「Z世代」から見えてくる世の中の変化

中小企業診断士 古山 亮一

1.はじめに

「今どきの若者は・・」という年長者の嘆きの言葉は、今に始まったことではありません。遡れば、徒然草や一説では5千年前の古代エジプトの壁画にもこのような嘆きの言葉があったようです。新人類やバブル世代、ゆとり世代など若者が○○世代と定義付けられるたびに、「若者が何を考えているかわからない」という文脈で語られてきました。しかし、最近「Z世代」と呼ばれる若者に対しては、上の世代の「若者がわからない」の度合いが強くなっているように感じます。

今、Z世代が大学を卒業し、新入社員として企業に入社し始めています。ここで、Z世代の特徴を踏まえ、新入社員としてのZ世代とどうコミュニケーションすればよいか、また、マーケットとしてのZ世代と世の中の変化について考えてみます。

2.Z世代の特徴

Z世代とは、1990年代中盤から2010年代のはじめに生まれた世代を指します。彼らの特徴はデジタルネイティブであることです。生まれた時からデジタル技術やインターネットが既に普及した環境で育っており、オンラインでのコミュニケーションやソーシャルメディアの利用にも熟練しています。原田曜平氏の著書、「Z世代 若者はなぜインスタ、TicTokにハマるのか?」によると、スマホ第一世代である彼らは「いいね」が欲しい、自己承認欲求、発信欲求の強さが特徴であると説明しています。逆に弊害としては、スマホ以外のメディアに触れておらず、パソコンが使えない、紙の新聞を読んだことがないという人もいるようです。

彼らは好景気と少子化による人手不足により、競争の少ない環境で育ってきました。そこで自分時間を大切にしてほどよく無難に生きる、マイペース重視で居心地よく過ごす、つまり「まったり」を好みます。ワークライフバランスを重視し、プライベートを重視します。しかし、仕事に対してやる気がないわけではなく「自己実現」「自分らしさの発揮」、そして社会貢献につながる仕事には熱心に取り組みます。

その他の特徴としては、

  • 失敗を恐れる
  • 万能感と脆さを併せ持つ
  • 多面性を持ちマルチタスク
  • 社会正義に対する関心が高い

 などがあります。

3.Z世代とのコミュニケーション

では、新入社員としてZ世代とのコミュニケーションで気を付けるべきことは何でしょうか。それは、「価値観を押し付けてはいけない」ということです。価値観の押しつけは相手の価値観を否定することです。会社や上司と「価値観が合わない」と感じた彼らは、我慢をすることなく会社を辞めてしまいます。

自己承認欲求が強く失敗を恐れる彼らに有効なのは、否定せず受け入れることです。「認めて、受け入れる」そして、積極的に「ほめる」ことです。「いいね」が欲しい、自己承認欲求が高い彼らは、「ほめられる」ことがモチベーションアップに繋がります。上司は、1on1ミーティングなどを行い、時間をかけて丁寧に話を聞き、指導することでZ世代の個性や価値観を認めることが大切です。

4.マーケットとしてのZ世代 

次に、マーケットとしてのZ世代を考えます。少子高齢化が進む日本ではZ世代の人口は全体の15%ほどです。まだ、市場にインパクトのあるほど割合が高いとは言えません。しかし、Z世代の定義は世界共通ですので、世界の市場全体を考えるとZ世代は人口の30%を超えています。その割合は年々高まっていきます。アメリカではZ世代の心を掴めない企業は淘汰されてしまう時代になっています。日本でもそう遠くない将来、Z世代がマーケットの主役になるでしょう。ここで注意したいZ世代の特徴は「社会正義への関心の高さ」です。SDGsや多様性、ジェンダー平等などに関する対する関心が高いことです。気候変動や貧困、格差、健康、教育、男女の平等、性的ハラスメント、LGBTQ+、ダイバーシティなどの社会課題を自分たちの力で変えていきたいと思っています。企業にも社会課題への取り組みや姿勢を明確にすることが求められます。

5.Z世代の価値観の変化は、社会の変化を反映したもの

Z世代と上の世代の価値観の乖離が大きくなった原因は、社会の変化が大きかったことが原因であるといえます。スマートフォンの普及やYouTubeなどによる動画シェア、デジタル化やコミュニケーションツールの変化が大きかったことだと考えられます。また新型コロナウイルス感染症によって世の中はさらに大きく変化し、コミュニケーションツールも大きく変化したことから、価値観の変化はさらに起こるものだと考えられます。この変化にしなやかに対応しているのがZ世代です。Z世代を知り、Z世代の心をつかめるように企業も変化する必要があります。Z世代と距離を取るのではなく、彼らを理解し、リスペクトし、企業自ら変わることが、これからの世界を生き残る方法であると思います。

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