映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」に学ぶ経営のヒント

星野 裕司

映画はいろいろなことを教えてくれる。2017年夏に公開された「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」には、会社経営のヒントが沢山詰まっている。この映画は、誰もが知る世界最強のハンバーガー帝国マクドナルドの創業者(ファウンダー)がテーマ。事業の成功には、いくつになっても挑戦し続けることや粘りが必要であることを教えてくれる。映画のストーリーを簡単に紹介しながら、経営のヒントをまとめて見た。

■ストーリー

1954年アメリカ。52歳のレイ・クロックは、シェイクミキサーのセールスマンとして中西部を回っていた。ある日、ドライブインレストランから8台ものオーダーが入る。どんな店なのか興味を抱き向かうと、そこにはディック&マック兄弟が経営するハンバーガー店「マクドナルド」があった。

普通のハンバーガー店では、注文してから20~30分は待つのが当たり前なのに、この店ではわずか30秒で料理が提供されることに驚くレイ。合理的な流れ作業の“スピード・サービス・システム”や、コスト削減・高品質という革新的なコンセプトに勝機を見出したレイは、壮大なフランチャイズビジネスを思いつき、兄弟を説得し、契約を交わす。

次々にフランチャイズ化を成功させていくが、利益を追求するレイと、兄弟との関係は急速に悪化。やがてレイは、自分だけのハンバーガー帝国を創るために、兄弟との全面対決へと突き進んでいく・・・。(映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」パンフレットから一部引用)

この続きは是非映画をご覧いただきたいが、結論は、レイ・クロックが契約の隙間を縫って新会社を設立、最終的にはマック兄弟から全権を250万ドルで買い取ることになる。

世界最強のハンバーガー帝国を創ったのは、レイ・クロック。現マクドナルド・コーポレーションを設立し、マクドナルドのフランチャイズを展開。世界最大のファストフードチェーンを築き上げた。しかし、マクドナルドのハンバーガーや調理や販売などを作ったのは、マック&ディック・マクドナルド兄弟である。マクドナルドの本来の「創業者(ファウンダー)」はマック兄弟、フランチャイズの「創業者(ファウンダー)」がレイ・クロックと捉えるのがよいだろう。

1.始めるのに遅いことはない。

レイ・クロックがマクドナルド兄弟に出会い、彼らの作るハンバーガーやその仕組みに感銘し、フランチャイズを始めるのは52歳。成功を夢見て様々な職業に付いていたマルチミキサーのセールスマン。今から60年以上前に、52歳から始めて世界最強のハンバーガー帝国を作り上げた。その年齢にも驚くが、どんな逆境にもめげずに突き進む姿に感銘する。成功の秘訣は、諦めないことである。

2.スピード・サービス・システムと単品メニュー

今ではあたり前になったペーパーで包まれたハンバーガーと使い捨ての紙コップに入ったドリンク、オーダーしてから数十秒での提供。さらに紙袋に入れてテイクアウト。60年前は画期的なことだった。映画では、主人公のレイ・クロックがはじめてこの店に訪れた時に、その供給スピードや食べ方が理解できずに戸惑うシーンがある。

このスピードを実現する仕組みを兄弟はレイ・クロックにていねいに解説する。完全な分業制で、パテの焼き時間、ポテトの揚げ時間や油の温度など導線とともに試行錯誤を繰り返してスピードを追及していく。特にテニスコートを厨房に見立ててチョークで什器のレイアウトを書き、その上で実際に動きながら最適なポジションを探していくシーンは見ものである。今日であれば、パソコン上でシミュレーションするところだが、こうやって仕組みが作られていくのかを見ていくのは楽しい。

またメニューは、ハンバーガーとチーズバーガー。ミルクシェイク、ソフトドリンク、コーヒーのみ。すでに「選択と集中」、単品メニューが実践されている。

 3. QSCと5Sの先駆け

フランチャイズ加盟のやる気のないオーナー店では、店内にゴミが散らかっており、それを見たレイ・クロックが怒りながら片付けていくシーンがある。当時のアメリカでは店内のゴミは当たり前だったようだが、マック兄弟の店は店内も厨房も清潔だった。すでにこの時代からマック兄弟とレイ・クロックは、「QSC」(Q:クオリティー、S:サービス、C:クレンリネス=清潔・清掃)や「5S」(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を実践していた。

4.起業と事業拡大は別物

 映画を見ているとマック兄弟は「0から1を作り出し」、レイ・クロックが「1を1000に拡大した」と感じる。どちらが偉いとか価値があるとか、大変かというものではない。無から生み出すことの大変さ、拡大することの難しさがあろう。しかし両者には、求めるものや必要なものが異なる。

マック兄弟は自分たちがつくり出したシステムを自分たちの目の届く範囲で展開したい。拡大ではなく、品質を求めていた。一方、レイ・クロックは、素晴らしいビジネスモデルだからこそ拡大すべきであると言う。

多店舗展開を進めていくと、あるところで自分自身ではコントロールできない範囲(店舗数)に達する。その範囲内でやるのか、それとも別の仕組みを取り入れて拡大していくのかは、大きな分かれ目である。

5.フランチャイズを不動産ビジネスに変えた!?

 フランチャイズは、本部が加盟店に経営ノウハウやシステム、商品やロゴ、ブランドイメージなどの使用を許諾し、その対価として加盟金とロイヤリティーを受け取る仕組みである。対価としては売上げの一部しか手に入らない。これを土地を取得し建物を建築して、加盟店に貸し出す形に変えた。これにより、継続的に大金が流入し、さらなる事業拡大の資金を作っていった。

6.名前こそ命

レイ・クロックはマック兄弟の店を模倣してフランチャイズ化することも出来たはずだが、マック兄弟と対立しながらも、マクドナルドのフランチャイズに拘った。その理由は、「システムじゃなく、大事なのは輝かしい名前だ。マクドナルドという名前をどうしても欲しかった。」から。マクドナルドという名前がオープンで、音の感じがいかにもアメリカらしい。確かに、レイバーガーとか、クロックバーガーと言われてもピンと来ない。そして丸みを帯びたMのロゴも大事だ。日本でも「マック」や「マクド」などと親しみを込めて呼ばれている。

レイ・クロックには、「そこまでやるの?」というくらい残忍な部分もある。その野心と策略、粘り強さ、契約書の反故や守らない口約束などに驚かされる。しかし、ビジネスの成功には、ある意味非情さも必要なのかも知れない。レイ・クロックにその名前とともに全株式を譲渡したマック兄弟は、その後も「ビックM」という店名で商売を続けたが、今はもうない。しかし、どちらの「創業者(ファウンダー)」もリスペクトすべき存在であり、彼らから学ぶべきことは数多くある。

参考文献:「ファウンダー ハンバーガー帝国ヒミツ」(DVD&Blu-Ray(株式会社KADOKAWA)、公式サイト(http://thefounder.jp/)、パンフレット)、PRESIDENT online「マクドナルド帝国のヒミツ」

 

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