大変化の時代に、どう備えるか〜今から5年先、10年先の会社の姿を考える〜

市川南

未曽有の人材確保難の時代の到来

先般、4月の有効求人倍率は1.48倍、何とバブル頂点の1990年7月を上回り、27年ぶり、と政府発表されました。失業率も、2月に2.8%と、22年8カ月来の記録的水準です。実感が乏しいというお感じもあるかと思いますが、マクロでみると、日本経済も長かったバブル後遺症や、急激なグローバル化で余儀なくされた調整期を漸く脱したかに見えます。

しかし、「アベノミックスの成果」や「内外景気の回復」などプラスの変化が喧伝される傾向がありますが、それはそれとして、これら労働指標の変化を冷静に見ると、「少子化による労働力人口減少」という、かねて指摘されてきた人口学的構造要因が顕在化しつつある、との強い懸念に思い至ります。

長いデフレが続き、とかく忘れられがちでしたが、急激な少子化により2005年には人口自然減に入り、2010年からは自然減は毎年20万人台が続きます。 また、労働力人口は、近年の女性や高齢者の労働参入率の上昇で相殺され、長期のデフレで求人数が減少していましたので、比較的目立たずに推移しましたが、この間、国全体でみると、労働投下の減少は、日本経済の低成長の看過できない要素となり、デフレ要因ともなってきました。このように、1998年以来続いている労働力人口の減少ですが、「失われた20年」の過程では、合計特殊出生率が低下したことで、加速度的に人口指標が減少する原因となってきました。

これが、2013年以来の経済回復による求人が急増する傾向の中で、一気に有効求人倍率は、V字型の回復をみせて、いつの間にかバブル期の水準を上回る記録的な有効求人倍率を将来したというのが実体と思います。しかも、労働力人口の減少は中長期の人口構造が背景にあり、今後加速することが確実で、都市部特有の現象から全国に、また、非正規から正規の求人に及んでいく兆しがあります。これが、経営改革に取り組める人材を、というと、さらに深刻です。

最近の各種の調査では、70%強の中小企業が深刻な労働力不足を訴え、業種ごと、業態ごとには、「人手不足倒産」の声すら聞かれるほどです。低生産性の脱却、高付加価値志向が待ったなしの課題でもあり、このように進行中の「人余り」から「人手不足」への急激な変化は、経営環境の「大変化」として、深刻にとらえるべきと思います。

100年に一度の「産業革命」に突入している

次に、「大変化」と言えば、数年前にドイツがIoT、Industry4.0として提唱し、今や世界に定着した感のある、来るべき大産業革命です。どのような革命かということですが、「IoT,AI,ビックデータに関する経済産業省の取組み 経産省2016年5月24日」から、注目有れるキーフレーズで分かり易く説明してみましょう。 すなわち、Industry4.0 とは、

「IoT、AI、ビックデータが融合して」、「森羅万象あらゆる情報が瞬時にネットワークに集まり、コストゼロで最適な資源配分を設計し、現実社会に反映し」「実現不可能と思われていた社会を実現可能とさせる」というもの。この大変化をもたらしている背景は、今起こっている「データ量の増加、処理性能の向上、AIの非連続的進展」、「IoT、AI、ロボット・・みんなつながる」、「データ駆動社会の到来・・あらゆる分野で壁が崩れる」云々です。・・・・

単なる、字面ではないことには、すでに、自動走行車、FINTEC、ビットコイン、スマートスピーカーなど、商品として多く登場し、これらの技術の先導企業の株価が暴騰しています。政府の30年度概算要求に向けた報道が賑やかですが、スマートモノづくり、自動走行、ロボット・ドローン、FINTECなど、つい最近話題に登場したのではといったテーマが具体の政策として乱舞しています。

ところで、つい最近のGoogleのAIソフト 「アルファ碁」が、何と、世界トップの3名人と対局して、立て続けに完膚なきほどに破った「大事件」もこれから起こる大変化の到来を端的に象徴しているように思われます。

Society 5.0と超スマート社会の到来

政府の総合科学技術・イノベーション会議で検討され、28年1月に閣議決定された第5期科学技術基本計画」が纏まり、世界に向けて提唱されました。第4次産業革命が、モノづくりにかたよったイメージが強いのに対し、これから起こる社会の大変化のインパクトをイメージするには、こちらの方がより分かり易いと思います。

