近時注目の民法改正について

丸山 幸朗

第1 はじめに

私人間の法律関係の最も基本的なルールである民法について、近年重要な改正がなされております。ビジネスでの契約関係に直接関わる債権法のみならず、事業承継にも一部関連のある相続法の改正については、中小事業者ないしその支援にあたる中小企業診断士としても気を配っておく必要があると考え、この度の記事として要点をまとめさせて頂きました。

第2 債権法改正について

昨年、民法典の債権法改正が約120年ぶりになされ、3年以内に施行される予定であることは、新聞報道等でもご承知の方も多いかもしれません。今一度、以下の通り特に重要なポイントを指摘しておきたいと思います。

1 約款について

企業は、契約締結にあたって、取引条件をあらかじめ定めた「約款」を用いることがありますが、画一処理、コストの削減にも資する一方、約款の存在や内容について十分な認識なく契約をした相手方とトラブルになることも有りました。

そこでまず「定型約款」を定め、定型約款が契約の内容になるための要件、定型約款の内容の表示(開示)に関する規定、不当条項・不意打ち条項規制に関する規定、約款を相手方との合意なく変更するための要件などを定めました(改正法548条の2~4)。

今まで取引先と締結していた契約書について、約款添付のものがある場合には、自社作成のものであれ相手方作成のものであれ、これらの条項に照らして適切であるか確認の上、修正が必要になることがありえます。

2 法定利率について

従来は、契約で定めが無い場合に適用となる法律上の利率は、民事法定利率5%、商事法定利率6%の固定でしたが、低金利時代にそぐわない状況となっておりました。そこで市場における変動を反映するため、3年ごとの「変動制」に変更となりました。また商事の特則も廃止し、統一的な利率が適用される(当初は年3%の予定)ことになりました(改正法404条)。

既にある契約書の中で利率の約定がある場合は、そのまま有効になりますが、そうではない場合、適用となる法律上の利率の考え方が変わりますので、ご留意ください。

3 時効について

従来は債権の種類に応じてバラバラでしたが(例えば売掛金、職人の報酬債権は2年、工事業者債権は3年など)、原則的な時効期間が整理されました。一部の例外を除き、債権者が権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)から5年、権利を行使することができる時(客観的起算点)から10年として統一されています(改正法166条1項1~2号)。

これによって、中小事業者が請求する債権の時効期間は一般的には5年となりましたので、期間が伸長したと評価することが出来ますが、債権回収は長期になるほど難しいことが多いので、現在同様できるだけ早く解決を図ることが肝要であることに変わりはありません。

4 保証について

従来もその苛烈な責任の制限を図るため、書面による保証を必要とするなど改正がなされていましたが、さらに一歩進めて、根保証に関する規定の対象を個人根保証契約に広げること、保証人への情報提供のルールを設けること、事業のための債務について個人が保証人になる場合は公正証書によることなど、新たな規定が設けられました(改正法465条の2~ 465条の10)。

5 その他について

その他、売買や請負の担保責任の規定の整理や、賃貸借の敷金ルールの明文化など多くの改正が施されております。その結果、従来契約締結にあたって提示し、提示されていた契約書の書式、ひな形が改正後の条項に沿わない事態が多々発生すると思われます。改正民法施行前に改正法に対応するべく、書式等の見直しを今のうちから準備をしておくほうが良いかと思います。

第3 相続法改正について

高齢化社会の進展に伴い、配偶者の保護など時代にあった相続の仕組みとすべく、本年7月に民法典の相続法改正が約40年ぶりになされました。経営者と信頼関係が深まるにつれ、経営する事業そのもののみならず、それを取り巻く家族の関係についても話題になることがありえますので、概要を知っておくに越したことは有りません。年明けから施行のものもあり注意が必要です。

1 配偶者居住権の保護について

自宅不動産に関する権利について「所有権」の他に「配偶者の居住の権利(配偶者居住権等)」を創設し,配偶者が自宅を相続しなくとも,相続発生時に被相続人の住居に同居していた場合に無償でその居住していた建物の全部について使用及び収益する権利を取得することができる、などの改正がなされました(改正法1028条~1041条)。

中小事業者は奥様との二人三脚で経営していることも多いので、一つの話題として抑えておきましょう。

2 自筆証書遺言について

作成者の便宜のため、財産目録の部分に関しては、パソコンやワープロ等による記載も認められるようになりました(改正法968条2項)。

また法務局での遺言書の保管が可能となり、その場合は家庭裁判所の検認手続が不要となりました(「法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)」)。

3 遺産分割について

預貯金債権も最高裁判例の変更により遺産分割の対象となりますが、各共同相続人は、遺産分割前でも一定の範囲で預貯金債権の単独での権利行使が認められることになりました(改正法909条の2)。

遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても,処分した相続人を除く共同相続人全員の同意により,当該処分された財産を遺産分割の対象に含めることができることになりました(改正法906条の2)。

4 遺留分について

遺留分減殺請求権の金銭債権化(改正法1046条1項)、遺留分侵害額の算定方法の明文化(改正法1046条2項)、遺留分額算定の基礎となる財産(10年以上前の生前贈与)の制限(改正法1044条3項)、の改正がなされました。

事業承継の促進を図るため、対象会社株式についての除外合意等の特例や税制改正がなされていますが、それ以外に遺留分自体についても改正がなされていることは、念のため確認しておきましょう。

5 特別寄与者の保護について

相続人には当たらないものの、一定の貢献をした被相続人の親族を「特別寄与者」とし,相続人に対して寄与に応じた特別寄与料の請求を認める旨の改正がなされました(改正法1050条)。

 6 施行時期について

1は公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日、2の前者は、公布の日から起算して6か月を経過した日、後者は公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日、3~5は公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日に、それぞれ施行されます。

第3 最後に

以上、概括しましたが、私人間の関係を規定する民法の改正は、トピックとして最低限の内容はおさえておくことが、円滑なコミュニケーションに資すると考えられます。ご参考になれば幸いです。

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