多様な人材の活躍で組織をより強く!

中小企業診断士・社会保険労務士 高橋 美紀

働く人がいなくなる!?

少子高齢化が急速に進む日本。近い将来、深刻な労働力不足となり、経済が立ち行かなくなることが懸念されています。日本・東京商工会議所の調査によると中小企業が抱える「人手不足感」は年々深刻化しており、2019年には66.4%が「人手が不足している」と感じているようです(図1)。さらに、数年後(3年程度)の人員充足の見通しについて、52.1%の企業が「不足感が増す」と回答しています(図2)。

(図1) 人員の過不足状況(内側2015年度~外側2019年度)

(図2) 数年後(3年程度)の人員充足状況に関する見通し

出所:(図1)に同じ

それもそのはず、厚生労働省の人口動態統計によると、2020年に生まれた子どもの数は約84万人。これは統計史上最少の数字です。第1次ベビーブーム期のピーク(1949年)の出生数は約 270万人、同じく第2次のピーク(1973年)には約210万人でしたが、2016年に100万人を切ってからは減少を続けています。

これは看過できないと、政府は2017年に「一億総活躍社会の実現」といったスローガンを打ち出し、投資やイノベーションによる生産性向上、そして個々のニーズに応じて多様で柔軟な働き方ができるよう、「働き方改革」に関する施策を講じているところです。

「多様な人材」が増えている

必要な人材が確保できなければ、当然、企業運営に支障が生じますし、将来的には技術やノウハウが受け継がれなくなる恐れがあります。外部化や機械化を進めながら、限られた人材で何とかカバーすることも考えられますが、一方で、これまで一般的に基幹人材として位置づけてきた、「時間や場所の制約なく、長期間雇用されることが前提」の、主に男性の正社員だけでなく、その枠外にいる多様な人材(女性、外国人、高齢者、障害者など)の採用に力を入れる企業も増えてきています(図3)。

(図3) 多様な人材の増減の程度(過去5年程度の変化)

もっとも、多様な人材の総人数が増えていても、本当に必要な人材が揃ったかは不明です。彼らの能力が発揮できるような施策を取っていなければ、企業経営にプラスにならないばかりか、「労務管理が面倒になった」「コミュニケーションが取りにくくなった」といった負の側面が目立ってしまいます。

せっかく多様な人材を採用するのなら、どうしたら一人ひとりの能力を引き出し融合できるのか、考えてみましょう。

多様な人材を活かすマネジメント

  1. 「何を任せるか」を明確に
    まずは、「自社にとってどんな人材が必要なのか」の確認です。業務の棚卸と細分化を行い、「具体的にどんな業務を行う人材が不足していて、どのような条件(意欲、能力、労働時間をはじめとする労働条件等)の人に、どんな業務を担ってもらいたいのか」といった方針を明確にします。
    このときに大事なのは、「この業務は若い人でないと難しいだろう」「家庭責任のある女性は残業ができないから任せられない」といった固定観念で判断しないことです。置かれた状況も、意欲も能力も異なることを認識するとともに、標準化やちょっとした設備投資、配置の工夫などでこれまでの「固定観念」を崩せないか、検討してみましょう。
  2. 本人の事情に寄り添う
    働く人が仕事に求めるものはさまざまですが、特に多様な人材はその背景も多様です。たとえば、高齢者をイメージしてみても、「仕事が好きなので、身体が動くうちはバリバリ働きたい」かもしれませんし、「持病があるから通院に支障のない程度に」と希望しているかもしれません。ここで、(1)と同じく「この属性だからこうだろう」と決めつけてしまってはミスマッチが生じ、早期離職につながりかねません。もちろん企業の事情もあるでしょうが、可能な範囲で本人の希望に耳を傾けてみてください。
  3. 業務をスムーズに進められる仕組みと制度導入を
    「長時間職場にいること」が前提になると、それ以外の人材の活躍の機会が制限されてしまいます。多様な人材の意欲を損なわないためには、従来型の働き方そのものを見直し、勤務時間や通勤に制約などのある人でも企業に貢献できたと実感できるよう、仕組みと制度を整えたいものです。
    たとえば、「全員が揃う時間帯がない」なら、業務の進捗状況などを共有できるような、また多能工化によって「誰かが抜けても職場が回る仕組み」を確立するような工夫をしてみましょう。このコロナ禍で便利な情報共有ツールが普及してきましたので、それらを利用するのも一法です。
    これらが実施できれば、短時間勤務や在宅勤務といった柔軟な働き方も許容されやすくなります。
  4. 異なる意見や価値観を尊重しあう風土へ
    以上を下支えするのは、お互いを尊重しあえる風土です。そもそも「意見を気兼ねなく言える雰囲気にない」というなら、まずその原因は何かを探り、改善していくことが大切です。多様な価値観を持つ人が、それぞれの意見を出し合える場は誰にとっても刺激的でしょうし、そこから新たなアイデアが創出される可能性もあります。ぜひ、意見交流と集約の機会を設定してみてください。

多様な人材を活かした組織は強い

以上のような取り組みは、一時的にはマネジメントに負荷がかかるかもしれません。また、長時間労働削減をはじめとする働き方改革については緒についたばかりという企業にとっては、難易度が高いのも事実でしょう。

だからと言って、従来型の人材マネジメントのまま押し切るのはもはや限界があります。それならば、これまでマイノリティであった人たちの活躍推進を契機に、全社的な働き方や業務プロセスを見直す方向に舵を切ったほうが、結果的に組織力が強化されるのではないでしょうか。それが採用のアドバンテージになったり、定着率向上による知見の蓄積につながったりもします。そこまで行けばしめたもの、企業価値の向上と優秀な人材確保の好循環が期待できるでしょう。

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