中小企業のIT投資効果を考える 

中小企業診断士 井川和美

貴社ではどれくらいITを活用されていますか?あるいは導入を検討されたことがありますか?

情報化推進には多様な段階があり、「ITコーディネータ・プロセスガイドライン」では、情報化のプロセスを次のように区分しています。

  1. 経営戦略策定・・・・・・自社の経営状況、将来のあるべき姿を捉え、解決すべき課題の明確化(ここでは情報化するかしないかを考えない)
  2. IT戦略策定・・・・・・業務分析、どの分野、どんな目的で情報化を進めるかの方針検討
  3. IT資源調達・・・・・・ツール、パッケージ選定のための要件定義
  4. IT導入・・・・・・・・・・開発、テスト、導入(受入れ)
  5. ITサービス活用・・評価、改善

IT活用となると「(3)IT資源調達」以降を考えがちですが、経営戦略に沿ったIT戦略、言い変えるとIT投資の目的こそが非常に重要なのです。

さて、IT(コンピュータ)が得意とするのは、概ね次のとおりです。

  • 処理・・・大量データ、スピード、繰り返し、リアルタイム
  • データ・・・蓄積、共有、再利用、検索

従業員(利用者)が多く、大量データを取り扱う大企業では、簡易なシステム導入だけでも処理能力の面で業務効率が向上し、大きなコスト削減効果があります。

例えば、従業員1000人の企業で情報システムの導入により1人1日30分の作業短縮が図れたとすると、0.5時間×1000人×20日×12カ月=120,000時間、仮に時給を1000円とした場合、1年で約1億2千万円の人件費削減が達成できる計算です。

しかし、同じシステムを従業員20人の企業が導入した場合には、年間240万円の削減にしかなりません。導入にかかる費用やその後の維持費を考えると、業務効率化(コスト削減)を目的とした費用対効果は高いとは言えません。

ところで、中小企業にはちょっとしたデータの入力から高度な判断能力を求められるようなイレギュラー事案の対応までをこなしているスーパープロフェッショナルな社員の存在が珍しくありません。このスーパー社員の能力と経験により社内処理の整合性が保たれているのです。ところが、厳しい競争環境を生き抜いていくためには、能力の高い社員にもっと高度な仕事に集中してもらうことが必要になってきます。

そこでITを活用して、業務の効率化というよりも情報の共有化、ルール化に着目して処理の分散化を図り、スーパー社員の負荷を軽減する。これが実現できたときには、簡単な数式では導き出せない大きな効果が表れてくるのではないでしょうか。

さらに、情報の共有化によって、経営者は情報閲覧が容易になり戦略的な次の一手のタイミングが早まります。商談状況、クレーム情報の共有は、販売ロス、リスク回避につながります。

前述したとおりIT導入は経営戦略実現のための手段です。すべてをパッケージに任せ、自動化することが目的ではありません。誰かを楽にすることが目的でもありません。個別業務ではなく全社の業務フロー分析を行い、なるべくシンプルな仕組みを構築し、能力のある人が能力を発揮できる体制を整える。経営資源が限られている中小企業ほど、享受できるメリットは大きく、実現できる可能性も高いと考えます。

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