「採択される!補助金の応募書類」を作るポイント

中小企業診断士 金澤 良晃

■補助金申請時の疑問や悩み

日本には、様々な補助金・助成金制度(以下、「補助金」)があります。例えば、「ものづくり補助金」、「創業補助金」、「小規模事業持続化補助金」などが有名です。多くの補助金は、申請費用が掛からず、受け取った補助金は基本的には将来返還する必要がないため、企業の皆さまにはぜひとも挑戦して頂きたい施策の一つであるといえます。

ただし、ここで問題となるのが、申請時の応募書類の書き方ではないでしょうか。よく耳にするのは、「どう書いたら良いか分からない」、「以前、頑張って書いたが採択されなかった」などの疑問や悩みです。

実は私自身も、1人の経営者として補助金を申請した経験があります。最初は、補助金に関する知識が乏しく「(図表・写真は使わず)文字だけで書いた方が良いのだろうか?提出時は、モノクロ印刷の方が良いだろうか?」などと素朴な疑問を抱いていました。なぜなら、固いイメージのお役所に提出する書類だという先入観があったからです。しかし実際には、そのようなことはありませんでした。説明に効果的な写真や図表をふんだんに使い、カラー印刷で提出しました。そして結果は、無事採択となりました。

補助金に慣れない方にとっては、他にも様々な疑問や悩みを持たれているのだろうと思います。今回の診断士の視点では、3つの基本的事項に絞って、採択される応募書類の作成ポイントをご紹介したいと思います。

1. 審査項目を意識して漏れなく書こう

皆さまの中には、「補助金の審査員って、どういう点を見て、採択か否かを決めているの?」と疑問を持たれる方も多いかと思います。実は、各補助金の募集要項を見れば、「審査項目」といった名称で、それが明確に書かれています(採択方法などと書かれている場合もあります)。以下に例として、ものづくり補助金(H26年度補正)の募集要項に記載されている審査項目を挙げます。(抜粋)

【技術面】

  • 新製品・新技術・新サービス(既存技術の転用や隠れた価値の発掘(設計・デザイン、アイディアの活用等を含む))の革新的な開発となっているか。
  • 試作品等の開発における技術的課題が明確になっているとともに、補助事業の目標に対する達成度の考え方を明確に設定しているか。

【事業化面】

  • 事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、補助事業が適切に遂行できると期待できるか。
  • 事業化に向けて、市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。

【政策面】

  • 厳しい内外環境の中にあって新たな活路を見いだす企業として、他の企業のモデルとなるとともに、国の方針(「経済の好循環実現に向けた政労使の取組について」において示された賃金上昇に資する取組みであるか等)と整合性を持ち、地域経済と雇用の支援につながることが期待できる計画であるか。
  • 金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか。

上の例は抜粋ですので、他にも様々な審査項目があります。審査員は、これらの項目を元に審査(採点)をしています。そして多くは、「加点方式」で各項目に点数をつけていきます。つまり一つ一つの審査項目に対して、何かしらの記載があれば適切な点が加算され、記載がどこにも見当たらなければ加点なし(0点)となります。

このことを十分に意識して応募書類を作ることが重要です。しかし、実際に応募書類を書く段階になると、つい審査項目のことを忘れてしまい、書き終えた後にそのまま書類を提出してしまうケースを時々見かけます。

そこで重要なのは、「自社で採点表を作って、社内採点をし、記入漏れをなくし質を高めること」です。募集要項にある審査項目を参考にしながら、ご自身で採点表を作ります。この時、各審査項目に対して10段階評価ができ、コメント(理由)を記入できるようにしておきます。採点者は、書類作成者とは別の人が望ましく、その記載内容に特段詳しくなく、屈託のない評価をしてくれる方がベストです。なぜなら、そうした方は、本物の審査員に非常に近い存在となるからです。

社内採点者に採点をしてもらったら、まず「0点の項目がないか」を見ます。0点の項目があるということは、記入漏れがあると判断できるからです。記入漏れ部分をなくし、0点の審査項目をゼロにしましょう。

次に確認すべきは、記入漏れ(0点)ではないものの、点数が低い項目です。おそらく採点者によるコメントには、「説明の根拠が弱い」、「図表がなくて分かりづらい」などの理由が書かれているはずです。こうしたコメントを元に文書を改善させて、応募書類全体の質(評価点)を高めていきます。

そのようして審査項目別に細かく修正していった後で、もう一度最初から最後まで文書全体を読み直します。この時、注意すべきことは、大きく2つあります。

1つ目は、書いてある内容が終始一貫しているかという点です。審査項目別にしっかり記入されていたとしても、全体として1本の筋が通っていなければ、バラバラでおかしな文章になってしまいます。これでは説得力に欠けるため、全体的な評価点は上がらないでしょう。

2つ目は、内容に十分な論理性があるかという点です。論理性は、因果関係の明確さや具体性に左右されます。一つ例を挙げて考えてみましょう。例えば、予想損益計算書を作成する時に、直近の売上高が100万円、1年後は120万円、2年後は140万円と書いたとします。この時、なぜ年々20万円ずつ増えていくのかという根拠がなければ、単なる希望予測であるとしか判断されないでしょう。つまり、年々20万円ずつ増える具体的な根拠を事業計画書の中に明記する必要があるのです。例えば、「オムニチャネル戦略によって、顧客の購入利便性を高めていくため」などの理由を詳細に書くのです。こうした根拠がしっかりしていれば、実現可能性が高い予想売上高であると判断され、高い評価点を期待できるでしょう。
このように社内採点による精査改良を繰り返してから書類提出するよう心がけると、採択の可能性は高まっていきます。

