第144回 かわさき起業家オーディション 参加レポート
2025-10-8
第144回かわさき起業家オーディションの最終選考会が2025年9月26日(金)、川崎市産業振興会館ホールで開催されました。
かわさき起業家オーディションは、起業家と多様な企業・団体との「協業のプラットフォーム」として、川崎市にて年4回開催されるビジネスオーディションです。活動拠点や国籍などの制限がないオープンなオーディションとして、様々なビジネスアイデアを持った多様な方々が参加されています。第144回の最終選考会では、一次書類審査および二次面接審査を通過した3名の起業家からビジネスプランの発表がありました。3名の発表の概要は以下の通りです。
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株式会社JIYU Laboratories 代表取締役 髙野 泰朋 様
【紙と電子のハイブリッド型実験ノートを起点とした研究DX基盤構想】
これだけIT化が進んだ今でも、研究現場の実験ノートは紙が主流です。これは実験室に電子機器を持ち込むことで、機器が損傷するリスクがあるだけでなく、慣れて自由度の高い手書きによる図表作成が可能などのメリットがあるためです。しかし紙の実験ノートは、後から検索できないという最大の弱点があり、せっかくの貴重な研究成果が埋もれてしまう懸念もありました。
株式会社JIYU Laboratories社様の「Jikken Note(https://jikken-note.com/)」は紙とデジタルを融合し、特殊な紙のノートを撮った写真などをアップロードするだけで、手書き文字も含めて検索可能となる技術です。独自のOCR技術で、走り書きでも85%以上は読み取り可能とし、負担なく研究に集中できる環境が整うことで大幅な生産性向上が期待できます。また、過去の埋没データを活用できることで、「一生懸命実験した結果が、すでに過去に他の社員がやった実験と同じだった」などの防止にも役立ちます。
同社の『Jikken Note』は、手書きのままで対応可能という、他に例を見ないユニークな商品であり、現在商社と組んで、大学や研究機関に販売すること等を計画しています。同社創業者の髙野様は、まさに日々の不便を経験したからこその素晴らしいアイデアだと感心いたしました。展示会・講演などを通じて、国や企業、研究機関等への展開を図ることで、今後のわが国の研究のDX化に貢献することと思われます。
株式会社A-Co-Labo 代表取締役社長CEO 原田 久美子 様
【製造業の存在価値を高める研究開発型マネジメントソリューション】
多くの製造業の研究開発組織は、①新たな事業や価値を生み出す中核となるべき存在でありながら、その役割が十分に認識されていない。②一方、研究者の持つ知見や能力が非常に高いのに、企業の課題解決に十分に生かされていない、という課題を持っています。この2つの課題解決のために、株式会社A-Co-Labo様は、産業と研究を繋げる支援体制を後押しする仕組みを構築しました。
このサービスは、研究開発組織におけるマネジメント機能の課題を「見える化」し、業務を支援していくものです。研究開発のプロセスを「意思決定」と「実行促進」に大別し、ビジョン策定・問題解決・現状把握・協業促進・調整・プロジェクト管理といった各段階に応じて、研究者や専門人材の知見を適材適所に配置・活用する仕組みを提供します。これにより、属人的だった研究のボトルネックを解消し、研究成果の創出のみならず、組織変革の推進を図っていくものです。
中小企業診断士もマネジメント機能の課題の「見える化」や、組織の変革を行っていくことは同じですが、適切な人材の供給まで行う点が新しい視点だと感じました、現在は実証も兼ねてプレサービスを実施中で、すでに大手製造業からの引き合いもいただいているとのことです。今後は専門分野別に人材の育成・増員と、サービス設計の標準化により、対応件数、分野の拡張をはかり、研究機能を持つ地域企業、公的機関への展開を目指しており、わが国の研究開発の底上げに貢献するものと思われます。
キラル株式会社 取締役 中島 栄彦 様
https://www.chiraljp.com/
【育児を楽しみ、前向きに将来を生きるためのプロジェクト】
キラル株式会社様は、顧客のライフステージの変化に伴って、自動的に顧客のライフステージを判断し、ふさわしい多角的なサービスや機能を提供するライフステージプラットフォームの構築を目指しています。このプラットフォームは多様な業界が参画できるエコシステムのベースとなるものです。そして、本年2月にそのライフステージの一つとしてZ世代女性向けセルフケアアプリ「WELFEM」をリリースし、今回は、妊活~育児の間に精神的に不安な状態が続くこと、産後うつの発生率が高いことを課題と捉え、この時期に適応した包括的なサービスを開発しています。
このサービスは、パートナー同士で利用するスマホアプリで、妊産婦と夫に対して、妊娠育児教育や医療情報、日々の心身の記録・見える化、ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)を利用し、”生き方変容”をもたらす、新しいアプローチを採用したセルフケア機能、パートナー間の協働機能、他の妊娠育児活動中の方とのつながり機能などを提供し、育児を支援するものです。さらに、保健師や、医療機関や産業医とも健康状態を共有する機能の搭載を想定しています。これらによって、「孤独・ストレス・コミュニケーション不全」を解消していく一助となるだけでなく、新しい家族を迎えたタイミングで、新しい家族の生き方を見つめ直し、その家族にとってのウェルビーイングの実現を目指しています。さらに、アプリで提供することで、たとえばカウンセラーのマッチング、コスト、時間等の低減化を図ることも可能です。
わが国は現在少子化に伴う人口構造の変化に早期に対応する必要があり、同社の取り組みはその核心に迫るものだと言えるでしょう。今後、同社は自治体や勤務先企業と連携して、アプリの継続的な推進と妊産婦等に対する支援にも取り組む方針ですが、わが国のメンタルヘルス向上に貢献する有望な企業として期待を持てます。
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最終選考会に残った3社はいずれも最先端の情報通信技術を活用して、紙のノート活用、研究開発組織における専門性の適材適所化、妊娠育児教育期の女性向けメンタルヘルプアプリと、いずれも過去に例を見ない斬新な提言を行っており、今までにない切り口は、まさにスタートアップならではの独創性と革新性を持ったビジネスプランだと感じました。
今回のオーディションでは3社とも甲乙つけがたい内容でしたが、川崎中小企業診断士会応援賞の該当企業として、キラル株式会社様が受賞されました。キラル株式会社様には、副賞として当会中小企業診断士の支援を半年間に2回受けることが可能となっています。おめでとうございます。
今回参加された企業様全てのご多幸とご活躍をお祈り申し上げております。かわさき起業家オーディション第145回の最終選考会は2025年12月5日(金)となります。ご興味のある方は下記サイトをご覧ください。
▼かわさき起業家オーディション 公式HP
https://www.kawasaki-net.ne.jp/bizidea/
多数のご参加をお待ち申し上げております。
(文責:川崎中小企業診断士会 創業支援部 山田仁)
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