『5S』その先にあるもの

中小企業診断士  猪野 保夫

 『5S』は『整理、整頓、清掃、清潔、躾』であることは現場を管理する人にとっては知らない人はいないと云っても良いほど知られた言葉です。そして『5S』を行うと儲かりますというキャッチフレーズで講座が開かれています。その儲かる理由は多くの講座では『探す時間が減る』『スペースが広がり運搬効率が良くなる』等目に見える効果を謳っています。そしてそのような状況を創り出す為の順序、手順が講座の中心となっています。確かに整理整頓を行えばその効果が生まれます。
5Sは現場から不要な物を『貯めない』が主流ですが不用品を『買わない』『造らない』事まで考えるとさらに大きな効果が期待できます。5S活動は先ず『不用品を貯めない』為に不用品を捨てることから始めます。そして残った必要な物をすぐ取り出せるよう整頓をします。そしてそれを維持する為清掃し清潔を保つことに傾注します。多くの企業の5Sはここまでですが5Sはこれからが本番です。不用品を『買わない』『造らない』活動に入らなければなりません。その為には何が不用品で何が必要品なのかの基準が必要です。これが曖昧だとせっかくきれいになった現場の中に不用品が貯まる結果になります。
では不用品とは何か、私は納入が決まった製品に使う材料、部品以外は不用品と考えています。来月注文されると考え買った資材、生産した部品は不用品です。このように決めると、不用品を無くすためには、注文を受けてから部品、材料を購入して生産すれば良いことになります。こうすれば現場には不用品は無くなり総量は減りますので整頓は非常に簡単になります。必要品の置場は生産ロット、使用ライン、機械ごとに分ければ良いことになります。極端にいえば資材倉庫は不要になります。運転資金も大幅に削減が出来ます。
これを実現する為には先ず資材の購入リードタイム、生産のリードタイムの現状確認を行う必要があります。発注をすればすぐ納入される資材が倉庫に眠っていないか、段取りに時間がかかる、面倒くさいという理由で必要以上に生産した物が在庫されていないかと調べることから始めます。あれば購入を止め、生産を止め、必要な時、必要な量を購入、生産する仕組みを作り、実行します。上手くいかなければ改善します。次に購入、生産のリードタイムを短縮する改善を行い、こうすることにより現場からさらに不用品が減ってきます。
その事例を紹介します。静岡県浜松市にあるOEM専門のオーディオ製品組立工場の組立ラインは5本あります。そのラインで使う製品梱包用ダンボール箱は同じフロアーにあるダンボール箱組立場で造っていました。箱の組立指示は、生産管理課が組立ラインの予定表を前日渡し、受け取ったダンボール組立場は4時間前位にダンボール箱を造ります。しかし当日になって組立ラインの変更が発生すると造ったダンボール箱は使われず、山と積まれ足場のない状態になることが日常茶飯事でした。結果作業者は箱を移動して通路の確保や倒れて不良になったダンボール箱の処分をすることが度々発生しました。係長が整理整頓しても組立ラインの変更があるとまた乱雑な現場になるといった状態でした。そこでこのような不要な箱を造らない為の改善を行いました。その方法は前日出していた予定表による生産指示を止め、1時間前に組立ラインから生産指示を出してもらう方法に変えました。その結果不要な箱は激減し、不要な箱の整理整頓は無くなりました。その結果生産性は向上、更に箱の不良もなくなりました。
しかし改善しても注文を受けてからでは間に合わない資材、部品は5~10%程度残ります。この資材は特別な管理をする必要があります。これは機会を改めお話をさせていただきます。

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