2022年度の日本経済 ~コロナショックからの本格回復を期待~

中小企業診断士 市川 南

4月から2022年度の幕開けとなります。何とも厄介な新型コロナウイルスに振り回され続けて2年を過ぎました。ここで、2021年度の日本経済を振り返りますと、輸出産業を中心にコロナショックでの急落を埋める力強い回復が見られた一方で、年明以来続いた緊急事態宣言、蔓延防止など自粛、自粛を強いられた巣ごもり行動制限の関連で、飲食、宿泊、運輸、エンターテンメント、イベントなど幅広い分野で、その影響は甚大でした。

また、巣ごもり特需に恵まれた自動車、家電などですらも、サプライチェーンの混乱などによる生産先送り、そして期待したオリンピックの無観客開催などにより、総じて景気は“一進一退”の大変な一年だったように思います。

それでも、医療崩壊寸前までの猛威を振るった第5波が、秋口に入り摩訶不思議の収束に向かったことで、街角景気に一気に活気が蘇りましたが、それも束の間、年の瀬にはオミクロン株の感染爆発と黙阿弥となってしまいました。

さらに、30年ぶりと言う世界的なインフレの進行で、日本でも企業物価指数や諸物価の高騰が襲いますが、米国FRBなど金融緩和縮減を大幅に前倒すリスクなど、世界景気への楽観を戒める声も高まっています。そこで、4月から新年度を迎えるにあたり、多くの経営者の皆様方が注目する、新年度の日本経済の見通しについて解説したいと思います。

また、100年に一度と言われる大疫病との闘いの中でもあり、知っておきたい、世界の識者が挙げる、 “2022年の世界のリスク”について、各種のレポートや、報道番組などでの発言を整理してご紹介したいと思います。

2022年度の経済成長率の見通し

年末年始には、各種調査機関やエコノミストが、一斉に2022年の日本経済の見通しを掲げています。ざっくり、前年に続き、消費や投資も正常化に向かい、GDPが年内にコロナショック後の水準を回復する、など前年に続いて“コロナショック“の激減を埋める、強い景気回復の見通しとなっています。

さて、昨年末に、2022年度の日本経済について、恒例の政府見通しが国会に提出されました。これによると、2022年度の実質GDPは2021年度の2.6%に対し3.2%としています。また、昨年末の日経新聞の調査によると、民間調査機関18社の予測の実質GDP平均は3.0%、また、名目GDP成長率は3.6%となっており、基調は変わりません。

いずれにせよ、V字回復には程遠いものの比較的順調な回復が見通されています。また、その中味も個人消費は、政府見通しで4.0%(日経調査による民間平均3.2%)の増、設備投資は5.1%(同4.4%)の増ですから、ここからも、コロナショックからの順調な回復が見えてきます。さらに、この政府見通しで、先送りになっていたコロナ前のGDP(2019年度)水準への回復時期が2022年1Qとなっていることも、区切りとして大きな朗報と言えます。

さて、ここで見落としてならないのは、マクロの日本経済では順調な回復が期待されるのに対し、コロナ自粛で長く事業機会を奪われ続けてきた、飲食、宿泊、運輸、娯楽、イベントなど幅広い業種に属する事業者の多くが、未だ回復の手がかりも見えない深刻な状況にあることです。国、自治体を挙げた、きめ細かい状況把握に基づいた、目配りのある対応が不可欠です。

また、米国や一部欧州などV字に近い回復の国々との比較で見るとき、日本経済の回復ペースの相対的な遅れは歴然ですが、彼我の生産性の格差に起因するところが大きいと考えます。ここは、是非とも「成長と分配の好循環」を掲げる岸田新内閣に、「失われた30年」と揶揄される低成長体質を脱するような、国を挙げた本格的な成長戦略への取り組みに期待したいところです。

日本経済に波及しかねない世界のリスク 

最後に、年末年始の多くの調査機関やエコノミストのレポートや正月番組で頻度高く挙げられた“世界のリスク”について、日本経済に重大な影響を及ぼす可能性に重点をおいて、整理したいと思います。世界の経済はますます一体化が進み、連鎖しあう時代です。普段に国内外の情報に深い関心を寄せるとともに、いざという時の危機管理への備も大事になってくると思います。

1.新たなコロナ変異株の猛威

オミクロン株の感染爆発は猛烈ですが、今後も新たな強力変異種による災禍も心配です。行政の普段の備えと迅速な状況対応が求められますが、同時に、経済社会を窒息させることのない、賢明なバランスも問われます。

2.米国の金融緩和縮減スケジュールの前倒し

世界で進行中の高インフレに対処するため、米国FRBは昨11月来のテーパリングから、段階的利上げ、資産縮小へと、想定を上回る前倒しの金融引き締めへの政策転換が見込まれています。絶好調だった米景気の下振れと同時に、新興国経済、通貨など世界経済への大きな影響が懸念されます

3.中国経済の減速とバブルの顕在化

習近平政権の3期目の決着か注目される中、「ゼロコロナ」のウイルス殲滅作戦、不動産市場の急冷、一連の国内引き締め強化など、中国経済の下振れやサプライチェーン混乱による世界経済へのリスクが指摘されています。

4.インフレ・資源高の長期化

原油・天然ガスなどエネルギー価格は高騰を続けますが、背景には過去の先行投資不足や、世界的脱炭素政策の加速による集中的なエネルギー転換の影響など複雑なものがあり、この先もインフレが長引く懸念が強くなっています。地政学的リスクによる緊張の高まりが加速する側面も懸念されます。

5.異常気象の深刻化と食品価格の高騰

世界的に干ばつ、洪水、ハリケーンなど異常気象の多発が見られ、とくに穀物減収による食糧不足、価格高騰により、新興国などで暴動など政情不安を招く兆しがあります。米国発の急激な金融引き締めで、“カラー革命“を誘発する懸念が指摘されます。

6.世界の主要国で膨張する債務残高 

米欧など主要国や新興国の多くで急激に債務残高の膨張が加速し、この過程で、金融、不動産、資源など、資産バブルの兆候が見られます。世界の金融システムの崩壊に至らないよう国際協調や正常化への取り組みが急がれます。

7.地政学リスクの噴出

テロ、暴動、軍事衝突など、「地政学的リスク」が年々深刻化していますが、とくに長期化するコロナ禍害が事態を悪化させないか懸念されます。キーワードで、世界の識者が挙げる「地政学リスク」を列挙します。
(1) 米中(ウイグル/香港・人権・ハイテク・台湾海峡・東シナ海・南シナ海)
(2) ロシア・NATO(ウクライナ国境の緊張・東欧・バルト・天然ガス)
(3) 中国内政(習近平政権3期目・権力集中批判・成長鈍化・国内引き締め)
(4) イラン・中東(イラン制裁・宗派対立・エネルギー安保・地域紛争)
(5) 北朝鮮・朝鮮半島(経済停滞、核・ミサイル・不透明な政権指導部事情)
(6) 米国中間選挙(大統領支持率低下・中間選挙での勝敗・レームダック化)

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