さがみはらリニアひろば見学記

中小企業診断士・技術士(情報工学、総合技術監理) 嶋田 弘僧

今般、NPO法人かわさき技術士センターが主催する「さがみはらリニアひろば見学会」が開催され、川崎中小企業診断士会より入谷前理事長はじめ3名が参加しました。

かわさき技術士センターは、財団法人川崎市産業振興財団中小企業サポートセンターに専門家として登録している技術士が集まり、2002年に発足した「かわさき技術士クラブ」を前身として、2012年5月に設立されたNPO法人です。私ども川崎中小企業診断士会とは、市内の中小企業の成長・発展や地域経済の活性化に貢献するという点で目的を同じくしており、それぞれが専門性を活かした中小企業支援を行っています。かわさき技術士センターでは定期的に工場や研究施設などの見学を行うなど、技術・経営等に関する情報収集と研鑽に努めておられます。

かわさき技術士センターについて;
https://www.kawasaki-shindanshi.jp/2023/01/angle-160/
https://www.n-kgc.or.jp/

「さがみはらリニアひろば」は、リニア中央新幹線神奈川県駅(仮称)の工事現場内に作業状況や工事現場の様子を一望できる場所として、令和6年6月にリニューアルオープンしました。JR橋本駅南口から徒歩3分程度のところにあり、開園日は、毎週金曜日および第1、第3、第5土曜日の午前10時から午後4時までです。
トンネル建設の工事現場を見ることできるほか、シールドマシンやハニカムセグメントなどの展示物、説明パネルも充実しています。

「さがみはらリニアひろば」について
https://company.jr-central.co.jp/chuoshinkansen/efforts/kanagawa/_pdf/kanagawa-office-info16.pdf

(1)入口から工事現場
工事現場は白い塀に囲まれ、その一角に入口があります。砂利が敷き詰められた坂を上っていくと、視界が開け、広場に出ます。フェンス越しにクレーン車など工事車両が働いているのが見えます。

(2)シールドマシン
シールドマシンは、シールドトンネルを掘る機械です。カッターヘッドと呼ばれるマシン前方の円盤で土砂を削り、スクリューコンベアと呼ばれるワインのコルク抜きのような機械でシールドマシン内に土を取り込み、同時にトンネルの壁(セグメント)を組み立てます。
崩れやすい地盤や地下水位の高い地盤においても安全にトンネルを掘ることを目的とした機械で、築造するトンネルの形状や地質に合わせて製作されます。
展示されているのは、実際に用いられるカッターヘッドの一部です。

(3)ハニカムセグメント
シールドトンネルは、工場で製作されたブロック状のセグメントをシールドマシンの中で組み立て、トンネルの外壁を築造します。第二首都圏トンネルで用いられるセグメントは六角形のハニカムセグメントと呼ばれる形式のセグメントです。ハニカムセグメントはトンネルの外壁材として優れた力学的特性を持ち、また通常のセグメントに比べてコストダウンが可能です。
展示されているセグメントは、実際に第二首都圏トンネルで使用されるセグメントの強度補強試験用に試作されたものです。

(4)ベンチ
第二首都圏トンネルは、神奈川県駅(仮称)西端部から相模川までの区間のトンネルです。このベンチは、第二首都圏トンネルの実際の大きさを再現したもので、ベンチにはトンネルの外壁となるセグメントと同様のものを使用しています。円形のベンチの真ん中に列車の絵が描かれていて、神奈川県駅(仮称)から第二首都圏トンネルを望んだ場合、左側の列車が名古屋方面、右側の列車が東京方面に走行します。トンネルの大きさが実感できます。

(5)リニア中央新幹線「神奈川駅(仮称)」
広場からフェンス越しに、リニア中央新幹線「神奈川駅(仮称)」の開削工事現場を見ることができます。広場には駅の全体平面図と断面図が掲示されています。それによると、駅部は延長約680m、最大幅50m、深さ約30mの大きな地下構造物で、2面のホームと、4本の線路が備えられます。
広場は高台にあるので、眺めは抜群です。周辺のマンション群や京王電鉄やJR横浜線の電車が走る様子もよく見えます。

(6)説明パネル
工事の経過や他県の工事の状況の写真を貼った説明パネルがあり、工事の全容が把握できます。
1)工事の経過
神奈川県駅(仮称)に関して、2019年の工事開始前の様子、2021年度上期から2024年度上期までの工事状況の写真がパネル展示されており、工事の進捗状況や周りの様子の変化がよくわかります。
2)他県の工事
他県における駅(岐阜駅、名古屋駅、長野駅)や橋梁やトンネルの工事の写真が展示され、各所で工事が進んでいることがわかります。

(7)川崎市内の工事
さがみはらリニアひろばには展示はありませんでしたが、川崎市内では下記の工区で工事が進んでいます。
1)第一首都圏トンネル(梶ヶ谷工区)
等々力非常口~梶ヶ谷非常口~犬蔵非常口~東百合丘非常口までの11.8kmの区間
梶ヶ谷非常口からシールド機が発進し、東百合丘非常口に向けて掘り進み、11月17日時点で梶ヶ谷非常口から約3.7km地点(宮前区犬蔵2丁目付近)まで進んでいます。
2)第一首都圏トンネル(東百合丘工区)
東百合丘非常口~片平非常口までの4.2kmの区間
東百合丘非常口からシールド機が発進し、片平非常口に向けて掘り進み、11月17日時点で東百合丘非常口から約1.5km地点(麻生区王禅寺西5丁目付近)まで進んでいます。

(8)見学を終えて
さがみはらリニアひろばでは、シールドマシンやハニカムセグメントの展示やトンネルの実際の大きさを再現したベンチなどから、トンネルの大きさを実感することができました。工事の現場を見ることで最新の技術を活かして実際に工事が行われていることを、また、説明パネルにより各所で工事が進んでいることを知ることができました。しかしながら、開業時期が2034年以降になると報道されており、実際に乗れる日が待ち遠しく思います。

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