業員にはきびしい行動を強いるものの、従業員を大切にしているこれら企業を除き、多くの日本の大企業は、中国、韓国、台湾などの企業より売上順位や生産性が下がってしまいました。

ひとを大切にしていないと、優秀な人材はスピンオフし、リストラしても一時的には企業業績が上がっても、いずれ低迷化し、業績が伸び悩んでいます。

日本的経営の良さをかなぐり捨て、アメリカ的経営に追随した経営者は猛省すべきでしょう。

昨年は、経団連の会長までが、終身雇用制の見直し発言が出され、さらにリストラに拍車がかかることを懸念しています。企業規模の拡大により業績を伸ばそうと短期的な考えのもと、大勢の社員採用に踏み切り、業績が悪くなると容赦なくリストラする経営者は、人を雇って事業する資格はありません。リストラは、事業継続が立ち行かなくなったときの最後の手段です。

今、元気な会社は、中小企業や中堅企業に多く見られます。これらの会社を調査したり、社長のお話を伺うと、いままでの日本的経営にジョブ型雇用や職務給などを採り入れ、人事評価の仕組みを社員に徹底させるなどブラッシュアップし、時代に沿った形にアレンジして事業を行っています。

ひとを大切にし、家族的雰囲気のもと福利厚生にも気を配り、利益第一主義でなく、社会環境を重んじ、幸福な人生が送れるよう気を配っていることに気づかされます。

世界に模範となる新しい日本的経営で、明日の企業を築いて行こうではありませんか。

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