中小企業診断士会・三浦理事長インタビュー

川崎市産業振興財団の三浦理事長に、この大変革の時代に中小企業を応援する財団の取組について伺いました。

―三浦淳財団理事長インタビュー―

1 川崎市産業振興財団の皆さんには、川崎中小企業診断士会も大変お世話になっています。本日は、三浦理事長にいろいろお話をお伺いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

  • こちらこそ、日頃、川崎中小企業診断士会の皆さんには、私ども財団も大変お世話になっています。診断士会の皆さんと財団は、パートナーとして協力して、中小企業を応援しています。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。

2 まず、理事長は、川崎に生まれ、川崎市役所で40年以上仕事をされたとお伺いしていますが、川崎のまちについて、どう思われているのですか?

  • 私は、川崎市が1972年4月に政令措定都市になった後の1975年(S50)に市役所に入りました。中原区役所の税務セクションからスタートし、行財政改革や音楽のまちづくり、また武蔵小杉や川崎駅周辺の再開発、新川崎地区や殿町地区の新たな産業クラスターの形成、さらには臨海部再編整備など、様々な仕事を経験させていただきました。そして、43年の市役所での仕事を終えた後、2018年6月から川崎市産業振興財団理事長として、中小企業・ベンチャー支援に携わっています。
  • 川崎市は、再来年、2024年に市制100周年を迎えます。人口5万人からスタートし、現在は154万人。20市ある政令指定都市のなかで6番目の大都市として発展しています。
  • 浅野総一郎が、110年ほど前に、鶴見埋立組合を設立し、臨海部での事業を開始し、全国から若い労働者が川崎に集まり、京浜工場地帯として、日本の産業をリードしてきました。民間が創ってきたまちですし、オープンで多様性があり、誰にでも優しい街柄のまちだと思っています。
  • また、関東大震災や太平洋戦争、そして公害など様々な試練に対して、常に挑戦し、乗り越えてきたチャレンジングなまちであると思います。

3 改めて、川崎市産業振興財団は、どんな機関なのですか?その特徴や強みは?

  • 財団は、1988年に設立され、川崎市をはじめ様々な皆様と協力し、中小企業やベンチャーの成長支援に取り組んでいる公益財団法人です。
  • 昨年からは、「総合的な支援サービスの提供」を大きなテーマとして掲げ、中小企業・ベンチャーの成長支援に向けて、海外展開、知財戦略、各種相談などの財団の実施する各種施策を横串に刺し、総合的に展開する取組みを財団あげて推進しています。
  • ライフサイエンス領域の国際的な拠点形成をめざす殿町キングススカイフロントでは、クラスターマネージメントを行うと共に、財団が運営するナノ医療イノベーションセンターでは、体内病院の実現をめざし、先端的な研究開発と社会実装にも取り組んでいます。この10年ほどの取組みの中で、9社のベンチャーの創出を実現させています。また、本年6月からは、世界のバイオ・ヘルスケア部門のトップインキュベーターである米国ボストンを本拠地とするBiolabs(バイオラボ)社と連携し、インキュベーション事業をスタートさせました。ここからスタートアップが世界に向けて、飛び立つことを期待しています。
  • また、新川崎地区についても、慶應義塾大学タウンキャンパスの取組みと合わせて、KBIC本館、NANOBIC、AIRBICの3つのインキュベーション施設を他の事業者と共同事業体を組み、運営しています。近年のスタートアップ・ベンチャーの成長を実感しています。
  • 昨年には、IBMと東京大学の連携により、アジア初となる量子コンピューターが設置され、財団も、川崎市の提唱する「量子イノベーションパーク構想の実現」にも協力しています。
  • ものづくりをはじめ建設、運輸、飲食、生活サービス、さらには医療・福祉など多様な業態の中小企業支援や、ベンチャー・スタートアップ支援を行うとともに、世界水準のクラスター運営にも関わっています。
  • 地域と密着したローカルな取組みと世界ともつながるグローバルな取組みを進めている、産業振興機関としては全国唯一といっても過言でないと思います。以上申し上げた特徴と強みをもつユニークな財団です。

4 日本の産業や川崎市の産業・企業の現状について、どのように認識されているのですか?

