川崎市で創業しよう!~創業準備のイロハ~
- 2025/11/1
- トピックス

中小企業診断士 児玉 仁勝
1.はじめに
これから事業を始めようと考えている方にとって、最初の壁は「何から手をつければいいのか」という点かもしれません。創業を進めるうえで、事業形態の選択や税務の準備、行政や専門家の支援の活用など、押さえておきたい基本的なステップがあります。本記事では、創業希望者の方に向けて、(1)事業形態の違いと選び方、(2)確定申告の基本、(3)創業支援策の活用方法の三つを軸に、創業の全体像をわかりやすく解説します。
なお、本記事の内容は概要の紹介にとどまります。実際に起業される際には、税理士・行政書士など専門家の助言や支援を活用することをおすすめします。
2.個人事業主と法人
(ア)事業形態の違いと選び方
創業を考えるとき、最初の分かれ道となるのが「個人で始めるか」「法人を設立するか」という点です。 どちらを選ぶかによって、手続きの流れや税金の計算方法、信用力の評価が大きく異なります。まずは全体像をつかんでおくことが大切です。
個人事業主は、比較的手軽に始められる事業形態で、開業届を提出すればすぐに事業をスタートできます。小規模で自由度が高い反面、取引先や金融機関からは「個人の延長」と見られやすく、信用面では法人に劣ることもあります。
一方、法人には主に「合同会社」と「株式会社」があります。合同会社は出資者自身が経営にあたる仕組みで、設立費用が低く柔軟に運営できるのが特徴です。株式会社は出資者(株主)と経営者が分かれる形で、社会的信用や資金調達力に優れています。ただし、創業初期は出資者と経営者が同一人物となることが一般的です。
下の図は、それぞれの特徴を簡潔にまとめたものです。創業の目的や事業の規模を踏まえ、どの形が自分に合うかを検討してみましょう。


(イ)法人化を考えるタイミングについて
ここまで見てきたように、個人事業主と法人にはそれぞれに長所と注意点があります。
開業の手軽さを重視するなら個人事業主として始めるのが一般的ですが、事業が軌道に乗り、安定的に利益が見込めるようになった段階で、法人化を検討するケースが多く見られます。
法人化によって社会的信用が高まり、取引先や金融機関との関係が築きやすくなるほか、役員報酬や経費計上など税務上の柔軟な選択肢も広がります。 一方で、登記や決算、社会保険の手続きなど管理面で労力や費用の負担が増えるため、経営の安定性が一つの目安となります。
ただし、これはあくまで一般的な考え方です。 事業の目的や規模、将来の展開によって最適な判断は異なるため、実際に法人化を検討する際は、税理士などの専門家に相談して進めるのが安心です。
3.確定申告の基本
事業を始めると、毎年1回「確定申告」を行い、所得と税金を報告する必要があります。確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類があり、選び方によって税金の計算方法や控除の仕組みが異なります。
白色申告は、帳簿付けのルールが比較的簡単で、開業したばかりの人でも取り組みやすい方法です。ただし、控除や特典は少なく、節税の余地は大きくありません。一方、青色申告は、複式簿記による記帳や帳簿保存などが求められますが、最大65万円の控除を受けられるほか、損失を翌年度以降に繰り越して控除できる制度があります。個人事業主では最長3年間、法人では最大10年間(※ただし適用要件や開始年度によって異なる)まで繰越可能です。 会計ソフトを使えば記帳の手間も大きく減り、近年ではクラウド型のサービスを利用する人も増えています。
どちらを選ぶか迷ったら、「将来も継続して事業を続けていくかどうか」を一つの判断基準にするとよいでしょう。安定した事業運営を目指すなら、早めに青色申告の準備を進めるのがおすすめです。
※ 新規開業者が青色申告を行う場合は、「青色申告承認申請書」を開業から2か月以内に税務署へ提出する必要があります。すでに事業を行っている方が白色申告から切り替える場合は、その年の3月15日までが申請期限です。
4.創業支援策を活用する
創業の準備を進める中では、資金計画や税務手続き、事業の方向づけなど、さまざまな疑問や迷いが生じるものです。そうしたときに頼れるのが、公的な支援機関や専門家による相談制度です。
関連記事:川崎市で創業しよう!~川崎市の創業支援について~
https://www.kawasaki-shindanshi.jp/2024/07/topics-147/
川崎市産業振興財団では、創業に関する無料相談やセミナーを実施しており、事業計画の作成や資金繰りの相談など、実務的な支援を受けることができます。当診断士会も同財団と連携し、創業者の皆さまに向けて、専門家によるアドバイスや個別相談を実施しています。
また、税理士・司法書士・行政書士などの専門家は、確定申告や会社設立などの法的・税務的な手続きをサポートしてくれます。初めての創業でも、専門家の伴走を得ることで準備を着実に進めることができます。さらに、川崎市では特定創業支援等事業として、創業に関する基礎知識を体系的に学べる支援プログラムを展開しています。制度の活用により、会社設立時の登録免許税の軽減などの優遇を受けることも可能です。
一人で抱え込まず、こうした支援を上手に利用することが、創業を軌道に乗せる第一歩になります。
5.まとめ
創業の第一歩は、事業形態の違いや税務の仕組み、支援制度の全体像を理解することから始まります。「個人事業主として始めるか、法人を設立するか」「青色申告と白色申告のどちらを選ぶか」など、最初の判断がその後の経営基盤を形づくります。川崎市では、産業振興財団や当会(一般社団法人川崎中小企業診断士会)をはじめとする支援機関が、創業者の伴走支援を行っています。制度や専門家の力を上手に活用しながら、一歩ずつ着実に事業の形を築いていきましょう。
【お知らせ】
令和8年1月から特定創業支援事業「かわさき起業家塾」がスタートします!(10月27日募集開始)
詳しくは川崎市産業振興財団HPでご確認ください。
https://www.kawasaki-net.ne.jp/















