公的な経営相談窓口を活用しよう

杉野 眞

1.相談窓口とは?

昨今は、市場の動きか激しく事業環境変化が激しくなってきています。このような状況下で、中小企業や小規模企業の経営者の方が、事業を営むときに多くの課題解決や事業の方向性の判断などを行う必要が多々あると思います。この判断に悩むとき、どこに相談したり、支援を受けますか? 一般的には、取引がある銀行や信金が多いと思います。特に資金繰りや資金の融資が必要な場合は、まず、取引がある銀行や信金に相談し、支援を受けるのが手っ取り早い方法になると思います。

では、ほかの局面ではどうでしょうか。たとえば、独自製品を開発したい場合、新しい販路を開拓したい場合、生産性を上げたい場合、あるいは社内の組織を見直したい場合などは、銀行や信金だけでなく、いろいろな相談先が考えられます。たとえば、私的なコネクションのある同業者や、あるいは面識のある知人に相談して、意見を求めたり支援を受けたりする場合があると思います。

では、実際、どのような支援を受けたかの調査結果を見てみましょう。図1に企業の成長段階ごとの支援施策などを示します。

 

図1 高成長型企業が成長段階ごとに利用した支援施策等の内容

 

注1:2017年中小企業白書「第2-1-62図 高成長型起企業が成長段階ごとに利用した支援施策等の内容」を元に著者が作成した図です。

注2: (1)高成長型企業が成長期において、回答の高い上位5項目を表示しています。(2)複数回答のため、合計は必ずしも100%になりません。

 

図1から、一番多いのが経営相談で、企業の成長段階のどこでもトップになっています。

この経営相談を行っている窓口には、いろいろありますが、公的な経営相談窓口にはどのようなところがあるか見てみましょう。表1にその例を示します。

表1 公的な経営相談窓口の例

実施機関 概要 URL
公益法人

川崎市産業振興財団

川崎市中小企業サポートセンター

・総合相談

・窓口相談

・ワンデイ・コンサルティング

http://www.kawasaki-net.ne.jp/support-org.html
川崎商工会議所 ・無料法律相談

・無料創業支援

http://www.kawasaki-cci.or.jp/soudan/low.html
公益法人

神奈川産業振興センター

ワンストップ経営相談 http://www.kipc.or.jp/funding/one-stop_business-funding/
独立行政法人

中小企業基盤整備機構

経営相談

・インターネットでご相談

・電話でご相談

・対面でご相談

http://www.smrj.go.jp/consulting/index.html

注 平成29年8月25日現在の各ホームページ情報を参照

 

2.相談機関の具体的な内容

例として、「公益法人 川崎市産業振興財団」を見てみます。この財団の中に「川崎市中小企業サポートセンター」があり、「専門家や支援機関等とのネットワークを活用して経営課題解決にむけた専門家等の紹介、 ビジネスプランコンテストの開催、補助金等の情報提供などを行い、中小企業をはじめとしてNPO法人、起業家、創業希望者の皆様を支援します。」と活動内容を説明しています。このセンターの主な活動内容の概要を表2に示します。

 

表2 川崎市中小企業サポートセンターの活動内容

活動内容 事業概要 (注) 相談時間など (注)
総合相談 豊富な専門知識と実務経験に加え、幅広いネットワークを持ったプロジェクトマネージャーとマネージャーが、経営の改善や技術上の課題あるいは創業や起業に関する様々な問題に対して、総合的なアドバイスをするほか,コーディネーターとして関連機関の紹介や仲介なども行います。 週火・木曜日 9:30~12:00 13:00~17:00 ※要事前予約
窓口相談 経営、金融、技術、特許、法律問題など企業の個別な課題について、中小企業診断士、税理士、弁護士など各分野の専門家が無料でご相談に応じます。曜日ごとにご相談の対象分野が異なりますので、ホームページの日程表を参考にしてください。相談にあたっては事前予約が必要です。 平日の13:30 ~ 14:30、14:30~15:30、15:30~16:30 (各1時間)です。

