小規模事業者こそITを積極的に活用しよう!

中小企業診断士 西岡 健太郎

皆様の会社では、経営にITを上手く活用できていますでしょうか。今回は、規模が小さな事業者もITを積極的に導入・活用すべき理由についてお伝えします。

最近、よく「DX(デジタルトランスフォーメーション)」というキーワードを耳にするようになりました。もともと「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」という概念を表す言葉だったのですが、日本では企業活動やビジネスと関連づけて説明されることが多いようです。経済産業省は、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。

DXの定義が示す通り、日本社会では様々な構造変化が続いています。足元では新型コロナウイルスが猛威を振るっていますが、それだけでなく、少子高齢化による人口減少、グローバル化、テクノロジーの進歩など、急激に社会環境が変化しています。

ダーウィンの進化論は、環境変化に対応できた種が生き残ることを示していますが、これはビジネスにおいても同様です。そして、現在の環境変化にスムーズに対応するための鍵の一つがIT技術の活用です。

1.ITは「自社には関係ない」「使えなくても問題ない」と思っていませんか?

現在の生活において、ITは無くてはならないものであり、既に浸透しきっていると言っても過言ではありません。高速データ通信のインフラが整備されたことに加え、パソコンやスマートフォンが普及したことで誰もがオンライン上のサービスを気軽に使えるようになりました。古くから存在するサービスもオンラインと結合し、新しく便利なサービスに生まれ変わっています。

スーパーでの買い物、宅配の注文、旅行の予約、銀行の振り込み、証券の購入など、多くの事柄がオンライン上で完結するようになり、店頭に足を運ぶ必要が減りました。また、キャッシュレス決済が急激に浸透し、飲食店や小売店の店頭で現金を使うことは少なくなっています。行政サービスについても、徐々にオンライン化が進んでいます。

テクノロジーの進歩による生活様式の変化は、ビジネスの形も大きく変えていきます。例えば、ひと昔前に比べてCD・DVDを販売する店舗やレンタルビデオ店が減っていると感じることはないでしょうか。 これは、高速無線データ通信による大容量データ配信が可能になったことに加え、音楽や映画・ドラマのサブスクリプションサービスが普及してきているためと考えられます。サブスクリプションは、一定期間の利用権に対してお金を払うビジネスモデルです。毎月定額の利用料を払えば、音楽や映画・ドラマが見放題であり、これまでのようにCD・DVDを所有したり、借りたりする必要はありません。スマートフォンを使えば、場所を縛られずにこれらのサービスを利用することも可能です。電車に乗っていると、スマートフォンで映画・ドラマ・音楽を楽しまれている方を見かけることも増えています。

図1.日本国内で利用できるサブスクリプションサービスの例

このようなITの進歩によるビジネス環境の変化は、ありとあらゆる分野の産業に波及していきます。そして、その環境変化に対応できない事業者は生き残れず消えていくことになります。これは規模が大きかろうが小さかろうが関係ありません。

2.IT技術の進化で間接業務も安価に効率化できる

企業活動のうち、「財務会計」、「在庫管理」、「給与・勤怠管理」、「受発注」、「顧客管理」などの間接業務についても低価格・高機能なクラウドサービスが生まれており、大きな費用をかけずに間接業務を大幅に効率化することができるようになっています。クラウドサービスは、インターネットを介して提供されるサービスで、従来のソフトウェアのようにインストールする必要はなく、ブラウザさえあれば利用することができます。

クラウドを活用したサービスは外部システムとの連携も容易です。例えば、クラウド財務会計システムの場合、銀行口座やクレジットカードと連携させることができ、半自動で仕訳を作成することが可能です。他にも、クラウドを活用したPOSシステムや販売管理システムなど、外部のシステムと連携することも簡単で、大幅に業務効率を高めたり、蓄積したデータを効率的に分析したりすることができます。

低価格で利用できるサービスも多く、また導入もそれほど難しくありません。規模の小さな企業や個人事業主でも問題なく利用できるようになっています。経営資源、特に人的資源が限られる小規模事業者こそ、積極的に活用していただき、業務効率化を実現していただきたいと思います。

3.IT導入が進まない理由 

2018年度「小規模企業白書」によると、「財務会計」、「在庫管理」、「給与・勤怠管理」、「受発注」、「顧客管理」の業務のうち、「パソコン等でほぼ電子化」できている分野が一つもない小規模事業者の割合は42.1%となっています。

ここまで説明した通り、IT技術を活用することで、これまでにない新しいサービスを作ることができたり、大幅に業務効率を改善したりすることができます。では、なぜ多くの企業でIT活用が進んでいないのでしょうか。

最大の理由は、ITに対する経営者の理解や知識が不足していることです。ITを投資ではなくコストだとしか考えることできなかったり、IT導入が非常に難しく高価なものだと思い込まれていたりする経営者が多くいらっしゃいます。

中小企業・小規模企業において、経営者が意思決定に及ぼす影響の大きさは説明するまでもありません。よって、IT導入を進めるためには、まず経営者の考え方を変え、またITについて知識・理解度を高めることが重要と言えるでしょう。

4.小さなIT投資から始めよう 

中小企業・小規模事業者の場合、いきなり高額のIT投資は不要です。先に紹介したクラウドサービスであれば、ほとんどのサービスで無料お試し期間が設けられています。まずは経営者が率先して使ってみて、感触がよければ徐々に拡大していくのがおすすめです。

自社だけでIT化を進めるのが難しい場合は、自治体等が設置している公的な経営相談窓口にご相談いただくのがお勧めです。ITや経営に詳しい専門家に、無料、または低額で相談に応じてもらうことができますので、是非ご検討いただければと思います。

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