「会社はだれのものか?」改めて考えてみたい

中小企業診断士 沼田 和広

 6月の株主総会シーズンが終わりました。安倍政権の経済政策「アベノミクス」による「三本の矢」(金融緩和、財政出動、成長戦略)が、企業業績を後押しし、ITバブル期を超える株価上昇をもたらしています。このような状況の中、今年は経営目標にROE(Return on Equity:自己資本利益率)を掲げたり、配当性向や自社株買いといった株主還元を重視する企業が多かったように思います。背景としては、2014年2月策定の日本版スチュワードシップコードにより、機関投資家に投資先企業への経営監視強化を求めたり、議決権行使を投資家に助言する米ISS(インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ)が過去5年平均値と直近決算期がいずれもROE5%を下回る企業の経営トップ選任案に反対する方針を表明したこと等があるようです。

こういった状況を眺めると、「会社は株主のもの」という考え方が、(少なくとも上場企業においては)日本でも定着してきたように思います。しかし、日頃から中小企業と接している私には、この考え方に違和感を覚えます。企業が付加価値を生み出して事業を継続していけるのは、必ずしも資金だけではなく、従業員や取引先、お客様や地域といったステークホルダーの存在があるからではないでしょうか。

法政大学大学院の坂本光司教授は『日本でいちばん大切にしたい会社』の中で、会社は「五人に対する使命と責任」を果たすためにあると言っています。その五人を(重要な順に)挙げると、「社員とその家族」「外注先・下請企業の社員とその家族」「顧客」「地域社会・地域住民」「株主・出資者」ということになります。とりわけ、株主に対する使命と責任として、物的なもの(配当等の現金的な見返り)だけではなく、心的なもの(会社が、社会やかかわり合いのある総ての人々から尊敬され、愛されていること)も大切だと言っています。

株式の上場会社と非上場会社は違うということなのかもしれません。上場会社は、非上場会社に比べて、より株主を重視しなければいけないのは当然のことです。しかし、上場会社にも、社員や外注先、顧客や地域社会といった様々なステークホルダーがいるわけですから、それら全体のバランスをどうとるのかは大切なことではないでしょうか。現在の状況は、株主偏重のように思えてなりません。

昨年から今年にかけて、トマ・ピケティ教授の『21世紀の資本』が大きな話題となりました。フランス語原著は、950ページ以上の大著ですが、その本質を要約すると

r(資本収益率) > g(経済成長率)

という数式で表現できるそうです。株や不動産、債券等の資産によって得られる富の方が、労働等の経済活動によって得られる富よりも速く蓄積されるということです。その結果、格差の拡大を招くことになります。日本をはじめとした先進国で格差が拡大(二極化)していますが、これも全体のバランスを欠いた結果と言えるのではないでしょうか。

改めて、「会社はだれのものか?」を考えてみると、「ステークホルダーみんなのもの」と言えるのではないでしょうか。ステークホルダーのどれか一つを偏重するのではなく全体をバランスよく保つのが健全な姿なのではないかと思います。会社だけではなく、環境問題、国と国の関係、政治や地域社会といった様々な事象についても、全体のバランスが大切だと思います。でも、最近そのバランスが少しずつ崩れてきているように感じます。自分ではどうにもできないことが多いのが実際ですが、ひとり一人が、まずは自分の身近なところ、自分ができることから、バランスをとることを心掛けていくことが必要なのかもしれません。

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