第三者承継の選択肢:幸せな引退、確実な起業、迅速な新事業展開に向けて!

中小企業診断士・認定事業継承アドバイザー 丹野 幸敏

1.第三者承継をご存じですか?

最近では事業承継をテーマにしたセミナーが各所で頻繁に行われています。皆さんは第三者承継という言葉をお聞きになったことがありますか。経営者の高齢化、後継者不足に加え、コロナ禍の業績不振を背景に、国が進める中小企業支援策の一つとして注目を集めています。

事業承継には3つの選択肢があると言われています。ⅰ)親族承継:経営者の親族から後継者を選ぶもの、ⅱ)従業員承継:自社の役員や従業員から後継候補を選定して引き継ぐもの、そしてⅲ)「第三者承継」:社外の第三者(法人・個人)による事業承継のためにM&Aの手法を用いるものです。後継者への承継ができなければ経営者は究極の選択として廃業・清算を余儀なくされます。

「親族・従業員承継」については多くの事業承継セミナーや関連書籍に譲ることとして、今回は一般にはあまり知られていない「第三者承継」について中小企業診断士の視点から解説します。

2.中小企業2025年問題(大廃業時代をコロナ禍が襲う)

 中小企業庁の試算1)では、2025年までに、平均引退年齢70歳を超える中小企業・小規模事業の経営者が245万人、全体の64%を占めると見込まれます。このうち後継者が未定の127万者(52%)が「廃業予備軍」とされます。中小企業の黒字廃業率が49.1%とされていますので、このままの状況が続けば、利益が出ていても後継者不在で廃業する黒字廃業企業が60万者を超えると危惧されます。日本の雇用で650万人(全体の14%)、GDPで22兆円(4%)に相当する経済価値が失われる危機2)に直面するのです。

後継者不在率を売上規模別3)に見ると小規模ほど高くなる傾向があります。売上高1千億円以上で24.5%、対して5千万円未満では80.3%と大幅に上がります。黒字廃業の比率4)も2019年には61.4%と大幅に増えています。町で見かける小さな事業者(工場・商店など)の5者のうち、4者が後継者不在で、3者が黒字ながら消えていくとの計算になります。

この状況において、コロナ禍が追い打ちをかけ、廃業ペースに拍車がかかるものと想定されます。

3.国の施策も続々と打ち出されています

危機的な状況を打開すべく、国(経済産業省)も様々な施策を打ち出しています。下記に主な動きをご紹介します。

☑ 第三者承継支援総合パッケージ1) 2019年12月
黒字廃業を回避するための第三者承継支援総合パッケージ(10年間の集中実施)

  • 目標
    • 10年間60万者(6万者年×10年)の第三者承継の実現を目指す。
    • 技術・雇用等の中小企業の経営資源を、次世代の意欲ある経営者に承継・集約
  • 施策
    • 「事業引継ぎガイドライン」を改訂し、経営者が適正な仲介業者・手数料水準を見極めるための指針を整備。第三者承継を経営者の身近な選択肢とする。
    • 「経営者保証ガイドライン」の特則策定により、個人保証の二重取りを原則禁止
    • 新社長就任に向けた後継者の教育支援や、事業の選択と集中を促す補助金の創設

☑「中小M&Aガイドライン」5)6)の策定 2020年3月中小企業庁
中小企業にとって適切なM&A支援の判別が困難であり、M&Aを躊躇する原因の1つとなっている。
中小M&Aガイドラインにより、M&Aの基本的な事項や手数料の目安を示すとともに、M&A業者等に対して、適切なM&Aのための行動指針を提示し、M&A支援に対する不信感を払拭する。

  • 後継者不在の中小企業向けの手引き
    • 約20の中小M&A事例を提示し、M&Aを中小企業にとってより身近なものに
    • 中小M&Aのプロセスごとに確認すべき事項や、適切な契約書のひな形を提示
    • 仲介手数料の考え方や、具体的事例の提示により、手数料を客観的に判断する基準を示す。
  • 支援機関向けの基本事項の提示
    • 支援機関の基本姿勢として、事業者の利益の最大化と支援機関同士の連携の重要性を提示。
    • M&A専門業者に対しては、適正な業務遂行のため、
      1. 売り手と買い手双方の1者による仲介は「利益相反」となり得る旨明記し、不利益情報(両者から手数料を徴収している等)の開示の徹底等、そのリスクを最小化する措置を講じる
      2. 他のM&A支援機関へのセカンド・オピニオンを求めることを許容する契約とする
      3. 契約期間終了後も手数料を取得する契約を限定的な運用とするといった行動指針を策定

☑ 経済産業省関連予算7)【R2年度第3次補正予算及びR3年度当初予算】※1月25日時点で審議中
地域・中小企業・小規模事業者関連予算として注目すべきは、M&A時の専門家活用に係る費用補助まで踏み込んだ施策新たに検討されている点です。

