10月1日から「労働者派遣法改正法」が施行されました

 

松井利夫

 労働者派遣については、2008年の金融危機で表面化した「派遣切り」問題で、社会問題化したことをきっかけに、法律の改正を検討していたが、平成24年4月6日に「労働者派遣法改正法」が交付され、10月1日に施行された。

労働者派遣事業は、常用労働者のみ派遣する「特定労働者派遣事業」と、それ以外の登録型派遣労働者を派遣する「一般労働者派遣事業」の二通りがある。平成22年に民主党が提案した改正案では、常時雇用する労働者でない者については労働者派遣を行ってはならないとしていたが、「登録型派遣の在り方」、「製造業派遣の在り方」などを検討事項とすることで、今回の改正では見送られている。

改正法の特徴は、法律の名称が変わり、派遣労働者の保護のための法律であることが明確になったことである。主な改正点は次の通り。

1.事業規制の強化

①日雇派遣(日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者派遣)の原則禁止。

②離職した労働者を離職後1年以内に派遣労働者として受け入れることを禁止。

2.派遣労働者の無期雇用や待遇の改善

①派遣元事業主に、一定の有期雇用の派遣労働者につき、無期雇用への転換推進措置を努力義務化。

②派遣料金と派遣労働者の賃金の差額の派遣料金に占める割合(いわゆるマージン率)などの情報公開を義務化。

③雇入れ等の際に、派遣労働者に対して、1人当たりの派遣料金の額を明示。

3.違法派遣に対する迅速・的確な対処

①違法派遣の場合、派遣先が違法であることを知りながら派遣労働者を受け入れている場合には、派遣先が派遣労働者に対して労働契約を申し込んだものとみなす。

②処分逃れを防止するため労働者派遣事業の許可等の欠格事由を整備。

派遣会社や派遣先が特に注意して欲しいことは、

(1)雇用期間が30日以内の労働契約の時は認められないことであるが、ただし、以下の場合は、30日以内の日雇派遣が認められる。①禁止の例外として政令で定める業務(例えば、ソフトウエア開発、機械設計、研究開発、財務処理など)について派遣する場合。②以下に該当する人を派遣する場合。(ア)60歳以上の人、(イ)雇用保険の適用を受けない学生、(ウ)副業として日雇派遣に従事する人、(エ)主たる生計者でない人。

(2)離職後1年以内に、派遣労働者として元の勤務先に派遣することを禁止。ただし、60歳以上の定年退職者は例外として除かれる。

(3)インターネットなどで派遣料金、賃金、マージン率を知ることが出来るように情報公開しなければならない。

(4)派遣会社は、必ず派遣労働者に待遇に関する事項を説明すること。

労働契約を結ぶ前に、(ア)雇用された場合の賃金の見込み額や待遇に関すること、(イ)派遣会社の事業運営に関すること、(ウ)労働者派遣制度の概要。

(5)派遣先の社員との均衡(賃金など)を配慮すること。

今回の法律改正は、中小企業経営者にとっても厳しい規制を伴うものであるが、「労働者派遣法改正法」の主旨を正しく理解して上手に活用することを期待する。

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