マイナンバー(社会保障・税番号制度)について

中小企業診断士 大塚 照

平成27年10月から、マイナンバー制度が施行され、住民票を有する全ての人に、一人一つのマイナンバー(個人番号)が「通知カード」により連絡されます。この制度は平成25年5月に公布された、「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(マイナンバー法)」に基づいています。マイナンバーとは国民一人ひとりが持つ12桁の番号のことです。また「通知カード」に顔写真を添えて、平成28年1月以降、市区町村の窓口に申請すると「個人番号カード」がもらえます。「個人番号カード」は身分証明書の代わりとして、使うことができます。
この種の制度は1960年代から米国、スウェーデン、韓国、シンガポール、ドイツなどでは既に導入されており、日本は出遅れていると言えます。1970年代から納税者番号制度として、会社員は所得情報の9割を税務当局に把握されているのに、自営業者は6割、農家は4割に過ぎない、クロヨンと呼ばれた課税の不公平を解消し、徴税を強化する手段として検討が始まりました。しかし、金融情報を国が管理する仕組みへの反発から日の目をみませんでした。
法人にも13桁の法人番号が指定され、個人番号とは異なり、誰でも自由に利用できます。国税庁長官は株式会社などの設立登記法人のほか、国の機関、地方公共団体、その他の法人や団体に対して一法人一つの法人番号を指定します。法人の支店・事業所等や、個人事業者には指定されません。平成27年10月から法人に対しても法人番号を記載した通知書を送付する予定となっています。
平成28年1月からマイナンバー制度による、社会保障・税・災害対策の行政手続きの使用が始まります。民間企業も税や社会保障の手続きなどでマイナンバーを使用します。このため、マイナンバーを適正に使うための基本方針や取扱規程の策定など社内規定の見直しや、マイナンバーに対応した人事・給料・会計など業務ソフトの開発や改修が必要になります。組織体制、担当者の監督、漏洩防止、アクセス制御など安全管理措置を検討し、特に総務・経理などマイナンバーを取り扱う事務を行う従業員への周知徹底のため社内研修・教育の実施が不可欠です。
主に行政(健康保険組合を含む)は個人番号利用事務実施者となり、主に民間は個人番号関係事務実施者となります。マイナンバー制度では行政だけでなく、民間にも特定個人情報(マイナンバーを内容に含む個人情報)の適正取り扱いを求めています。マイナンバーは法律で定められた範囲外での利用が禁止されています。マイナンバーの利用範囲は法律に定められた社会保障、税および災害対策に関する事務に限定され、この手続き書類の作成事務を行う場合に限って、本人に対してマイナンバーの提供を受けることができます。この業務を委託する場合も安全管理措置や適切な監督が要求されています。いずれの場合でも違反すれば罰則が設けられています。
マイナンバー法に関して、預貯金口座へのマイナンバーの付番、医療等分野や地方公共団体の要望を踏まえた利用範囲の拡充等を含む一部改正法案が国会に提出され、衆議院内閣委員会ではこの改正案は可決されました。ところが外部からの不正アクセスにより日本年金機構が保有する個人情報の一部が外部に流出していることが判明し、参議院内閣委員会での採決は当面先送りされることとなりました。その後政府・与党と民主党との間で、マイナンバーと基礎年金番号との連結を当面延期する話し合いがつき、マイナンバー法の一部改正法案が第189回国会(通常国会)で成立しました。
国民からは個人情報漏えいへの不安や懸念の声があります。また、中小企業や地方の企業ではマイナンバー制度について、対応の遅れが目立っています。特定個人情報の漏えい防止のための万全なセキュリティー対策が望まれます。
国や地方自治体がバラバラに保有していた個人情報をマイナンバーの導入で、統合することができます。マイナンバーにより情報の照合や書類への転記などの手間が省けて行政事務の効率化や人員のスリム化、配置の見直しなど行・財政改革につながります。民間の側からは面倒な行政手続き書類が簡素化できます。この他にも適正・公平な課税の実現が期待されています。

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