技術士資格を有する中小企業診断士を活用するには

嶋田 弘僧

1.はじめに

「技術士」という資格をご存知でしょうか。「技術士」は、文部科学省所管の国家資格で、21の技術部門から構成されています。この資格を有する者は、それぞれの技術部門において、豊富な実務経験、科学技術に関する高度な応用能力と高い技術者倫理を備えていることを国家によって認定されたことになります。

多くの技術士は、企業内技術士や公務員技術士として組織で活動しています。また、独立技術士として、中小企業に対して技術的なコンサルティング業務などを行っている技術士もいます。中小企業経営者の皆さまに対して、技術的な支援は、技術士または技術士資格を併せ持つ中小企業診断士が対応させていただきます。

(日本技術士会HP「技術士制度」https://www.engineer.or.jp/g1.pdf を参考にしました。)

2.中小企業診断士との比較

中小企業診断士と技術士は類似点も多いので、両者を比較してみました。相互に一次試験の一部免除があります。

中小企業診断士 技術士
所管 経済産業省 文部科学省
資格 名称独占 名称独占
更新制度 5年毎に更新 更新なし(実施を検討中)
登録者数 約26,000人
(平成29年度4月1日現在)
約89,800名(全技術部門)
経営工学部門 1,915名
情報工学部門 2,209名
(平成30年3月末現在)
独立開業者 約3割 約1割
協会 各都道府県の中小企業診断士協会
および中小企業診断協会(連合会)
日本技術士会
(内部に地域本部、県支部)
試験制度 一次試験、二次試験(筆記、口述) 一次試験、次年度以降に二次試験(筆記、口頭)
相互の試験免除 技術士(情報工学部門登録者に限る)、情報工学部門に係る技術士となる資格を有する者に対して経営情報システムが免除 中小企業診断士第2次試験合格者等に対して、第一次試験専門科目(経営工学部門)が免除

3.技術士に支援を依頼するメリット

①技術士は21の技術部門から成り、ほぼすべての技術分野をカバーしています。それぞれの技術士は、自分の技術部門の専門家であるとともに、自分の専門でない分野はその部門の技術士を紹介することができます。

②そのために、公益社団法人日本技術士会神奈川県支部、かわさき技術士センターなどの技術士のネットワークが役立ちます。

③技術士は、秘密保持義務などの3義務2責務を負うとともに、技術士倫理綱領に則って行動しますので、安心して仕事も任せられます。これらの内容は、技術士第一次試験、および、第二次試験の口頭試験で問われます。

④中小企業診断士を併せ持つ技術士は、経営と技術の両面からコンサルティングすることができます。

4.支援の事例

これまでに筆者が見聞きしたり、構想した技術士による支援の事例を紹介します。

(1)IoT導入

一例として、工場の機械にセンサーを取り付け、その情報を一か所に集めることにより、工場全体の設備の稼働状況を一目で把握することができます。これだけでもある程度の効果が期待できます。技術士は手を動かすことが好きな人が多く、装置を自作して試行あたりまで自分で行うこともできます。

(2)特許に関する支援

特許の申請書類を代理で作成することはできませんが、特許の内容についての相談、特許のアイデア出しなどの支援をすることができます。

(3)品質管理

各種手法を用いた品質分析、品質改善の提案と実施の支援、および実施後のフォローアップを行います。

(4)ISO9001認定取得支援

単に形式的な認証取得ではなく、業務効率化など企業の成功につながる形が望ましいので、品質マニュアルの作成や基本的な文書の作成を社員が自主的に取り組めるように支援します。

(5)防災・災害支援

地域と一体となった防災支援や災害発生時に調査や相談会などの支援を行う技術士もいます。中小企業に対して、災害等に備えてBCP(事業継続計画)策定を支援することもできます。

(6)補助金申請

ものづくり補助金、IT導入補助金など、技術に関わる補助金が多いので、技術士は技術的な視点で専門的に申請書の書き方を支援することができます。

5.私の活動

私は、企業内技術士、企業内診断士として活動しています。ともに業務独占資格ではなく、私の業務は技術士、中小企業診断士の資格を必要とする業務ではないので、会社の業務には直接活かせていません。業務以外で、主として協会の活動を中心に自己研鑽、相互交流に役立っています。

(1)技術士としての活動

公益社団法人 日本技術士会において、理事、情報工学部会長、各委員会の委員を歴任し、現在は、男女共同参画推進委員会委員、情報工学部会幹事、神奈川県支部幹事を務めています。また、会社の技術士会幹事、出身大学技術士会の幹事も務めています。これにより、他の技術部門の技術士と交流を深めるとともに、人脈を作るのに役立っています。

このほか、技術士の責務である「資質向上の責務」を果たすために、統括本部、部会、県支部が主催するCPD講座を受講し、継続研鑽に努めています。

(2)中小企業診断士としての活動

一般社団法人 東京都中小企業診断士協会において、能力開発推進部員、城南支部のコンサル塾部員のほか、会社の診断士会の幹事も務めています。

更新に必要な理論政策更新研修のほか、協会や支部が主催する各種講演会、勉強会、研究会の例会に積極的に参加し、自己研鑽に励んでいます。

 

(参考)「技術士」について
詳しくは、公益社団法人 日本技術士会HP https://www.engineer.or.jp/ をご参照下さい。

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