2026年度 中小企業が活用できる主な補助金の動向 ―「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」の統合を中心に―
- 2026/5/1
- トピックス

中小企業診断士 井手上 悟
1.新事業進出・ものづくり商業サービス補助金
【2026年度の最大の注目ポイント】
これまで「ものづくり補助金」は、革新的な製品・サービス開発や生産性向上を目的とした設備投資を支援する制度として、多くの中小企業に活用されてきました。一方、「新事業進出補助金」は、新市場や高付加価値分野への進出など、より大胆な事業展開を後押しする制度として位置づけられてきました。
2026年度からは、これら二つの補助金が整理・統合され、生産性向上・新事業展開・付加価値創出を一体的に評価する制度設計へと移行する方向が示されています。 これにより、「どちらの補助金を使うか」という制度選択よりも、自社の成長戦略や事業計画の一貫性が、これまで以上に重要になります。
今後は、
•設備投資と新事業展開をどのようにつなげるか
•付加価値向上や賃上げにつながるストーリーを描けているか
といった点が、より重視されると考えられます。
検討されている採択審査において求められる視点及び審査観点
•補助事業が申請する中小企業等の売上拡大や生産性向上に寄与し、付加価値額を向上させ、従業員の賃上げが達成できるかがポイントであり、申請する事業計画の実現可能性をいかに見極めるかが重要となります
•事業者の経営戦略と補助事業との関係性
•これまで活用した補助事業との整合性等
•申請事業者の経営指標等の評価
補助対象者の実情等を踏まえて変更となる可能性がありますが、現時点での補助対象事業や対象者、対象経費、補助金額等を記載します。
(1)補助対象事業
中小企業事業者等が行う、技術的革新性のある製品・サービスの開発(革新的新製品サービス枠、類型①)、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出(新事業進出枠、類型②)、海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制の強化(グローバル枠、類型③)
のための事業費等の一部を補助対象とする。
(2)補助対象者、補助対象経費、補助金額等
| 助対象者 | 中小企業者 |
| 補助対象経費 | 建物費、構築物費、機械装置・システム構築費(リース料含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、海外旅費、通訳・翻訳費、ただし、建築費、構築物費については類型②及び③、海外旅費、通訳・翻訳費については類型③のみとする |
| 補助下限額 及び 補助上限額 | 類型① 従業員数により変わる100万円以上3,500万円以下 類型②及び類型③ 従業員数により変化750万円円以上9,000万円以下 *上限額は大幅な賃上げを行う場合の金額 |
| 補助率 | 類型①: 1/2ただし最低賃金引き上げを行う場合2/3(対象:中小企業) 2/3(対象:小規模企業者・小規模事業者、再生事業者) 類型②: 1/2(対象:中小企業)ただし最低賃金引き上げを行う場合2/3 類型③: 2/3(対象:中小企業) |
| 対象実施期間 | 類型①: 交付決定から10か月以内(ただし採択発表日から12か月以内) 類型②及び類型③ 交付決定から14か月以内(ただし採択発表日から16か月以内) |
| その他 | ・類型①については、技術的革新性のある製品・サービスの開発に取り組む事業者を対象とする。 ・類型②については、補助事業において、企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦を行う事業者を対象とする。 ・類型③については、補助事業において、自発的な海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制の強化に取り組む事業者を対象とする。 |
| ・基本要件①又は基本要件②の目標を達成できなかった時には、補助金額の一部の返還を求めるものとする。ただし、付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体として事業計画期間の過半数が営業利益赤字などの場合や、天災など事業者の責に帰さない理由がある場合は、補助金の一部返還を求めないものとする。 ・(a)補助事業終了後3~5年で1人あたりの給与支給額の年平均成長率が6%以上増加する見込み、かつ(b)事業場内最低賃金が、毎年、事業実施都道府県における最低賃金より50円以上高い水準となる見込みの事業計画を策定すること(以下「大幅賃上げ要件」という。)を「大幅賃上げに係る補助上限額引上げの特例」の対象事業者要件とする。 ・指定する一定期間において、3か月以上事業実施都道府県における最低賃金から50円以内で雇用している従業員が全従業員の30%以上いること(以下「最低賃金引上げ要件」という。)を「最低賃金引上げに係る補助率引上げの特例」の対象事業者要件とする。」 ・「大幅賃上げに係る補助上限額引上げの特例」の適用事業者が大幅賃上げ要件の目標を満たしていないときは、補助金額の返還を求める場合がある。 ・本事業の成果により収益が得られたと認められる場合にも、収益納付は求めない。 ・財産処分等も含め、補助金の返還額の合計は補助金交付額を上限とする。 |
約6,000件(広報や応募1件当たりの交付申請額他補助金の状況によって増減する可能性がある。)
(4)募集方法と申請受付期間
令和8年6月より公募(公募要領の公開)を行われる予定です。
具体的な公募時期、申請受付時期、採択時期及び回数、各採択における採択規模、補助事業期間等は、中小機構と協議の上決定されます。
2.小規模事業者持続化補助金・・・補助上限50万円(特例を活用した場合250万円)補助率2/3
【小規模事業者にとっての基礎的な支援制度】
小規模事業者持続化補助金は、地域の小規模事業者が行う販路開拓や業務効率化の取組を支援する、比較的取り組みやすい補助金です。
チラシ作成、ホームページやECサイトの構築、展示会出展、業務改善のための設備導入など、身近な取組が対象となる点が特徴です。商工会・商工会議所の支援を受けながら申請する仕組みであるため、補助金活用の第一歩として検討されるケースも多く見られます。
3.省力化投資補助金
【人手不足に対応するための実務的な補助金】
カタログ注文型:補助上限額最大1,500万円 補助率1/2
一般形:補助上限8,000万円(大幅賃上げを行う場合1億円)
補助率:中小企業1/2、小規模・再生2/3
人手不足への対応が喫緊の課題となるなか、省力化投資補助金の重要性は年々高まっています。本補助金は、ロボットや自動化設備、DXの導入など、業務の省人化・効率化につながる投資を支援する制度です。
事前に登録された製品を活用する「カタログ型」と、個別の業務内容に応じた投資を行う「一般型」が用意されており、企業の状況に応じた活用が可能です。 ものづくり補助金等と目的が重なる場合もあるため、投資目的を整理したうえでの使い分けが重要になります。
4.デジタル化・AI導入補助金2026
【旧IT導入補助金・名称変更に注意】
補助上限最大金額450万円、補助率1/2~4/5
通常枠、複数社連携デジタル化・AI導入枠、インボイス枠(インボイス対応類型、電子取引類型)、セキュリティー対策推進枠の4つの枠があります。
2026年度から、従来のIT導入補助金は「デジタル化・AI導入補助金」へと名称が変更されました。業務効率化やDX推進に加え、AI活用を含むITツールの導入がより明確に位置づけられています。
会計・受発注・決済システム、クラウドサービス、AI機能を有する業務支援ツールなどが対象となり、ITベンダー等の支援事業者と連携して申請を行う点が特徴です。インボイス対応を含め、比較的幅広い業種で活用されています。
5.おわりに(活用にあたっての留意点)
補助金は、自社の経営課題や成長戦略に合った制度を選択・活用することが重要です。2026年度は制度の整理・統合が進む一方で、要件や運用は公募ごとに見直される可能性があります。
補助金の活用を検討する際は、必ず最新の公募要領を確認するとともに、早期に情報収集や当会の専門家への相談を行うことが、円滑な活用につながります。
※本記事は、2026年度に向けた制度動向を踏まえた一般的な情報提供を目的としています。実際の申請にあたっては、最新の公募要領等をご確認ください。













