ビジネスモデル評価を事業性強化に役立てましょう

中小企業診断士 平田 仁志

昨年5月にこの「診断士の視点」に景山会員が「ビジネスモデルキャンバスの使い方」という記事でビジネスモデルについて書いていました。

今回は「ビジネスモデル評価を事業性強化に役立てましょう」というタイトルで書かせていただきます。

私は平田仁志と申します。銀行に勤めた後中小企業診断士としての活動を始めて10年が過ぎました。銀行員生活の最後は子会社のベンチャーキャピタルに9年間勤め、たくさんのベンチャー企業の事業計画の審査に携わり、独立開業後も多くの中小企業の経営改善計画作成を支援してきました。最近まで中小企業再生支援協議会で困難な状況にある中小企業の再生計画策定を支援してきました。

その経験から企業経営の改善にはビジネスモデル全体の評価を踏まえた事業性の強化が重要だと考えています。そのような支援を行うことができるよう、2年前に診断士の仲間とビジネスモデルの勉強会を立ち上げて以来、ビジネスモデルを活用した事業性強化支援について研究を続けています。

1. 事業性評価とは何か、なぜ今事業性評価なのか

事業性評価という言葉は中小企業の経営者にとってあまり耳慣れない言葉かもしれません。しかし、現在中小企業金融をになう、地域金融機関にとっては大変重要な考え方となっています。多くの中小企業は信用金庫等地域金融機関から融資を受けておられると思いますが、その地域金融機関がこれまでとは違う、事業性という尺度で貸出先の評価をしようとしているのです。したがって、地域金融機関からお金を借りている中小企業の社長にとって、自分の会社の事業性について理解しておくことが重要となってきています。

事業性評価はこれまでの地域金融機関の担保主義や実績主義への反省から生じてきています。

これまでの金融機関は、担保が有ればお金を貸します、とか、利益が出ていればお金を貸します、という考え方がどちらかと言えば一般的でした。つまり晴れているときには傘を貸し、雨が降ってきたら傘を返せと言うという姿勢です。

それは、金融機関を監督する金融庁が金融機関の健全化のためにリスク評価に重点を置いて金融機関の監督をしていたことも大きな原因でした。

その金融庁が、これまでの方針を転換しました。

すなわち、事業の基盤がしっかりとしており、これまでに培った技術や、それを生かした稼ぐ力による将来性が有ると評価できる企業に対しては、担保がないからとか、これまでの十分な実績がないからとか言って貸し出しに消極的になってはいけない、貸し出しに応ずるだけでなく、さらに取引先の成長支援にまで踏み込むべきだと言っているのです。

そして、それがどのくらいできたかで金融機関を評価すると、次のように、言っています。

「金融機関は、財務データや担保・保証に必要以上に依存することなく、借り手企業の事業の内容や成長可能性などを適切に評価し(「事業性評価」)、融資や助言を行い、企業や産業の成長を支援していくことが求められる。」金融庁金融モニタリング基本方針(平成26年9月11日公表)

2. ビジネスモデルについて

それでは、事業性評価では何を評価されるのでしょうか。私は事業性評価にはビジネスモデルという考え方が重要であり、そのビジネスモデルを体系的に示しているのが昨年5月に「診断士の視点」で取り上げられた「ビジネスモデルキャンバス」だと考えています。ビジネスモデルキャンバスには事業を構成する9つの要素が体系的に相互の関連性が分かるように示されています。詳細については昨年5月の景山会員の記事を参照していただくとして、ここでは9つの内、特に重要な2つの点についてだけ述べさせていただきます。

①お客様に提供する価値

「お客様」に提供する「価値」が一番重要な点です。ここが明確になっていてビジネスモデルの他の要素がすべてそのために役立つようになっているか、ということです。

「お客様」という言葉と「価値」という言葉が出てきました。この二つはいつも一緒に考える必要が有ります。例えば、飲食業で考えると、食べ盛りの若者にとってはボリューム満点が最大の価値となるかもしれませんが、量があまり食べられないけれど美味しいものが食べたい高齢者には、量よりも味の方が大事な価値となります。「お客様」と「価値」はどんな業態でも、もっとも重要な要素です。

ある製造業の会社の再建に成功した社長が最初にしたことは販売先に行って、どうして当社から買ってくれるのですか、つまり自分の会社の価値は何ですか?と聞くことだったと言っていました。

中小企業では、今作っている部品がどう使われるか分からない、ということもよくあることですが、その場合でも、最終ユーザーが何を求めているか、すなわち、どんな価値が求められているのかを考えながら作ることが大事です。それによって納入先の会社の売り上げが増えれば、当然納入をしている自分の会社の売り上げも増えるからです。

②パートナー

社内での活動も当然ビジネスモデルの要素ですが、会社のことを考えるとき社内のことを考えないということはまずないでしょう。どのように考えるかという点では工夫も必要ですが、ここでは割愛し、もう一つの重要な要素である「パートナー」について考えます。会社の事業は、どこかから材料を仕入れたり、社内でできないことを外注したりしたうえで、社内で作り上げたものを販売して成り立っています。そのパートナーとの関係をどのようにして築いているか、ということを考えます。

長年の取引先なので値段が高くて納期も当てにならないが取引を継続しているというようなことは有りませんか。

私の支援先の製造業の会社は仕入れ先に品質とか納期とかの評価項目を設けて点数をつけていました。点数の高いところからの仕入れを増やすというのが基本方針なのですが、それだけではなく点数の低い会社には社員が出向いて、どうして点数が低いか、どうしたら評価を上げられるかという指導をしていました。パートナーと一緒に成長していくという考え方です。その会社は、長引いた製造業の不況の中でも売り上げを順調に伸ばし工場を拡張していました。

 

ビジネスモデルの一端についてしか述べることができませんでしたが、この記事を読まれた社長には、ぜひ自分の会社の事業性はどうかを、ビジネスモデルキャンバスを使って一度考えていただきたいと思います。金融機関がどのように自分の会社を見ているか、理解することが大事です。

ビジネスモデルによる事業性強化について、ご興味が有りましたらぜひ一度、かわさき中小企業診断士クラブにご相談ください。

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