この「基本計画」で、「狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続くような新たな社会を生み出す変革を科学技術イノベーションが先導していく」「超スマート社会」を提案しています。この社会の構造の大変化は「モノづくり」だけの問題でなく、農商工、流通サービス、交通教育などすべての社会事象に及ぶ大変革を伴います。どんな社会になるかをイメージする場合に大事なことは、あらゆる業界、しかも国境を越えて、既存の業種・業界の壁を壊しながら社会を巻き込み、熾烈な国際競争も伴いながら、とてつもないスピードで起こる変化だということです。

大変化の時代の経営を考える

仮に、「100年に1度の大変化」が迫っているとすれば、過去の延長での経営に止まっていては間違いなく時代に取り残されます。 この「大変化の時代」に、長期先のことを読み切るのは絶対に不可能でしょう。 かと言って、腕を拱いているわけにもいきません。

そこで、ご提案するのは、寸暇を利用し、ご自身で情報を収集し、強いて5年、10年という視野で、自社の経営環境変化をイメージしていただき、・・・・であれば、今何をすべきか、・・・・答えは、不断にご自身の「気づき」を書換え、蓄積することです。より鮮明な大変化の予測と対応の在り方が見えてくると思います。いくつかの、ポイントを述べたいと思います。

中長期の視点で、変化に聞き耳を立てる

2年後ではなく、5年、10年スパンで自社の将来を見据える視点が必要です。

大変化をテーマとする講演会、セミナーはあちこちで頻繁に開催されています。ネットでもいろいろな記事に出会えますし、ビジネス紙誌での特集も花盛りです。ここで、寛容なことは、中長期の視点で、属する業界や、取引先の業界、そして究極に自社のビジネスへの影響という観点で、得られた日々の気づきを整理することです。

ここで大事なことは、在来の産業、業種を超えて、それを破壊しながら起こる大変化に立ち向かわなければならないという意味で、同業者同士もさることながら、異分野、異業種の幅広い交流の場をできるだけ拡げ、情報交換することが大切だということです。

SWOTによる情報の整理

集めた情報の整理には、ご存知のSWOT分析の発想が役立つと思います。すなわち、大変化する内部環境と外部環境の中で、自社の「強み(S)」と「弱み(W)」が、どのような「機会(O)」と「脅威(T)」が生ずるか、どのように、Oを活かすか、Tをどう回避するか、TはOに変えられないか等々・・・連想でクロスする情報整理です。新しい情報はどんどん増え、自社にとっての影響の理解も当然変化し、深化します。

また、情報交換などで、別の解釈が生まれます。座右に置いて寸暇のできたときに書留めるご自分の「Industry4.0 Myノート」を工夫されることをお勧めします。

「改善・改良」でなく、「変革」

勿論、生産性向上、付加価値上昇、IT化・・は引き続き大事です。ただ、大変化の行方を読み取った「変革」「変わらなければ」を合い言葉とすべきではないでしょうか。あくまでも従来経営の延長ではなく、それを超えた「革新」を志向することが必要です。その意味で、早めの事業承継の検討着手、業界横断のM&Aなど変革の志向が決め手です。

「働き方改革」の方角は疎かにできない

勿論、成長を高め、雇用を維持するためにも付加価値経営に切替えていくことが課題です。この中でコストは大きな問題ですが、「大変化の時代」に生き残りをかける中堅・中小の企業におかれても、従業員の士気を高め、採用を促す「働き方改革」は大事です。少なくとも、人材を確保することが困難になる時代で、方角としては、自社の「働き方改革」の在り方を従業員と語り、課題を分かち合うことが大事だと考えます。

これから更に深刻化する労働需給逼迫と産業構造変化は、IoTやAIが齎す大規模な「雇用の喪失」で余剰分野からの転職者や、外国人参入など労働市場の激しい流動化をもたらします。その意味で新規分野に挑戦する企業の人材確保にチャンスで、「働き方改革」の方向の検討は必須の要件です。

ピンチはチャンス

大変化の時代は、時代を先読みできる経営者にとっては、大きなチャンスでもあります。情報化が益々進化する中で、広がるチャンスも是非ものにしていただきたいと思います

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