第145回かわさき起業家オーディション参加レポート

2025年12月5日（金）に、第145回かわさき起業家オーディションの最終選考会が川崎市産業振興会館で開催されました。
かわさき起業家オーディションは、起業家と多様な企業・団体による「協業のプラットフォーム」となるビジネスプランコンテストを目指し、年４回川崎市にて開催されるビジネスオーディションです。活動拠点や国籍などの制限がないオープンなオーディションで、様々なビジネスアイデアを持った多様な方々が参加されます。第145回の最終選考会では、一次書類審査および二次面接審査を通過した3名の起業家からのビジネスプランの発表がありました。3名の発表の概要は以下の通りです。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
株式会社ＩＭＵ・ＧＥＮＯＳ代表取締役曽根伸二様
熱分解によるCO₂排出量大幅削減と「地産地処理」の推進

株式会社ＩＭＵ・ＧＥＮＯＳは、独自の熱分解装置『LRAD（エルラド）』で廃棄物処理の課題を解決します。LRADは、低温無酸素の環境下にて有機物を処理するため、従来の焼却と比べCO2排出量を大幅に削減します。さらに、処理後の残渣は埋め立て不要かつリサイクル可能となるセラミック残渣になるため、廃棄物を資源へと変える画期的な技術です。

特に医療業界における感染性廃棄物の処理費用は約1/2000にまで抑えることが可能であり、川崎市立川崎病院と同規模（700床）のデータを用いると12年間でおよそ3.7億円のコスト削減効果が見込めます。この「地産地処理」の概念は、環境負荷低減と企業の経済的なメリットを両立します。

また、熱分解の課題であったブリッジ（熱伝導不良）も独自の底面攪拌パドルで克服し安定稼働を実現しました。今後はアップサイクル企業とのマッチング、セラミック残渣を活用したブルーカーボンプロジェクトなど、アップサイクル事業を展開し、社会課題の解決に貢献していきます。

出口博也様
スポーツチームの試合相手探し・調整を最適化するウェブアプリサービス

全国の少年サッカークラブでは、監督・コーチの人脈に依存した相手探しや、アナログな手作業による試合調整が煩雑であり、子どもたちの試合機会の損失につながっています。出口氏が開発するアプリ『Opportūnus』は、この根本的な課題を川崎から解決します。

本アプリは、試合成立に必要な「相手探し」「試合調整」「保護者連絡」を一気通貫で提供します。具体的には、エリアや強さ、日程に基づきAIが最適な相手を提案し、人脈依存やミスマッチを解消します。また、多数の調整事項やタイムテーブルをテンプレートで自動生成することで、年間約60時間の準備工数を効率化します。さらに、保護者向けのスケジュール確認、出欠連絡、集金決済もアプリ内で実現し、運営の透明性を向上させます。

今後は他競技や他年代への水平展開、さらには会場予約機能や地域との連携によるグラウンド不足の解消を目指し、スポーツ社会インフラの構築を通じて、子どもたちの成長機会を全国に広げていきます。

株式会社あかり保証田邉直樹様
安心の老後をサポートする弁護士運営の身元保証サービス

超高齢社会において、身寄りのない方や頼れる家族がいない方が増加し、入院時の保証や緊急時の対応、逝去後の手続きといった「家族の役割」を担う人がいないという社会課題が深刻化しています。

株式会社あかり保証は、弁護士・司法書士といった法律の専門家と、看護師・ケアマネージャーといった医療介護の専門家がチームを組み、高齢者の生活を包括的にサポートする身元保証サービスを提供しています。一般的な身元保証会社が約200万円でサービス提供しているのに対し、同社は法律専門家が在籍することで、88万円という低価格でのサービス提供を実現しています。

同社は、業界団体設立にも携わり、事業者自らが厳しい基準を設け、お客様が安心して事業者を選べる環境作りを進めています。すでに金融機関系VC等から総額2億1,000万円を調達し、今後は全国展開を目指すとともに、様々な事業者と連携して介護現場の負担軽減にも貢献していきます。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
最終選考会に残った３社はいずれも最先端の情報通信技術を活かし、CO2削減・医療業界のコスト削減・子供の成長機会創出・介護現場の負担軽減という社会課題に挑む、まさにスタートアップならではの独創性と革新性を持ったビジネスプランだと感じました。

今回のオーディションでは3社とも甲乙つけがたい内容でしたが、川崎中小企業診断士会応援賞の該当企業として、株式会社ＩＭＵ・ＧＥＮＯＳ様が受賞されました。株式会社ＩＭＵ・ＧＥＮＯＳ様には、副賞として当会中小企業診断士の支援を半年間に2回受けることが可能となっています。おめでとうございます。