  • 今、日本をはじめ世界は、大変動・大変革の時代にいると感じています。IoT・AI・ビッグデータ、自動運転、ドローン、ロボット、フィンテックなどをキーワードとするSociety5.0と呼ばれる社会では、しのぎを削った世界的な競争が展開しています。
  • 地球温暖化・気候危機、脱炭素、SDGsは、待ったなしの世界的なテーマです。世界人口は現在、80億人、これが100億になると言われ、水や食糧不足などの資源問題、飢餓が切迫した課題となっています。
  • 日本においては、急速な人口減少の時代に入ってきています。毎年70万人が減少し、労働力・人材不足が企業にとって深刻な課題となってきました。このことを前提条件として、社会の仕組みの改革をはじめ、あらゆることを考えなければなりません。産業や企業経営についても勿論です。
  • コロナ感染拡大から、こうした中長期的な流れを前提に、中小企業は、事業の再構築を図らなければならないと言われてきましたが、コロナにより加速化されてきたと感じています。
  • 川崎市内の産業・企業についても同様です。川崎は人口が増えているから、大丈夫だということはあり得ません。日本社会がこうした中にあり、どう企業経営を進めるのか?
  • さらに、コロナ禍に加え、ウクライナに端を発した資源高、資材不足、電気・ガス料金の値上げ、様々の物価高も切迫した課題となっています。
  • コロナ対策として貸し出された貸付資金の返済も始まってきました。
  • 川崎においては、100年間、川崎の産業を支えてきたJFEスチール(旧日本鋼管)において、そのシンボルである高炉が、来年9月に停止されます。まさに川崎の産業史のエポックとなる出来事です。関係企業への影響や事業転換、さらには広大な跡地利用の行方など、まさに川崎も大変革の時代のまっただ中にあります。
  • 生産性の向上、働き方改革、人材育成・確保、DX、カーボンフリー、事業承継、新たな事業展開など、様々な課題に対して、全ての業種や規模の中小企業にとって、持続可能な事業の再構築が待ったなしの状況だと認識しています。 

5 そうした、中小企業のおかれている現状に対して、財団の果たす役割や取組みについてお伺いしたいと思います。

  • 昨年から、財団は、「総合的な支援サービスの提供」を大きなテーマとして掲げ、海外展開、知財戦略、各種相談、資金調達、人材育成、スタートアップ支援、プロモーションなど財団の行う各種施策を横串に刺し、総合的に展開する取組を推進しています。
  • こうした総合的な相談支援を診断士会はじめ金融機関など多くのステークホルダーの皆様と協力して、中小企業の持続的な成長支援に繋げられればと思っています。
  • また、中小企業診断士会の皆さんにも、協力していただいている、起業家オーディション事業や新川崎地区・殿町キングスカイフロントなどにおいて、スタートアップ・ベンチャー育成支援を展開しています。
  • スタートアップ・ベンチャー育成支援も大切ですが、スタートアップ・ベンチャーと既存の企業との協業も大切だと考えています。スタートアップ育成と中小企業支援を全く別なものと考えず、どうマッチング・コラボレーションしていくかということも大変重要だと考えています。
  • そうしたことから、現在、起業家オーディション事業の見直しを図っています。NECさんやアジア航測さんなど大手企業の皆様にも協賛企業に加わっていただきました。また、フロンターレさんや、さらには、神奈川県中小企業家同友会の皆さんなどにも加わっていただきました。それぞれの企業や団体の本体と関係する企業などと協業することにより、新たな製品、新技術の開発、新たな事業領域の拡大に繋げることを目指していきたいと思います。
  • こうしたことを、診断士会の皆様はじめ様々な方々と協力して、中小企業の事業再構築、生産性の向上や働き方改革に繋げ、持続的な成長に貢献できればと思っています。

6 今後の中小企業に対する期待と、川崎中小企業診断士会へのメッセージをいただきたいと思います。

  • 中小企業の皆さんにおかれましては、こうした大変革の中にあって、大変困難で厳しい状況にありますが、まさにピンチはチャンスでもあります。是非がんばっていただきたいと思います。財団も本気の支援を行ってまいりたいと思います。
  • 川崎中小企業診断士会の皆様におかれましても、これまでも大きな力をいただいてまいりましたが、更に新たな展開に向けまして、財団との連携をお願いしたいと思います。
  • そうしたことにより、中小企業、ベンチャーの成長支援が図られ、川崎のまちが更に元気で素敵なまちとして持続的に発展することを心から期待したいと思います。
  • 是非、診断士会の皆様と更なる連携を図ってまいりたいと思っています。よろしくお願いいたします。本日は、ありがとうございました!!

  (聞き手 関根 清一

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