コロナ禍を機会に変えているメーカ3社の事例から学ぼう!

中小企業診断士 山田 昭彦

コロナへの対応方法

コロナの第三波に直面し、菅内閣は中小企業支援対策を打ち出し始めています。先月の診断士の視点でも経営へのマイナス影響をデータで示していたように、状況は厳しさを増しています。ここでは、コロナ禍で経営や生産を見直している企業3社の事例を紹介し、そこから対応方法を学びたいと思います。

その1 激しい変化に対して戦略を見直すA社から学ぶ

A社は創業80年を迎えた機械部品のメーカで、多品種少量体制で大手に属さない独立経営を維持し、海外にも積極的に投資してきました。しかし、多くの顧客が不況に見舞われているのでA社も苦境にあり、社員の安全衛生、操業と納入の維持などやるべきことは山積ですが、その中でA社は戦略を見直すことにしました。皆様にも馴染みのあるSWOT分析での戦略再構築ですが、その内容を簡単に紹介します。

表1 SWOT分析(作成:山田)

クロスSWOT分析強み(S)
多品種少量の生産体制
海外販売・生産の体制
弱み(W)
海外での技術移転の遅れ
オンライン販売網の未整備
機会(O)
オンラインの普及
医療・衛生ビジネスの拡大
柔軟な生産を活かした医療機器用部品の供給オンラインによる海外生産強化、技術移転の促進
脅威(T)
国内市場の縮小
対面販売の制限
BtoCの製品開発
改善によるコスト低減
オンライン販売のためのマーケティング見直し

SWOT(強み、弱み、機会、脅威)を掛け合わせた個々の戦略は参考です。A社から学べることは、大きな波に直面したら、現在の体制をまずは見直すことです。コロナという巨大な脅威のために今までの戦略は通用しなくなります。大事なことは、見直しを迅速に、そして全社・包括的に行うことです。

その2  Withコロナを機会と捉えて対応するB社から学ぶ

次に紹介するB社は創業25年を迎えたワイヤーハーネスのメーカで、技術力に定評があります。納入先の大手企業からの注文は継続しており、B社の現在の最大の課題は操業の維持です。社長はコロナが蔓延するやすぐに行動を起こし、作業場に入る前の検温、手洗い、うがいの励行、ソーシャルディスタンスでの食事、常時マスク着用など安全、衛生の徹底で感染者を出していません。さらに、1週間先の生産計画を前倒しにすることで、万が一の感染でも納入を守る体制を作りました。しかし、3密を防ぐために現場の人員配置を見直した結果、生産性が低下したので、今までやろうとしてできなかった、全社改善・ムダ取りキャンペーンを開始しました。これは工場のみならず事務所も対象で、安全衛生から作業改善までの提案を幅広く募ったところ、200件を越える反応がありました。海外を含む調達先の再確認、在庫の再確認、作業指示書の手入力のムダ、ひとりしかできない作業の伝承遅れ、不要なハンコ、データの未集計などのムダや改善点を発見できました。

ここでムダ取りについて少し紹介します。 トヨタの7つのムダは有名です。作りすぎのムダ、手待ちのムダ、運搬のムダ、加工そのもののムダ、在庫のムダ、動作のムダ、不良をつくるムダのことですが、若干説明を要するので、ここでは簡単に具体的な例を説明します。ムダを発見する勘所は、①急に増えた工程間在庫、②ミスの多い作業者、同じミスを再発させる工程、③残業の多い作業者や工程、④ぼんやりとした待ちの状況(納入、次工程、運搬具待ちなど)ですので、参考にしていただけますと有難いです。

コロナの影響で大手企業からのサプライチェーンの管理強化が求められる中、B社ではデジタルに強い若手を中心にIoTやAIの活用による生産性向上やベテランから若手への技術承継を積極的に進めて、デジタリゼーション、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しています。B社から学べるのは、コロナ禍を機会として捉え、今まで手を付けられなかったムダ取りとこれからの生産革新となるデジタル化に全社で取り組んだことです。

その3 Afterコロナの競争激化を見据えたゼロベースの改善を始めたC社から学ぶ

建築鉄骨のメーカのC社は大手ゼネコンに中層建築用の鉄骨を納入し、地域貢献企業として有名です。しかし、オリンピックの建設ブームは終わり、そこにコロナによる事務所の需要激減を受けて、今まで高層ビルに資材を供給してきた競争相手は、C社が得意とする中層建築に進出することが予想されています。競争激化による受注価格の低減を見越して、社長は生産性向上のために65年続いた工場体制をゼロベースで変えることを決意しました。その鍵となるのが5Sの徹底です。社員全員による改善大会を開き、全員が丸一日を使って工場内の整理を行い、不要な在庫、工具を処分し、必要なものは見やすく、使い易く整頓しました。工場中央の大型設備を端に寄せて工場内部の運搬を容易にするのは現場から発案で、社員の熱意と一体感が感じられる改善です。さらに、生産性向上5S委員会を設置して、整理、整頓を継続しながら、清掃の励行と清潔の維持まで、若手社員がベテラン社員を引っ張る形で5Sを進めていきます。

5Sは簡単に始められるのが特徴ですが、続けることに難しさがあります。そこで、診断士が使うカイゼン・メソッドを紹介します。

改善は一時的、局所的なものではなく、継続的、包括的な活動です。下記の表2にありますように、改善は1トップ主導で始まり、2の整理、3の整頓と数字の順に、現場がボトムアップで進めていきます。各項目にはレベルが設けられ、例えば2の整理においては、表3で見られるように段階的にレベルアップし、改善に終わりはありません。

    表2 5Sの流れ(TKKメソッドより)

4清掃5三直三現6見える化
3整頓5Sの流れ7ムダ取り
2整理1トップ主導の改善8凡事徹底

    表3 改善のレベル(TKKメソッドより)

レベル2の整理におけるレベルの内容(目標)
開始前未整理、未整頓の荒れた現場
初期整理、整頓、清掃を理解して計画
一般工場内の工具、設備などの不用品の廃棄
中級古い規定、改定済の図面、昔の標語、ビラなどの処分
上級マニュアル改定、データのリニューアルと活用

字数の関係で簡単に示しました。関心のある方はお問合せください。

C社はAfterコロナを見据えて5S改善といった基本に立ち返っています。その際に重要なことは、社員の声に傾聴し、よいものはすぐに取り上げることです。それが社員のモラール向上につながります。

まとめ

3社の事例を紹介しました。共通するのは、市場などの変化を十分に分析・検討し、そして変化への対応が迅速で、全社員を巻き込んでいることです。

このような決断に踏み切るには、市場の見極め、対応の方向性、効果を見定めることになります。その際は、川崎中小企業診断士会にお声がけいただき、その分野に精通した中小企業診断士の活用をお薦めいたします。

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