ITの導入を進める際に注意する3つのポイント

佐藤 歓知

1. 競争力向上のためのIT活用

本年4月に公表された「2019年版 中小企業白書」では、令和時代を迎えるに当たって求められる、経営者の円滑な世代交代や、経済・社会構造の変化に合わせた自己変革の取組について、分析している。白書が構造変化として取り上げているキーワードは、「人口減少」「デジタル化」「グローバル化」の3つである。ここでは、白書で紹介されたキーワードのうち、「デジタル化」を取り上げて、企業がシステムの導入に取り組む必要性と、それを進めるうえでの注意点を見ていく。

あらゆるものがインターネットにつながるとして、製造業を中心としてIoTへの関心が高い。そして、最近ではサービス業でも導入する企業が見られるようになってきた。なぜならば、モノに取り付けたセンサーなどからデータを入手し、そのデータを「既存業務の改善」や「商品サービスの開発や展開」などの目的で活用することで、生産性向上に役立てることができるためだ。IoTでデータを集め、集めたデータを分析し、AIに役立てる。このようなデータの利活用がもたらす変化は「第4次産業革命」と呼ばれ、現在進行中の変化である。

そして、白書によると、デジタル化社会ではIoT・AIを活用した生産性向上への取り組みが重要だとしている。では、なぜIoT・AIなのだろうか。それは、「第4次産業革命」が経営資源の格差解消を中小企業にもたらす可能性があり、IoT・AIが代表的なIT技術だからである。

また、中小企業の雇用環境に目を向けると、人手不足が深刻化している。今後、人口減少で人手不足の解消は難しいだろう。そのため、中小企業は、労働生産性(従業員1人あたりが生み出す成果)を高めることも重要である。労働生産性を高めるための一つの方法としても、ITの活用をあげることができる。

このように、中小企業が競争力を高めるためにITの活用を考えることは、一つの大切な要素になっている。とは言っても、ITの活用に向け、どのようにすればうまく導入できるのだろうか。以降では、ITを導入する際に注意すべき点を紹介する。

2. IT導入を進めるうえでの注意点

「2018年版 中小企業白書」で取り上げられた「IT導入の効果がうまく得られた理由」を調査した結果を見ることで、注意した方がよい点を整理する。

調査の結果によると、「IT導入の目的・目標が明確だった」、「専任部署、あるいは専任の担当者を設置した」、「経営者が陣頭指揮をとった」が上位となっている。次いで、「業務プロセスの見直しを合わせて行った」、「IT導入を段階的に行った」、「導入前に、利用予定の従業員の意見を聞いた」が続いている。

この結果からみて、ITの導入を進めるうえで注意する点は以下の3つである。

  • 導入の目的がはっきりしているか
  • 導入に向けた体制が整っているか
  • 過大な投資になっていないか

2.1 導入の目的がはっきりしていますか

他社がITを導入することで成功したと聞いて、自社でも「ITを導入したらうまくいくのではないか」、「仕事を効率化できるのではないか」と考え、同じことをするのは少し待ったほうがいい。ITを導入するプロジェクトが失敗する主な原因として、「とにかくやってみよう」という思いで、目的や目標が曖昧な状態で始めてしまった点をあげる場合が多い。

ITは経営上の課題を解決するツールである。自社の経営課題が明らかになっていない状況では、ITを導入する必然性は乏しい。そのため、まずは自社の経営課題を明らかにし、ITを活用できる可能性を検討してから始めることが大切である。導入を検討する際には、何のために取り組むのか、どうしたら成功と言えるのかを決めてから始めるようにしたい。

また、ITの導入をより効果的に行い、生産性の更なる向上を図るためにも、業務プロセスの見直しを同時に行うようにすることが重要である。現状の業務プロセスのままITを導入しても、効果が部分的にとどまり、期待したほどの効果を得られない場合が多い。ITの導入による生産性の向上を図りたい取り組みでは、業務プロセスの見直しと併せて実施することで一層の効果が期待できることを考慮して取り組んでもらいたい。

2.2 導入に向けた体制が整っていますか

ITの導入を決めたとき、経営者自らがその作業を推進するのか、それとも担当者に任せるのか。ITの導入をどのような体制で進めるとしても、誰にどのような役割と責任を期待しているのかをはっきりさせて進めることが重要である。

また、ITを導入する目的を社員と共有してから始めるようにしたい。背景や、目的、目標・ゴール、体制などを関係者で共有してから始めることで、ITの導入がグッと進めやすくなり、成功の確率も高くなる。ぜひ、ITの導入を始めることを社内に宣言して、社員と目標を共有して始めることの大切さを意識して取り組んでもらいたい。

2.3 過大な投資になっていませんか

業務プロセス全体にITを導入しようとして必要以上に過大な投資となるが、結果として期待した効果を得られない場合がある。また、導入の検討の段階で難しいと感じてしまい、中断してしまう場合もある。そのような場合は、ITを導入する範囲の見極めが不十分だった可能性がある。事前の検討が不十分で、ITで解決したい問題があいまいなまま、ITを導入しようとしても、導入費用が高くなる割には、十分な効果を上げることができない。

ITを導入する際のメリットの一つとして、小さく始められる点がある。いきなり業務プロセスの全体にITの導入を考えるのではなく、業務プロセスの中で課題となっている部分から導入を検討するようにしてもらいたい。

ITの導入には投資が必要になる。いきなり大きな投資をすると、その回収を考え、途中で見直しをすることが難しくなる。そのような点でも、小さな投資で始めることで、見直しを図りながらシステムの導入を進め、より効果的なITの導入を進めていきたい。

 

以上、ITの活用と、導入を進めるうえでの注意点を紹介した。ぜひ、無理のない範囲でITの活用を検討し、競争力の向上につなげていただきたいと考えている。

以上

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