TPP(環太平洋パートナーシップ協定)がもたらす超ビッグな効果

かわさき中小企業診断士会クラブ 副代表幹事 市川 南

○アベノミックスの話題が、このところ途切れがちなのが気になっていたこの頃でしたが、この10月5日にTPP(環太平洋パートナーシップ協定)が大筋合意に至りましたことは、日本、世界の通商・経済に非常に大きなインパクトを与える期待を膨らますもので、かつ、アベノミックスのもとで進める日本再興計画をプッシュする、久々の快挙と思います。

〇TPPは、2010年の交渉開始以来約5年半、2013年7月の日本の正式参加以来2年3か月での基本合意ですが、参加国間の利害が激しくぶつかる紆余曲折が続き、あわや絶望かと報じられるような危機的局面の後の急転直下の大筋合意でした。これから、参加各国議会での条約批准の段階に移りますが、一部に批准難航が予想される国もあり、成立までには予断は許されませんが、協定が発効し、実施に移されたときにはこれまでの自由貿易協定と比べてようもないとてつもないプラス効果がもたらされることが期待されます。そこで、今回はTPP合意の概要や意義について、ご紹介したいと思います。

○国内報道では、米、牛豚肉、乳製品など農産品の関税率引き下げや輸入枠拡大、あるいは医薬品の開発データ保護期間、著作権保護期間、自動車部品・完成車の関税率・・・など、産業間の利害得失に焦点が当てられがちだったように思います。勿論、特定の関連産業に与える影響は一部に大きく、各国の国内政治的意味合いも大きい要素であることは事実です。 また、最近では個別の二か国間自由貿易協定(FTA)も進み、工業製品関税率は総じてかなり低くなった環境で、関税引下げにどれだけの意味があるのか、という議論もありました。

○しかし、ここでご注目いただきたいのは、第1にTPP世界経済1位の米国と3位の日本が主導し、環太平洋の12国が参加し、GDPで世界市場の36%、人口で8.1億人の巨大自由貿易圏が誕生したことはとてつもないインパクトです。

第2に、これまで日本が締結したFTAに比べても、TPPの関税撤廃率が約95%と桁違いに高いことも大きな相違です。

第3に、域内にないと不利となることを懸念する韓国、タイなど新規参加を進める動き顕著なことや、将来的にEUや、ASEANなどの大規模FTAと連携すればTPPを基盤としたメガFTAとして汎化される、超ビックな未来につながる可能性があることです。

○実は、TPPのそれ以上に強調すべき大きな意義は、知的財産権、政府調達、国有企業保護、環境保護など実に31分野の広範な経済活動において自由主義経済の原則を強調した明確なルールが合意されたことにあります。敷衍しますと、これまでの貿易投資の現場では、複雑不透明な商慣習が非関税障壁として存在しており、例えば製品授受や資金決済の規則など国ごとにバラつきが非常に大きく、ために関税以上に実質的なモノの移動を妨げている事実があります。とくに、新興国の中には国有企業優先の経済運営が行われるなど極めて理不尽な通商上の障害となっていることが指摘されてきました。今回のTPP合意では、こうした国ごとに異なる、理不尽な“運用”を明確に排除し、協定に参加する諸国の間では一定の質の高い自由貿易ルールを守ることが約束されたのです。

○ところで、日本では急速に人口減少・少子高齢化が進み、これによる経済縮小で日本の経済社会が袋小路のグレイな未来像を余儀なくされてきたと思います。 このような中にあって、今回合意された新しいTPPのルールの下で、農畜産漁業を含めて新たなモノ、サービス、さらにはヒトの活発な移動や交流で貿易投資を刺激させ、新たな市場の開拓、イノベーションの促進を通じ、潜在成長力引き上げにつなげる大きな契機となると思います。同時に、TPPはアベノミックスの進める日本再興計画に強い追い風を吹かせるものとなると、大いに期待致したいと思います。

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