大廃業時代と中小企業庁の「事業承継5か年計画」について

平田 仁志

最近、大廃業時代という言葉がマスコミにしばしば登場するようになってきました。例えば2019年10月6日にはNHKスペシャル「大廃業時代~会社を看取(みと)るおくりびと~」 が放映されました。この番組では廃業を専門とするコンサルタントを「おくりびと」として紹介していました。また、ダイヤモンド社のダイヤモンドセレクト2018年12月号は「トラブルを回避して大切な資産を守り続けるヒント 相続&事業承継決定版」というタイトルで、この中に「大廃業時代の危機 2025年、中小企業が半減する」という記事が掲載されています。その他に日経新聞などにも特集記事が掲載されています。

このトピックスでは、まず、なぜ大廃業時代と言われているのか、どんな状況なのかを確認したうえで、中小企業庁が平成29年7月に出した「中小企業の事業承継に関する 集中実施期間について (事業承継5ヶ年計画)」により、国が事業承継推進に向けてどのような施策を取ろうとしているか、その計画に基づいて何がどうなったかについて述べてゆきたいと思います。

このトピックスが、中小企業経営者の皆様に自社の事業承継を考えていただくきっかけになれば幸いです。

1. なぜ大廃業時代と言われているのか

次のグラフをご覧ください。

(出所)(株)帝国データバンク「COSMOS2企業概要ファイル」再編加工

このグラフは中小企業庁が平成29年7月に発表した「事業承継5か年計画」に掲載されたものです。ここで分かることは中小企業の経営者の世代交代が進まず、経営者年齢の山が20年間で約20歳高齢化し、この時点で66才になっていると言うことです。大体経営者の引退時の平均年齢は70歳なので、これから多くの経営者が引退していく時期となっています。

平成29年に経済産業省が発表した資料によれば、今後10年の間に、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万(日本企業全体の約3割)が後継者未定である、と書かれています。最初に上げたマスコミの記事は、この推計を基に大廃業時代と書いているのです。

実際、2019年版中小企業白書によると、すでに毎年の休廃業・解散件数は次の表のように増加傾向にあり、2018年で46千社に達しています。

(出所)(株)東京商工リサーチ「2018年「休廃業・解散企業」動向調査」より再編加工

このままいくと、中小企業廃業の急増により、2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性があり、今後10年の集中的な取組が必要である、とされています。(「中小企業・小規模事業者の生産性向上について」平成29年10月経済産業省)

更に見ていくと、この127万社の内約5割が黒字と書かれています。また、廃業を予定している企業の廃業理由を見ると約3割は後継者がいないため、つまり後継者がいれば事業を継続したい、となっています。

10年以上前から事業承継が問題になると予想し、様々な施策を講じてきたのに、このような状態なので、何とかしなくてはいけない、ということで中小企業庁は平成29年7月に「事業承継5か年計画」を発表したのです。

2. 「事業承継5か年計画」について

 以下では、平成29年7月に出された中小企業庁の「中小企業の事業承継に関する集中実施期間について (事業承継5ヶ年計画)」により、計画の要点を書いていきます。

 この計画は今後5年程度を集中実施期間としています。すなわち平成29年(2017年)から5年間ですから令和4年(2022年)までの5年間です。現在は発表されてから約2年半が経過した、ちょうど折り返し地点と言えます。

 この計画に基づいてさまざまな施策が実行されています。それぞれの内容について詳しく書くことはできませんが、以下に列挙しただけでも、かなり広範囲にわたる施策が計画されているとご理解いただけるものと思います。

① 経営者の「気付き」の提供

  • 5年間で25~30万社を対象に、相談に来るのを待つのではなく対象企業をリストアップして訪問し事業承継診断を実施。

② 後継者が継ぎたくなるような環境を整備

  • 後継者が無理なく事業を引き継げるよう、経営改善支援を強化する
  • 事業承継税制の利用条件を緩和して更なる活用を図る。

③ 後継者マッチング支援の強化

  • 事業引継ぎ支援センターを強化すると同時に、M&A情報の開示範囲の拡大等を実施

④ 事業からの退出や事業統合等をしやすい環境の整備

  • 中小企業の事業再編・統合・共同化を促進する制度的枠組みの検討。

⑤ 経営人材の活用

  • 経営スキルの高い人材の後継者不在企業への参画を促進するための人材紹介会社と事業引継ぎ支援センターとの連携。

3. 事業承継5か年計画発表後の事業承継関係の動き

 事業承継5か年計画が実行された後の主な動きを、具体的に見ると以下のようになっています。

  1. 平成30年税制で事業承継税制が抜本的に拡充されました。その結果、それまで年間400件程度だった申請件数が約6,000件にまで増加しています。(この税制の特例を受けるための申請の期限は令和5年3月31日となっています)
  2. 事業引継ぎセンターの支援件数が増加しています。平成30年度までの支援件数は約37千件に達しています。
  3. 中小企業のM&Aが増加しています。平成30年版中小企業白書によると「我が国企業のM &Aの件数について(株)レコフデータの調べによると、2017 年に3,000 件を超え、過去最高となっている(第2-6-6 図)。あくまで公表されている件数となるが、我が国におけるM&Aは活発化していると推察される。」とされています。中小企業のM&Aを専門にする会社も大手企業の子会社を始めとして増加しています。
  4. 事業承継についての考え方を変える提案がされています。 事業承継をするかしないかという枠組みで考えるのではなく、経営資源を引き継ぐか、引き継がないかという視点が2019年中小企業白書で示されています。下図をご覧ください。廃業する場合でも、経営資源については引継ぎをするようにして、経済への打撃を小さくしましょうと言う提案と理解します。
(出所)2019年 中小企業白書

以上「大廃業時代」という最近のトピックを取り上げて書いてきました。詳細な説明を書くことができませんでしたが、概要についてだけでもイメージをお持ちいただけたら幸いです。事業承継は個々の企業にとって大問題であるだけでなく、日本経済全体にとっても大問題です。

経営者の皆様が、自社の経営資源を引き継いでいくために何が必要か、どうしたらよいか、この5年間の集中実施期間の間に、早めに検討されることをお勧めします。

経営資源の承継や事業承継について、知りたいことや相談したいことがある方は当診断士会にご相談ください。

関連記事

Archives

  • 2019 (27)
  • 2018 (29)
  • 2017 (40)
  • 2016 (41)
  • 2015 (30)
  • 2014 (24)
  • 2013 (25)
  • 2012 (18)
  • 2011 (12)
  • 2010 (12)
  • 2009 (4)

Change Language

会員専用ページ

ページ上部へ戻る