  • 第3次補正予算案及び来年度当初予算案を合わせて15か月予算として、①「事業継続や事業再構築の後押し」②「事業承継・引継ぎ・再生等の支援」、③「生産性向上による成長促進」に取り組み、コロナ危機の克服及び危機を契機とした構造転換による低成長からの脱却を図る。
  • 事業承継・引継ぎを契機とした経営革新に挑戦する中小企業を後押しするため、事業承継・引継ぎ補助金を措置し、承継等を機縁とした成長促進を強力に支援。
  • 事業承継・世代交代集中支援事業7)【16.2億円(新規)/56.6億円の内数<R2三次補正>】
    • M&A時の専門家活用への補助
      <補助対象経費>仲介手数料、デューデリジェンス費用、企業概要書作成費用等、廃業費(廃業登記費、在庫処分費、解体費、原状回復費等)
    • 事業承継・事業引継ぎを契機とした設備投資等を補助
      <補助対象経費>事業承継・引継ぎ後の設備投資、販路開拓費用等、廃業費(廃業登記費、在庫処分費、解体費、原状回復費等)

4.中小M&Aは急速に身近なものになりつつあります

第三者承継で中心的な役割を果たすのが中小企業・小規模事業者を対象にする中小M&Aです。インターネット上で「引渡し者(譲渡者)」と「引受け者(譲受者)」のマッチングを行うM&Aプラットフォーマーも10社近くにのぼり活動の場を広げています。

中小M&Aは、次の様に多くの方々が未来を実現する場として活用が広まっています。

  1. 後継者不在に悩んでおられる経営者に、安心で幸せなセカンドライフ
  2. 起業を考える個人(若者、主婦、サラリーマン、シニア)に、既にある経営資源を受け継ぐことで確実な創業
  3. 成長戦略の一環として事業の更なる拡大事業環境の変動に強い複数事業体制を目指す企業に、迅速な新規事業展開

以下に、その具体的な事例を紹介するリンクをお知らせします。是非内容を探索してみて下さい。

事例1)旅行代理店勤務から学習塾の経営者に転身。創業者も安心の世代交代型第三者承継。
リンク: https://batonz.jp/learn/5112/(解説)
株式会社バトンズ(M&Aプラットフォーマー)

事例2)2児の母 元看護師がウエディングドレス店を買収!
リンク: https://www.youtube.com/watch?v=KPRUgDGxaEo (動画)
【2分で見るガイアの夜明け】2020/9/22放送 今なら会社買うでしょ!急増する個人M&A
リンク: https://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber4/preview_20200922.html (解説)
テレビ東京「ガイアの夜明け」バックナンバー 2020年9月22日 放送 第932回

事例3)自動車・医療部品の精密金型製造業がアニメキャラクターグッズ会社の傘下入りで大変身
リンク: https://www3.nhk.or.jp/news/contents/ohabiz/2020_1209.html (動画)
     https://www.nhk.or.jp/ohayou/biz/20201209/index.html (解説)
NHKおやよう日本 2020年12月9日 放送 「おはBiz」

5.未来に向けまずは計画づくりから始めましょう

これまで第三者承継に関する国の施策や中小M&Aの活用事例、身近になりつつある状況をご紹介してきました。

皆様の会社や事業の成長戦略・経営計画の一部として、まずは第三者承継(中小M&A)を組み込むことをお勧め致します。

われわれ川崎中小企業診断士会には、川崎市などが推進する「KAWASAKI事業承継市場(いちば)」と協定を結んでいるM&Aプラットフォーマー(バトンズ株式会社)の認定承継アドバイザー資格者や、中小M&Aに詳しい会員が所属しております。

第三者承継等でご質問やお悩み等があれば是非、ご相談下さい。

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経営課題解決セミナーのお知らせ

川崎中小企業診断士会では、川崎市産業振興財団と共催で、経営課題解決セミナー「変革の時代に対応する経営力向上」として全6回のセミナーを行っています。

第6回は「変革の時代の事業承継」として事業承継に関する講義を予定しております。

今年度は全回無料で、会場と同時にオンラインでも受講いただけますので、是非ご利用下さい。 お申込み方法等の詳細は「こちら」から。

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出典

  1. 第三者承継支援総合パッケージ2019.12.20 中小企業庁
  2. 中小企業本当に要らないの?展望「ポスト大廃業時代」2019.11.25日経ビジネス
  3. 「全国・後継者不在企業動向調査」2019年 帝国データバンク
  4. 2019年「休廃業・解散企業」動向調査 東京商工リサーチ
  5. 「中小M&Aガイドライン」 中小企業庁
    https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200331001/20200331001-2.pdf
  6. 「中小M&Aハンドブック」 中小企業庁https://www.meti.go.jp/press/2020/09/20200904001/20200904001.html
  7. 経済産業省関連予算(案)【R2年度第3次補正予算及びR3年度当初予算】
    https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2021/pdf/keisanshoyosan1.pdf
    https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2021/pdf/chushokigyo.pdf

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