2. 誰にでも理解できる文章で書こう

補助金の審査員は、1日に何件もの応募書類に目を通して採点評価をしています。1件あたりの採点時間は概ね決められており、評価の公平性を担保しています。逆に言えば、規定時間を大きく超過して応募書類を読み込むということは、審査状況としては難しいことが想像できるかと思います。

そうした状況を考慮した時に、(A)理解しやすい応募書類と、(B)難解な応募書類があったとしたら、どちらの方が有利だと思いますか。イメージとして(A)は、平易な文章表現で書かれており、図表・写真・段落・箇条書きなどを効果的に活用している文章です。逆に(B)は、その業界の人にしか理解できない専門用語が多く、図表・写真・段落・箇条書きなどは利用していない文章です。

もちろん審査に有利なのは、 (A)になります。「1. 審査項目を意識して漏れなく書こう」でも説明しましたが、審査員は審査項目を元に採点をします。(A)の場合、審査項目に該当する箇所を見つけることが容易になるため、「該当審査項目の記載なし」と判断されるリスクは低くなります。さらに理解のし易さから、適切な点数も付けやすくなります。

一方(B)の方は、審査項目に該当する箇所を見つけること自体が難しくなります。下手をすると、該当箇所なしとして、その審査項目に0点がついてしまう可能性もあります。もちろん審査員も、時間の許す限り様々な手段を使って内容の理解に努めます。しかし、審査時間が限られているため、全体として理解度が上がらず、加点しづらくなり、総合得点が上がらないという結果になってしまうのです。

そこで大切なのは、「専門知識がない方が読んでも理解できる、平易な文書を作ること」です。業界の常識や専門用語に関しては、補足説明をつけるのは必須です。文字だけでは伝えづらい事柄については、写真や図表を使うと効果的です。特に事業計画書の部分は、何ページにもわたる長文になるため、見出しや段落を設け、箇条書きを使用するなどして、文章全体を読みやすくする工夫も必要です。

1文に含まれる文字数にも注意が必要です。1つの文は、長くても80文字(約2行分)程度に収めた方がよいでしょう。それ以上長い文は、読み手に負担がかかるため、読みにくい文章(難解な文章)となってしまい採点に不利に働きます。もし1文が長くなってしまった場合には、途中で文を読点「。」で区切り、文を分割しましょう。

このようにして、審査員が読みやすく理解しやすい文章を書いて、評価得点を高めていきましょう。

3. 早めから挑戦し、敗因を知って次回の採択率を上げよう

3つ目は、一部の補助金制度でしか使えませんが、知っていると得するポイントをご紹介します。

補助金の中には、年間に複数回公募が行なわれている補助金があります。例えば、ものづくり補助金は平成27年に2回公募がありました。こうした補助金は、1回目と2回目のどちらに応募した方が有利でしょうか

正解は、「1回目から応募し、もし不採択だったら不採択理由を聞き出して、2回目も応募する」です。

実は、不採択となってしまった時、事務局に問合せれば、その理由「どこが、どうダメだったのか」を詳しく教えてくれる場合があります。ただし、全ての補助金に該当するわけではありませんので、その点はご留意ください。もし補助金の募集要項の中に「不採択時の理由の問合せには一切応じません」と明記がされていなければ、もしかしたら不採択理由を教えてもらえるかもしれないということです。

そうした補助金の1回目の応募で不採用になったら、事務局に不採択理由をダメ元で問合せてみてください。単に問合せるだけですから、たとえ拒否されたとしても失うものはありません。

もし問合わせに応じてもらえることになったら、どの審査項目において点数が低かったのか、なぜ低かったのか、という風に質問してください。すると、例えば「技術面の審査項目の1番目(革新性)において、得点が低かったです。理由は、御社の新製品に似た製品が、既に世の中に存在し、革新的であるとはいえないと判断したためです。」などと教えてもらえるでしょう。このようにして、どの審査項目で、なぜ点数が低かったかということを明確にします。

あとは、その部分を重点的にブラッシュアップして、2回目の公募に再挑戦するという流れです。こうすれば、1回目の得点よりも確実に高い点数を獲得することができます。そうして、採択率を上げていくのです。

こうした補助金は、早い段階から挑戦して、継続的な挑戦・改善ができる人(転んでもタダでは起きない人)ほど、採択される仕組みであるともいえます。

■まとめ

今回挙げた内容以外にも、応募書類を作る上での細かいテクニックは幾つもありますが、上述のポイントは補助金獲得における基本的な要点であるといえます。これらを意識して応募書類を作成していくことで、効率的に補助金応募の準備を進められるものと思われます。

今後、皆さまご自身で申請書を書かれる時に、疑問や不安が生じましたら、是非お近くの中小企業診断士までご相談ください。かわさき中小企業診断士クラブにも、補助金に詳しい頼れる中小企業診断士が多く在籍しており、親切丁寧なアドバイスを提供しています。

補助金の活用により、企業経営に追い風をもたらし、社員の皆さまが活き活きと働ける環境になることを期待しています。

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