木曜日のみ、13:00 ~ 14:00、14:00~15:00、15:00~16:00 (各時間)

ワンスデイ・コンサルティング 川崎市内に事業所がある中小企業者、または、川崎市内で起業される計画をお持ちの方の経営課題解決を支援するために、現地に専門家を派遣しています。(※実施件数に限りがあります。) 専門家を1から3回まで無料で派遣

派遣期間は、1日(2時間程度)

専門家派遣 中小企業者や起業家が直面する課題について、ふさわしい分野の登録専門家を一定の日数企業等に派遣し、問題点の解決を図るため実地に適正な診断・助言を行う「専門家派遣事業」を実施しております。専門家の派遣を受けるには、財団内マネージャー会議で、専門家の派遣が適当であると承認されることが必要です。 また、専門家の派遣を受ける際には、派遣に要する費用(専門家への謝金)の1/2にあたる受益者負担が生じます。 (※実施件数に限りがあります。) ・派遣回数は、1企業あたり半日(3時間)を単位に、12回まで

・平成29年度派遣先企業等を募集は、終了

注 平成29年8月25日現在の公益法人 川崎市産業振興財団川崎市中小企業サポートセンターのホームページより引用

(URL: http://www.kawasaki-net.ne.jp/support-org/sm_soudan.html

 

3.相談窓口の活用方法

相談窓口を活用するにあたって、どのようなことに注意をしたらいいのでしょうか。

(1)事前準備

相談窓口は、時間が限られています。有効に活用するためには、予約する前に相談内容を整理しておく必要があります。

たとえば、事業を営んでいれば、

  • 自社の事業概要を簡単に説明できるようにしておく
  • 事業をどうしたいのか(事業計画、売上計画など)
  • いま困っていることは何か明確にする(課題を明確に)
  • これまで何をしてきたか?その結果は、どうなったか何をどのようにしたいのか
  • どのぐらいの期間で問題解決を行いたいのか
  • 用意できる資金は、どのぐらいか
  • 借入などの場合は、どのぐらいの資金が必要で、何に使用するのか

など、相談内容に沿った準備をしておく必要があります。

また、創業などでは、

  • 創業するにあたって何を知りたいのか、何が不安なのか
  • 創業の動機、目的
  • どのような事業をしたいのか
  • 事業計画は

特に、夢でなく実際に開業した場合、うまくいった場合、及びうまく行かなかった場合どうなるかをシミュレーションしておく。

  • 売上、利益、仕入れ先、販売先を明確にする。また、その準備状況をまとめておく
  • 今までの業務経験や学んできたことを整理しておく

特に、創業では過去の経験が重要です

  • 必要な資金額
  • 資金調達先、準備できる金額

などの準備をした方がいいと考えます。

どちらの場合も、窓口での相談時間がかぎられているため、内容を紙(または電子データ)にまとめ、準備しておきます。まとめることで、自分自身の整理にもなります。

(2)予約

公的な相談窓口は、予約制になっているところが多いです。また、内容により曜日や時間が異なっています。相談にあたっては、希望する窓口に予約をいれる必要があります。

(3)相談

相談内容とアドバイス結果をメモに残しておきます。

(4)相談後

相談を有効にするため、相談中に取ったメモや、アドバイスから考えた活動内容を整理し、その内容に優先度を付けておきます。優先度は、活動しやすさでなく、活動によって得られる効果を元に付けます。

このようにすることで、相談窓口で有効なアドバイスを受けられます。さらに、優先度に沿った活動をすることで、短い期間で効果を得ることができ事業の発展につながると思います。

 

4.その他

川崎市中小企業診断士クラブでは、川崎市中小企業サポートセンターの相談窓口やワンデイ・コンサルティングなどの事業に協力をしております。是非とも川崎市中小企業サポートセンターの活用をお願いします。

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