中小企業経営に大きな影響のある時事問題と、その対策、公的支援策について

中小企業診断士・AFP 北 明雄

現時点において、中小企業に大きな影響のある問題と言えば、何といってもコロナ禍であろうといわざるを得ません。これは、現在まさに地球規模で発生している危機であり、ほとんどの人が想定しなかった事象と言ってよいでしょう。やっとワクチンの開発がなされたとはいえ、コロナ禍の収束の時期が読めないことやワクチン接種が始まったとはいえ全員に行きわたるには相当の期間を要するといわれています。

現在、国の施策のひとつとして、感染拡大防止のため緊急事態宣言が延長されています。また、営業自粛による受注減少とネット販売の増加、コロナ禍のストレスでうつ症状になっている人や差別の増加などが発生しています。コロナ禍は人々の生活に不安や不自由をもたらしているほか、社会や経済の活動にも心理的なダメージを及ぼしています。また、中小事業者の事業経営に対しても深刻な影響を与えているのが実情です。もちろん、その影響は業種によっても大きく異なり、むしろこの事象が経営にとってチャンスとなっているケースもあります。しかしながら、現時点におけるこの事象が脅威であれチャンスであれ、いずれにしてもこれがずっと継続するものでないことを認識すべきものと考えます。

この問題は、中小企業のみならず、我々の活動が自然破壊への影響を軽視し経済優先に走ってきたことに対する報復であると同時に、今後人類がどのように生存すべきかを問うていると言わざるを得ません。むしろ我々にとって今までの来し方を振り返る好機であると同時に、これからの時代をどう捉え、こんな時だからこそ何ができるかを問われているのではないかと思われます。従って、中小事業者にとっても自己の事業を振り返る絶好の機会と捉えるべきものと考えます。

時代はグローバル化、多様化の方向に進んでいます。過去にとらわれるのではなく、今まで当たり前であったことを問い直し、新しい発想で新しい社会を目指す必要があります。

次に、これらの事象に前向きに取り組む中小事業者に対する政府の支援策について例示しておきたいと思います。

事業再構築補助金

ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業等の思い切った事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とする。

コロナの影響で厳しい状況にある中小企業、中堅企業、個人事業主、企業組合等が対象。

  1. 売上が減っている。
    申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1 ~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少している。
  2. 事業再構築に取り組む。
    事業再構築指針に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換等を行う。
  3. 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する。

中小企業に対する補助額
通常枠:補助額 100万円~6,000万円、補助率 2/3
卒業枠 :補助額 6,000万円超~1億円、補助率 2/3
※卒業枠とは、事業計画期間内に、①組織再編、②新規設備投資、③グローバル展開のいずれかにより、資本金 又は従業員を増やし、中小企業から中堅企業へ成長する事業者向けの特別枠。400社限定。

中小事業者向け 一時支援金

令和3年1~3月の売上が前年または前前年と比べ1か月でも50%以上減った場合、法人に最大60万円、個人に最大30万円を給付
※対象 緊急事態宣言発令地域の飲食店と直接・間接の取引があるか、不要不急の外出・移動自粛による直接的な影響を受けた事業者

雇用調整助成金の特別措置 

従業員を解雇せず、手当を支払って休業させるなどした企業に支給(非正規社員・新入社員を含む) 特例措置は助成率を引き上げるもの
当初2月末までの期限を緊急事態宣言が全国で解除された月の翌月末まで延長

助成率:4/5 解雇を行わない場合 10/10
申請期間:2021年4月30日まで
教育訓練加算金:2400円(雇用保険の被保険者1人1日あたり)
支給限度日数:1年間に100日の支給限度日数とは別枠で利用可能
申請書類の簡素化:記載事項や添付書類を大幅に削減

国税の納付猶予の特例

1か月以上の任意の期間に収入が前年同期と比べて20%以上減少している場合1年間納税を猶予 担保提供不要 延滞税なし
※所得税、法人税、消費税などほぼすべての税目が対象
 納付期限から6か月以内に税務署に申請

固定資産税・都市計画税の減免

2~10月の間の3か月間の売上高が前年同期間と比べて50%以上減少した中小企業について2021年度分の納付を免除
減少額が30%以上50%未満の場合は半分に減額

社会保険料の納付猶予

新型コロナウイルスの影響により事業収入等に相当な減少があった場合、申請により社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、子ども・子育て拠出金)の納付を最大1年間猶予する制度
年金事務所に申請

中小・零細企業向け 特別貸付制度

雇用の維持 事業の継続のため個人事業主やフリーランスには実質無利子で融資
中小企業の売上高が急減した場合も同じ扱い

事業承継支援策

円滑な承継を後押しして中小企業の廃業を食い止め、中小企業に世代交代を促すため、事業を承継した経営者に個人保証を求めないもの

テレワーク設備投資支援

感染リスク回避のため、テレワーク導入など設備投資(テレビ会議用の機器などデジタル化に向けた設備)への支援につき、事業プロセスの遠隔操作・可視化・自動制御のいずれかを可能にする設備の取得についての税額控除
指定期間内(2017年4月1日~2021年3月31日)に申請

※詳しくは、経済産業省ホームページ「新型コロナウイルス感染症関連」を検索願います。更に、中小企業等経営強化法に基づく各種支援措置については、中小企業庁ホームページの同支援措置活用の手引きを参照願います。
なお、これまでの支援策のうち持続化給付金と家賃支援給付金の申請はそれぞれ2021年1月31日および2021年2月15日をもって終了しています。

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